【感想・ネタバレ】虚魚のレビュー

あらすじ

怪談師を生業としている三咲は、訳あって“本当に人が死ぬ”怪談を探している。相棒は「呪いか祟りで死にたい」というカナちゃんだ。新たな怪談が見つかると、死ねるかどうか確かめてくれる。
ある日、カナちゃんが「釣ると死ぬ魚」の噂を聞きつける。静岡県のある川の河口付近で見たこともない魚を釣った人が、数日のうちに死んでしまったというのだ。類似する怪談を知らなかった三咲は、噂の発生源を辿って取材を始める。すると、その川沿いには不思議なほどに怪談の舞台が集まっていることが分かってきた。これは偶然か、それとも狗竜川には怪異の原因が隠されているのだろうか。
自分が生涯追い求めてきた“本物”の怪談の気配を感じ、三咲は調査にのめりこんでいく。しかし、うまくいくということは、カナちゃんが死んでしまうということだ。自分はそれを望んでいるのだろうか――?

解説:小野不由美

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Posted by ブクログ

ネタバレ

総括すると流行を押さえた良質なホラーだった。
あえてこう表現するが、エンタメ性と怪談への真摯な姿勢のバランス感覚が絶妙で読みやすかった。

今時だな〜と感じたのは、美咲とカナちゃんのシスターフッド的な関係性が物語の大きな柱になっているところ。
なんなら、人を殺せる怪談を探す女と自殺したい女って、ラノベみたいな導入だな、と思った。
ところが読み進めると、怪談の調査には過去の事件記事やネットニュース、ひいては現地にも足を運んでおり、しっかりフィールドワークを行っているガチっぷり。本作はモキュメンタリーではないが、調査の過程で浮かび上がってくる怪異の数々は物語のリアリティを高めていく。
怪異の源泉を探る、というパターンも鉄板ではあるが、解説を担当されている小野不由美女史の『残穢』前後にまた盛り上がったような記憶があり、今作はより現代的にアップデートされていると感じた。

怪談をエンタメとして楽しむことの不謹慎さと実害が怪異の撒き餌になっている構図にも考えさせられた。巻末の解説といい、筆者も筋金入りの怪談好きと見た。だからこそ、「人は納得する為に怪談を求める」という美咲の気付きにとても共感した。





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2025年08月28日

Posted by ブクログ

不思議な魅力のある作品。なぜ、ホラー文庫でなく一般の文庫に入ったのかと思いましたが、小野不由美氏の解説にある理由なのかな。

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2024年12月06日

Posted by ブクログ

最近ホラーとミステリーが合わさったものがとっても面白く感じいて…

というわけで
しばらく積まれていた本のなかから一冊

思っていた話とは全く違っていたけど
とっても面白く引きもまれた一冊

人が亡くなる怪談をひたすらに求め
本物かどうかを確認していく
三咲とカナちゃん

2人の関係性と少しづつ明かされていく
後悔と罪悪感を背負った二人の過去

絡まり合った怪談を紐解き始めた先に明かされる事実

2人が過去の出来事をずっと引きずっていて
不思議な関係性だったのが
怪談を調べていく中で
少しづつ変わっていくのが興味深かった

怪談というちょいと私には怖さを感じるお話であっても
なぜか人の気持ちを強く感じるお話で
ゾクッとした感じを持つこともなく
怪談+ミステリ
として面白く一気に読んだ

物語とは別に…
なぜか松浦さんが出てくるとホッとするので意外と好きな人物かもしれないと思っている……

怪談や幽霊物は好きだけど
あまりに怖すぎるものは読めない…

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2025年11月10日

Posted by ブクログ

最近ホラーやミステリーを手にとってないので新鮮で面白かったです。
あまりホラーは得意じゃないのですが、皆それぞれ隠し事をしながら何かに突き動かされてゆく様と、その関係性を描いた人間ドラマとして受け取りました。
人々の怪談への向き合い方とその弊害への、新しい視点を与えてくれる作品だと思いました。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

