レイモンドチャンドラーのレビュー一覧
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本書はレイモンドチャンドラーによる長編小説の二作目である。『大いなる眠り』を書き上げ、一定の地位を築き上げた著者による次回作ということで、野心的であった処女作以上に気合が入っていたであろうチャンドラーは、敬愛するダシールハメットに再度頼りつつも、その影響下から脱却しようと試行錯誤していたであろう点が随所で伺える。
まずフィリップマーロウの性格だ。前作において皮肉を交えつつも一定の静けさを保っていた彼は今作では本当によく喋る。しかもその発言の隅々にまで皮肉を張り巡らせている。必要以上に相手を煽り小馬鹿にするような発言が目立ち、口を開けば捻くれた言葉を吐くような次第でその本意がいまいちつかめない -
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ハードボイルドの古典。レイモンド・チャンドラーの探偵フィリップ・マーロウシリーズの最後の作品。ハードボイルドとは、主人公の無骨で筋の通った生き方、行動を慈しみ楽しむものだと思う。そこには浮世の経済合理性や名誉はなく、ただた個人的な「筋を通す」「原理原則を曲げない」それだけがある。そんな非現実的な生き方ができる本当の意味で「タフな」男の物語をたのしむというかなりマニアックなジャンルだと思うが、チャンドラーがそれを確立したと思う。村上春樹がなぜ彼を好きなのかよくわからないが、根底には「原理原則を曲げない」生き方への憧れがあるのだろうか。文体のシンプルなところも好きなのだろう。たまに主人公に「やれや
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「ハードボイルド」の意味を、ようやくこれを読んで理解できた気がする!!
これがザ・ハードボイルドね!って自信満々に言いたい。
ハードボイルドってそもそも何?ってレベルの私なんだけど、文学で、感情を交えず、始めから終わりまで、客観的な態度・文体で対象を描写しようとする手法らしい。
この小説、マーロウという主人公=語り手の感情が全く出ず、淡々と周りの情景、出来事を描いていくスタイルで、王道なミステリーのプロットがこんな風に純文学になるなんて!!そんなことあるんだ、知らなかった!すごい!
と驚いてる!!
ストーリー自体がすごい斬新な設定とか、そういうことではなく、語られ方が斬新!!
すご -
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▼(本文より)私には酒が必要だった。高額の保険が必要だった。休暇が必要だった。郊外の家が必要だった。しかし今のところ私が手にしているのは、上着と帽子と拳銃だけだった。だからそれらを身にまとい、部屋を出た。
▼言い回しの次元でしかないとも言えますが、思わずにやりとしてしまいます。小説というのは、物語というのは、結局は言い回しの次元であると言えます。パチパチ。
▼私立探偵フィリップ・マーロウ長編シリーズ第2作。
①大いなる眠り(The Big Sleep, 1939年)
②さよなら、愛しい人(Farewell, My Lovely, 1940年)
③高い窓(The High Window, -
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本というものには読むタイミングが存在すると思う。
同じ本でも、読む人間に合う年齢、季節がそれぞれの読者で違う気がしている。
「長いお別れ」は、自宅にあったのでずっと昔に読んだことは確かだけど、全く内容を覚えていなかったので再読した。きっと以前に読んだ時はただ字を追っていただけで中身が入ってきていなかったのだと思う。読むタイミングが合っていなかったんだろうなぁ。
ほかの方の感想を読んでも、歳を重ねて読んだらよく読めたと書いている方が多くいるようだった。
今回再読して改めて、なんて渋くて面白い話なんだ…と思った。
マーロウの男っぷりといい、脇キャラも個性的で良い。ハンサムでお洒落でどことなく危険 -
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本読みならば一度は読んでおかなくてはいけないと思った中の1冊。
翻訳小説を読むのは何十年ぶりだし、翻訳を担当した村上さんの作品はエッセイしか読んだことがないし、なんと言っても分厚いし・・・という不安要素はあったのだが、フタを開けてみれば、元は外国語で書かれていたという不自然さがどこにもない。
村上氏がアメリカに滞在している時のことを書いたエッセイを読んでいたせいだろうか。氏の描くアメリカの風景に馴染みがあるような気がして読みやすかった。分厚いけど。
マーロウは、パンドラの箱を開けたばかりか、最後に残っていた「希望」まで引きずり出して吊し上げてしまうような、依頼された仕事はやらずに、余計なこと -
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ネタバレ10代に挫折して本棚の肥やしになっていたものを引っ張り出して再読。
10年越しに読んで思うことは、マーロウはなんて気高く不器用な男だったのだろうか。
10代の私ではそのことが分からなかった。
何を感想として残せばいいか分からないくらい、読んだ後に寂寥感に苛まれる。
人生を象徴するような出会い、別れ、非情さ、優しさが詰まっていた。マーロウに共感しながらも、同時に、役者あとがきにもあるようにその実何光年も離れたところにいる人間だろうという言葉に強く頷く。
優しさや誠実さは、時に深く人を刺す。
もう彼とのギムレットは飲んでしまった。
この先この本が本棚から消えることはないだろうし、何度でも読み直 -