レイモンドチャンドラーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本というものには読むタイミングが存在すると思う。
同じ本でも、読む人間に合う年齢、季節がそれぞれの読者で違う気がしている。
「長いお別れ」は、自宅にあったのでずっと昔に読んだことは確かだけど、全く内容を覚えていなかったので再読した。きっと以前に読んだ時はただ字を追っていただけで中身が入ってきていなかったのだと思う。読むタイミングが合っていなかったんだろうなぁ。
ほかの方の感想を読んでも、歳を重ねて読んだらよく読めたと書いている方が多くいるようだった。
今回再読して改めて、なんて渋くて面白い話なんだ…と思った。
マーロウの男っぷりといい、脇キャラも個性的で良い。ハンサムでお洒落でどことなく危険なハウスボーイ・キャンディが気に入った。
時代背景もあるが、ザ・男社会!酒!煙草!金持ちの美女!ギャング!闇医者!のテンプレートのようで令和だったら大問題の描写が多数。それでもめちゃくちゃスマートで洒落ているのは、訳のセンスもあるのだろうか。
ちょうど真夏に読んだのもとても良かった。
あと、お酒の描写がみんな美味しそうだった。
まさに冷たくて強い酒みたいな小説。
じりじり照りつける暑い日に、よく冷えたお酒と共に読むのが合いそう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ10代に挫折して本棚の肥やしになっていたものを引っ張り出して再読。
10年越しに読んで思うことは、マーロウはなんて気高く不器用な男だったのだろうか。
10代の私ではそのことが分からなかった。
何を感想として残せばいいか分からないくらい、読んだ後に寂寥感に苛まれる。
人生を象徴するような出会い、別れ、非情さ、優しさが詰まっていた。マーロウに共感しながらも、同時に、役者あとがきにもあるようにその実何光年も離れたところにいる人間だろうという言葉に強く頷く。
優しさや誠実さは、時に深く人を刺す。
もう彼とのギムレットは飲んでしまった。
この先この本が本棚から消えることはないだろうし、何度でも読み直す大切な一冊になった。
読むたびに味が変わるんだろうな -
Posted by ブクログ
映画「あの頃 君を追いかけた」日本版の主演山田裕貴くんが齋藤飛鳥ちゃんの帰省を駅のホームで心待ちにしているときに、読んでた本ということで気になって手に取ってみました、理由が突飛。だけど、知らなかっただけでいわゆるハードボイルドものの超名作だったのね。
ハードボイルドってなんかキザで男臭い感じがして苦手意識あったけど、寧ろマーロウの何とも言えない皮肉屋なところとか、素直じゃないところとか、ダンディなところとかなんとも魅力的で一気に引き込まれました。漢の友情とは、上辺だけのなれあいんじゃないんだよ、じゃれあってなくても心で繋がっているんだベイベー、みたいな作品です。(個人的感想)
一方、ミステリーとしても謎自体も美味しい仕込み方でよだれが止まりませんし、ラストシーンもなんだかセンチメンタル。推理に重きを置いてないので、純粋な本格ミステリーとは違うけど、物語として深みを加えてくれる。しかし、登場人物酒飲みすぎ。マーロウ貧乏なところもそれでこそかっこいい。 -
Posted by ブクログ
清水訳にしてよかったと思います、言い回しは年代もあってか古く小難しいですが慣れたらそれすら味があります…。粋な台詞や皮肉がずっしり効いていて素晴らしいです。マーロウの乾いた面とたまに滲む色気のバランスが素敵でした。何より私はロジャーがどうしようもなく愛しく感じてしまいました。それゆえにもう歯痒く悔しく切ない。その彼の家での出来事を読んでいる時、西加奈子さんの窓の魚を読んだ時に感じた歪みとどことなく似たものを感じました。これぞハードボイルドな重厚さがあるのですぐまた読みたいとはなりませんが、すこし忘れた頃にでも手に取りたいくらい好きです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ水底の女(みなそこのおんな)
