あさのあつこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いろいろなものを背負い、走ることを恐れていた少年、加納碧李の復帰戦を描いた物語。
あさのさんの作品でいつも感じるのが、登場人物の心の機微が、その人の身体感覚や周りの風景と融解している感じ、つまりその人の気持ちを体の一部の感覚や見える景色で妙に言い表している感じがものすごくうまいということだ。
きっと心理描写と一言で言えることなのだろうけど、その変化が物語の中できれいにうねっていて、そのうねりがキャラクタリスティックでいいのだと思う。
本作でも、主人公の走るまでの緊張感やもどかしさ、走り出してからの背負い込んだものがはがれていく様子、ゴール後の冷静と感覚的なものの入り混じった様子が見事に描かれている。
そしてそれを見守る周りの人々についてもうねりをもった魅力的なさまで描かれている。
次回作も早く読みたい。
三浦しをんさんの解説も、素直にあさのさんの作品好きなんだなって感じてよかった。 -
Posted by ブクログ
あさのあつこさんの作品は40作以上読んでいますが、この作品はあさのさんのいろんな作品を混ぜたような感じでした。例えば「No.6」に似たような場面も、あさのさんの短編に出てきていたような場面も見受けることができました。お話もこれからってところで終わっていて、正直物足りなさを感じています。ですが、やはりあさのあつこさんらしい書き方で、読者に大切な問題をなげかけているように感じます!自分と同じ人間であるのになぜ殺めるのか。なぜ裏切るのか。児童文学作家としては、本当に素晴らしい議題を私たちに与えてくれるなぁーといつも感心してしまいます。
物語的には緊張感やスリルもあり、おもしろいです!夢中で読んでしまいました。人間関係として読んでいくなら、「バッテリー」は、部活仲間や家族のことが書いてあり、「No.6」は、壁の外と中の人のことを書いてるとしたら、「ヴィヴァーチェ」は家族・兄妹ってところですかね。考えさせられます。 -
Posted by ブクログ
野球でなくとも良かったのかもしれない。ピッチャーでなくとも。
例えば、バイクのレースに出るライダー。
コンマ一秒を削り取るために、バイクと一体化するために、
そのためだけに走る。
右手が、エンジンの爆発と、ドライブチェーンを通じて伝わる力をコントロールし、
タイヤのゴムがアスファルトと擦れ合ってちぎれ飛ぶのを感じる。
ただ、その思いで走る。
あるいは、ソロギタリスト。
指が弦をはじいて生まれる、それまでは存在もしなかった世界。
強くも、弱くも。激しくも、優しくも。
誰でもない、自分が一人で生み出す、一人の世界。
ピッチャーをするために、球を投げるために生まれてきた。
それ以外の諸々を、どこかに忘れて生まれてきた。
それは魅力的であり、どんな道でも良かったとも思える。
色んな道に立つ、巧の姿を想像してしまう。
誰も、何も、介在できない、介在させない自分と対象だけの純粋な世界。
完全を求める、不完全な世界。
もろく、はかなく、でも美しくもある。
巧だけでなく、周りのそれぞれが変わっていきます。
それは自分を見直し、弱さを知り、傷を確かめ、前へ進むために必要なこと。
成長でしょうか。大人になることでしょうか。
やはり、野球で描くことがこの作品らしさなのだろう。