虚ろな魚と書いて『そらざかな』と読む。
そんな言葉長く生きたつもりの人生に於いて一度も見た事無いぞ、と思い手に取りました。
ある目的の為に人が死ぬ怪談を集めている怪談師の女性と素性は一切明かさないけど兎に角死にたい女の子、互いの人生に踏み込んだり踏み込まなかったりしているこの2人がある時『釣った人を殺す魚』という怪談と出会うところから始まるホラーサスペンスです(ホラー7割サスペンス3割な印象を受けました)。
他人と交流していく中で経験する気持ち悪さと居心地の悪さが上手く表現されているので人によっては最後まで読めなくなっちゃうかもと感じましたが、最後まで読んでいくと気持ちの良いくらいの怒涛の伏線回収があるのでオススメです。
謎は謎のまま終わりますが、怪異なんてものはちょっと分からないくらいが丁度良いのかなと思いました。人間が手に負えないのが怪異なのですから。
これから湿った空気の初夏がやって来ます。カラッと晴れる夏がやってくる前に是非読んで欲しいです。

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2025年05月30日

Posted by ブクログ

遠田志帆さんのカバーイラストに釣られて購入した作品。
第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞 大賞受賞。
帯の「綾辻行人氏ら選考委員大絶賛!!」にも惹かれました。

怪異をテーマにした、ホラーといよりミステリ寄りの作品かなと感じました。
ホラーが苦手な私でも問題なかったです。

ラストに向けての、点と点が繋がっていく様は、さすが大賞受賞作だな、と。

解説が小野不由美さんというのも個人的にはアツかったです。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みやすく、途中で挿入される怪談も面白い。
ホラーであり、ミステリーであり、怪談師とか呪いで人が死ぬか実証実験するとか、各人の過去とか設定も惹き込まれる。
怖くはないけど、怪異はすぐ側にというじわじわくる感じが好き。
ほんのり百合?

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2025年01月24日

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面白くて一気に読めた。

怪談師の三咲と同居人のカナちゃんは、それぞれの理由から、人が本当に死ぬ怪談を探している。
ある日「釣ると死ぬ魚」の噂を聞き、その取材を始めるが・・・

表紙絵に遠田志帆さんを起用し、帯に綾辻行人先生のコメントがあるので、「Another」のような超常現象系ホラーミステリーかと思ったが、怪談のルーツを追っていく形式で物語が進み、どちらかというと民俗学ミステリーに近いのかなと思った。

怪談を追跡するにつれて、三咲とカナちゃんの心情の変化、心の成長も読み取れ、青春群像劇のようにも思える。

最後の方の三咲のセリフに
「偶然と呪いの違いって、本当はない気がする」というセリフが印象的。

何か目的や因果関係があって人は生まれてくるものではないということにも通じる考え方だなと。
不可解な現象に理由や論理的説明をしようとするものが怪談であるし、呪いは受け取る側の心の問題だという考え方は、京極夏彦先生の文脈を受け継いでいるのかなとも思った。

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2025年01月11日

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 『本当に死ぬ怪談』を探す怪談師の三咲と同居人のカナが『釣ると死ぬ魚』について取材するホラーミステリーで、形を変えて伝播する『釣ると死ぬ魚』の奇妙さや随所で挟まれる怪談の不気味さがありつつ人間の脆さ、身勝手さもしっかり描写されていて一気読みだった。ラストは…

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2024年12月04日

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この川を辿った先に虚ろを満たすなにかがあるのだろうか。

すごく出来の良い長編怪談を読ませてもらって大満足です!
ホラー×ミステリ、というより、ミステリの手法で書かれた怪談噺と呼びたい印象。川を辿って震源を探す設定がワクワクを誘い、あいだに入る各怪談も"らしく"て実話怪談好きとしても満たされる。
怪談、登場人物が無駄なく繋がっていく気持ちよさはミステリの快感であり、このふたつのジャンルの相性の良さを再確認した。
三咲とカナちゃんのキャラクターが特によく、幸せにはならなくても、この先も良い関係を結んでいけたらと願う。
怪談語りするのも好きなので、作中で怪談シーンが来るとそこだけ朗読で読んでみたりしました。