著者:レイモンド・チャンドラー
訳者:村上春樹
発行:2020年1月15日(単行本は2017.12)
ハヤカワ・ミステリー文庫
「湖中の女」(清水俊二訳)の邦題で知られてきた本作は、フィリップ・マーロウシリーズ第4作。読んでいるかなと思ったけど、記憶にない。初めて読んだ。そして、マーロウシリーズの中でも知名度がイマイチにもかかわらず、傑作であることが分かった。おそらく、推理小説のプロットとしては、シリーズ最高傑作だと思われる。最後の真相を明かすところでは、思わず「おうっ!」と声を上げてしまったほどだった。チャンドラーの作品は、あまりその面ではこったものはないだけに(チャンドラー作品の魅力はもっと違うところにある)、本当に驚いたし、もっともっと日本でも読まれて欲しい作品だとも思った。
さて、村上春樹訳で読み直すフィリップ・マーロウ、全7作品中5作を読み終えた。あとの「長いお別れ」と「可愛い女」は昔読んだ清水俊二訳版が残っている。だからこれを読み返す手もあるが、ここまで来たら村上春樹訳版残り2冊も購入し、読み直してみようかと思っている。ストーリーを忘れたお陰で、あと2冊、楽しめる。
(設定)
化粧品会社経営のキングズリーから、1月ほど前から行方不明になっている妻を探して欲しいとの依頼。彼女はキングズリーが仲間と持っている土地に建つ人造湖畔のキャビンにこもっていたが、そこからもいなくなった。夫婦関係は冷めているので返ってこなくてもいいが、彼女が問題を犯すのが心配だった。なにかあると経営者としてのキングズリーの地位が危うくなるから。
マーロウはさっそくキャビンに出かけ、管理人を訪ねる。すると、湖から死体が浮かび上がってきた。管理人の妻だった。彼女もまた、キングズリーの妻と同様に1か月前から消えていた。書き置きがあったので、自殺かもしれない。ところが、警察は管理人による他殺だと睨んで彼を逮捕した。
キングズリーの妻の愛人を訪ねるマーロウ。しかし、2度目の訪問で彼は殺されていた。キングズリーの妻がやったことが濃厚になった(本人も自分がしたとマーロウに自白した)。
そのまま終わるかと思いきや、大どんでん返しで、どちらも真犯人がいた。しかも、同じ女が殺していたのだった。
**(個人用メモ、ストーリーバレバレ注意)***
ドレイス・キングズリー(ジラレイン社経営)
クリスタル(・グレイル)(その妻)
クリス・レイヴァリー(クリスタルの愛人)
エイドリアン・フロムセット(キングズリーの秘書)
ビル・チェス(キングズリーの地所の管理人)
ミュリエル(ビルの妻)
アルバート・S・アルモア(医師)
フローレンス(その妻)
デガルモ(警部補)
キングズリーは妻が1月ほど行方不明。人造湖リトル・フォーン湖のほとりに3人で地所を所有し、キャビンを所有、妻はそこに滞在していた。6月14日にはエルパソから電報で、離婚する、そしてクリスと結婚すると言ってきた。夫婦間は冷めているが、キングズリーは地位がある人なので妻がスキャンダルを起こすことだけ気にしていた。
依頼を受けたマーロウは、まずクリスを訪ねる。彼女には会っていないしエルパソにも行っていないという。5月の第3週には行ったが。
クリスの家向かいに医師のアルモアが住んでいたが、彼はマーロウの車を気にして警察を呼び、追っ払った。キングズリーに聞くと、彼はクリスタルの主治医で奥さんが自殺していることが分かった。
キャビンへ。管理人のビルは1月前の6月12日に自分の妻が出て行ったことを告白。実はビルはクリスタル(ミセス・キングズリー)と火遊びをしていた。そして、同じ日にクリスタルも行方不明に。
2人が湖畔を歩いていると、水底から女の死体が浮かんできた。ビルの妻、ミュリエルだった。自殺の線もあったがビルは逮捕された。
失踪したクリスタルが車を残したホテルに行くと、6月12日に彼女に似た女性とクリスが来ているとボーイが証言した。
クリスの部屋に再び行くと、彼はおらず、家主の女性がいた。階段のところで銃を見つけたという。弾は空ですべて発射済み、ただし半時間以上前。クリスが浴室で撃たれて死んでいた。クリスタルの服装に似ている服も残っていた。彼女が殺したのか?
