犯人当てミステリーを地で行った超力作! 様々な視点で描かれる、完全なる密室とは何か #雷龍楼の殺人
■あらすじ
二年前に孤島の雷龍楼で殺人事件が起こった。事件で両親を失った外狩霞は東京で叔母一家といとこの穂継と暮らしていた。
ある日、霞は何者かに誘拐されてしまう。誘拐犯は解放するための条件として、穂継を雷龍楼に向かわせ、ある情報を入手するように告げられるのだ。その後穂継から誘拐犯に連絡が入る、なんと雷龍楼で新たな密室殺人事件が発生したらしく…
■きっと読みたくなるレビュー
力作ですね、犯人当てミステリーを地で行った作品。タイトルも装画もカッコイイ!
いきなり読者への挑戦状が入ります。本来は終盤で入るべきはずのもの、どんな中身は読んでみてほしいのですが前代未聞でビックリ。倒叙ミステリーなのかな? と思いながら読み進めますが、犯人による犯行状況をなぞるような構成ではないんですよ。んー、どゆこと?
そう、本作は大きく3つの視点で進行していきます。
外狩霞 :誘拐され、解放条件である穂継の情報入手を待つ
高森穂継:雷龍楼で情報入手を目指すも、連続密室殺人に巻き込まれる
鯨井真子:穂継の叔母でありミステリー作家、二年前の事件を穂継と共に追う
それぞれの視点で様々なことが発生しながら事件のことが語られていくのですが、物語の中心としては穂継の視点。よくある孤島・館もの設定ではあるんですが、「完全なる密室」などミステリー論も差し込まれ、最後まで飽きることなく楽しめちゃいました。
事件では昔ながらの大家族イザコザも仕込まれて、人間関係にも深みがある。事件との繋がりも怪しいし、これはわくわくが止まらない。
またいくつか明らかに伏線だなと感じさせる情報があるんですが、結局この3つの視点がどういう構造か分からない。ひょっとしてこうじゃないのかなーとは思うのはあるんですが、動機や過去の背景との繋がりが見えてこず、イマイチ明確にならないんすよね。ムズイ…
読み進めること終盤、ついに枠組みが見えてくるんですが… なるほど、そういうことか。多くの情報が紐づいて、するすると真相が明らかになってくる。となると、あの人はこの人で、まさかこうなってるのでは… と思いながらラストを迎え、私はガクブルが止まりませんでした。
■ぜっさん推しポイント
よくミステリーは、限られたルールの中でしか楽しめない予定調和なゲーム的な読み物であるという批判があります。そこがいいんじゃないですか~、人生を楽しく時間を過ごすことが重要なんです。
どんな高尚な文学芸術であっても、受け手にとって光り輝くものが得られなければ、何の意味もないと思ってます。みんなでミステリーを楽しもうって姿勢の作品は大好きです、今後の作品にも期待しちゃいます!