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2024年11月29日

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2021年第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞・
             大賞受賞作。
長野出身の会社員である新名智さんのデビュー作で、舞台も静岡県西部から長野へと続く天竜川流域に置かれている。
土地の記憶と水の流れが、物語と重なります。

私は探している、「人を殺せる」怪談を――。
怖いのに泣ける感動のミステリ、というKADOKAWAのキャッチコピー。
ですが、読後に残ったのは恐怖よりも、淡々とした“怪談の追跡記録”の印象だった。

怪異の連鎖というより、語り継がれる怪談の変化をたどる構成。
怪談を“恐怖の対象”としてではなく、“人から人へ語り継がれる現象”として捉え、語りそのものを物語としているかなあ。
と、思わせてラストにミステリーで落としてくるところが良いところです。
表紙が綺麗ですわ。

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2025年11月07日

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解説にある通り、ミステリーと怪談のバランスや長編小説として成り立たせるための構造は素晴らしかったが、綺麗に整いすぎていて、あっと驚く展開や意外な結末などはなかった。
文章自体は読みやすかったのでイッキ読みしたが、個人的感想としては再読や作者読みは今のところ検討していない。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

ちょっと舐めていたというか、怪談とミステリーという食い合わせが難しい要素が絶妙に料理されていて驚いた。

怪談それ自体に謎を纏わせることはもちろん、怪談を追う人間の関係性にこそ闇が潜んでいるという構図が良く出来ている。間接的な情報の集積からゾクッとさせる文章の構成も上手い。

クライマックスにはしっかりとホラー味があり、シスターフッドの胸熱な展開ありと、エンタメ強度も高くて素直に面白く読める良作。

あわよくば、怪談の源流についてさらにおどろおどろしく、ジメジメとしたものであったらと贅沢な注文をつけたくなってしまったが、寝苦しい夏の夜長に読むのがオススメの一冊。

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

両親を事故死させた男に復讐するために人を死なせる怪異を集め検証している三咲と、呪いか祟りで死にたいというカナちゃん。怪談を集めるにつれて二人の心情に変化があらわれ少しずつ心が癒されていく様子に感動。間に挟まる怪談が面白い。最後の展開がこわい。

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2025年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

怪異が枝分かれしていたり、形を変えていたり、読んでいて面白かった。
結局は人間が怪異を成長させていくのかなぁと思った。
最後は、きっとカナちゃんが取り込まれて怪談は形を成すはずだったのが、本名で呼ばれなかったから不完全のままになったと、そう解釈した。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

なかなか面白かった
ミステリーとホラーでいい感じ。
なるほどそう終わるのか!!

怪談とか怖い話って信じてなくてもわたしは好き

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2025年01月22日

Posted by ブクログ

怪談を追いかけて行く話だからホラーなのかな?あんまり怖くないので苦手な人でも読めるはず。

想像してた内容とは違って、心に闇を抱える2人の女の子が過去とどう向き合うのか…みたいな話…になるのかな?これはこれで面白いし読んでて飽きない展開だった。


たぶん幸せにはなれないし、なりたくないだろうし、なってしまったら死にたくなるんだと思う。

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2025年01月07日

Posted by ブクログ

怒涛のラスト

感情が追いつかない。
読んだ後に何が残るのか。

僕に残ったのは『虚』という、なんともいえない感じだった。

この本は評価が二分すると思う。
高評価がある反面、低評価もあり得る。
何を信じるかで、あなたの心に残るものが変わるはず。

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2024年12月03日

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