マーロウはキングズリーの秘書、フロムセットと話す。彼女は、医師アルモアやミセス・アルモアとクリスの家で会ったことがある、と認めた。アルモアは麻薬の注射を配っているとその場で噂され、それから少ししてミセス・アルモアは自宅駐車場で自殺したことがわかった。そして、彼女も以前にクリスとできていたことを認めた。
マーロウがクリスの死を警察に通報すると、来た警察官のうちの一人はアルモアが呼んでマーロウに警告をした警部補デガルモだった。
ミセス・アルモア(フローレンス)の両親を訪ねると、こう読んでいた。アルモアは麻薬医師で、中毒患者をぎりぎり薬漬けにしている悪だった。アルモアは看護婦と出来ていて、それを知った奔放なミセス・アルモアが脅していたのでアルモアにモルヒネを打たれて殺された。アルモアと出来ていた看護婦の名前は「ミルドレッド・ハヴィランド」。ビルの妻、ミュリエルの以前の名前であり、デガルモの別れた妻でもあった。
キングズリーから連絡、妻から連絡があったとのこと。彼女は町(ベイ・シティ)から出る必要がありお金がいる、必要額より少ないが500ドル届けて欲しいとのこと。約束のピーコックラウンジで500ドル渡す。その後、彼女が滞在するアパートへ。マーロウが問い詰めると、エルパソまで行ったが嫌になって結婚は中止したと言った。マーロウは、クリスの家主のふりをしていたのは彼女であることを見抜いた。殺したのも彼女だ。問い詰めると彼女は銃を向けた。マーロウが払い落とすと大男が現れてマーロウは気絶。
気が付くと女は裸で殺されていた。警察と思われる者が来たので窓から脱出して隣の部屋へ。シャツを着替え、窓から辿られる前に廊下に。警察官に声をかけられて隣人のふりをするが、もう一人出てきたのがデガルモで拘束される。デガルモはマーロウが犯人ではないことをもう一人に言った。しかし、非合法にマーロウに尋問をしようとしたのでもう一人は遠ざかっていった。マーロウはデガルモにことの詳細を話し、犯人はキングズリーであるかのように仕掛けた。そして、キングズリーがキャビンに逃げていることを確認すると、キャビンへ向かった。
(真相)
1.フローレンス(アルモアの妻)自殺か他殺か?
彼女が賭博場で騒いだ時にアルモアが注射した量は適切だった。彼女は看護婦ミルドレッド・ハヴィランド(ミュリエル)によりベッドに運ばれたが、アルモアが打った注射とまったく同じところにさらに薬を打つことに成功し、それは致死量に達するものだった。なお、彼女はアルモアと出来ていて、それはフローレンスも知っていた。
アルモアはまずいと思い、しかし、看護婦が追加で打ったなどと証明も出来ないために駐車場に運んで自殺に見せかけた。ミルドレッドの亭主だったデガルモは自殺で処理し、彼女を逃した。
ミルドレッドはミュリエルとしてビルの妻になったが嫌気がさしたので、金をアルモアに要求してきた。名前はあくまでミルドレッド・ハヴィランドのままで。金を送れと言ってきた。アルモアはデガルモを送り込んで調べさせたが手がかりなし。しかし、彼女自身が書いたのだろうと思いついた。→ミュリエル殺しが疑われる立場。
2.水底の女は自殺か他殺か
鑑識の結果、溺死と判明し、自殺が濃厚になってきた。しかし、マーロウは他殺と断じた。実は、死んでいたのはミュリエルではなくクリスタルだった。ミュリエルは自分が邪魔なものは容赦なく消すタイプの人間でクリスタルもその対象。そして、彼女が持つ宝石やお金も魅力。看護婦だから水死させることぐらい簡単。殺して沈めた。1か月も水に浸かっていたため、遺体の状況が悪く、背格好が近かった2人は入れ替わることに成功した。ミュリエルは田舎生活に飽き飽きしていたので彼女を殺害し、金をゲットして脱出を図ったのである。
3. クリスを殺したのは誰か?
前述の通り、彼の家の家主になりすました女。ただし、それはクリスタルではなく、ミュリエルだった。マーロウが動きだし、バレるのが恐くて口封じに彼を殺した。
4.クリスタルになりすましたミュリエルを殺したのは誰か?
デガルモが殺した。誰でも殺していくミュリエルを愛しながらも、警官としてそれを許すのに耐えられなくなった。
謎解きをした後、デガルモは拘束を拒否して逃げていった。しかし、ダム湖のところにいる軍の人間に阻止されそうになり、下に落ちて死んだ。マーロウはわざとキングズリーが犯人だと臭わせてわざわざキャビンまでデガルモを連れてきた。それは、ここなら結局逃げられないからと踏んでいたからだった。 -
Posted by ブクログ
「誰かの夢が失われたようだね」そして身を屈め彼女の目を閉じてやった。好きだった割にはうろ覚えのチャンドラーを村上春樹版で読み直す。兄を探して欲しいという生真面目な小娘オーファメイの依頼を受け、兄の住んでいたアパートで見つけたアイスピックで首を刺された死体。そこに映画女優やギャング、裏通りの人たちが絡んでいく。チャンドラーが自作の中で最も嫌いと言明するリトルシスターは意外とファンが多い。モノクロ映画のようなゆったりとしたドキドキ感がある。フィリップマーロウの印象が他作品と少し違う。他の作品より登場人物が危険なくらい魅力的なのだ。村上春樹は女性の書き方が生き生きしてて他作と違うと言ってるがまあ、そんなところだ。