レイモンドチャンドラーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレフィリップ・マーロウシリーズの村上春樹翻訳もこれで最後。(マーロウシリーズ7冊の長編のうち4作目だが、村上春樹が翻訳した順番で言えば最後)
マーロウは、実業家ドレイス・キングズリーに失踪した妻クリスタルの捜索を依頼され、キングズリーの別荘を訪れる。そこで雇われている使用人ビルの妻ミュリエルの死体が湖の底で見つかった…というところから始まる。
が、出てくる死体はこれ一つじゃないし、「実は悪人でした」という奴らがぽこぽこ出てきて、なかなか飽きない展開だった。あと、この死体は実は医者の奥さん(つまり別人)で、自称アパートの家主は実はクリスタルで、自称ロス警官デソトは実はデガルモで、クリスタルを殺した犯人もデガルモで、系も多い。
個人的には、他の作品と比べると、「ハードボイルド文学」というより、探偵ものミステリー小説という感が強めかなと。そもそも純文学を少々背伸びしながら読んでる身としては、謎解き要素やサスペンス要素が多いので読みやすかった。
(一方で、村上春樹は解説にて、チャンドラーらしくないということも書いてる。かつ、ミストリーとしてのプロットにも論理的な破綻があると)
(memo)
296 - 「警察の仕事には山ほど問題がある。政治と似ている。それは最良の人間を要請しているのだが、そこには最良の人間を惹きつけるものは皆無だ。だから我々は手に入る人材でやっていくしかない。そしてこのような結果がもたらされる」(ウェバー警部)
336 - 「こういうシーンはどうしても好きになれなくてね」と私は言った。「探偵が殺人者と向かい合う。殺人者は拳銃を持ち出し、それを探偵に向ける。そして探偵に悲しい話をそっくり聞かせる。話の最後には相手を撃ち殺すつもりで。そのようにして貴重な時間が浪費される。たとえ最後には殺人者が探偵を撃つことになるとしてもだ。ただ実際には殺人者が探偵を撃ち殺すことはない。それを妨げる何かが必ず起こるんだ。神様たちだってこういうシーンはあまり好きじゃないからね。だから彼らはいつだって邪魔を入れることになる」
345 - 彼らはドアを蹴破ったりはしない。そんなことをしたら、足を痛めてしまうからだ。警官たちは足に対して気を配る。彼らが気を配る相手はせいぜい足くらいのものだが。
365 - もし殺人者たちが、罪を免れて逃げ切れると思わなければ、人を殺す人間なんてほとんどいなくなってしまうはずだ -
Posted by ブクログ
レイモンド・チャンドラー新訳シリーズ、最終作。もうマーロウに出会えないのかと思うとやはり寂しい気持ちが...。後書きを読み終え、感慨深い気持ちになっている。
行く先々で様々なことに巻き込まれるマーロウ。「1日1殺人」は言い得て妙だなと思い、少し笑った。しかしそれも私立探偵が欲している答えの一部であり、呼び寄せるんだろうな、と。
今回の作品は少しハードボイルド感に欠ける気もするが、普通に面白かった。真ん中あたりから抱えていた違和感が最後にスカッとした。私立探偵/フィリップ・マーロウに魅了されてよかったと心から思う。そして村上さん、ありがとうございました。
(それにしてもやはり寂しい...ロング・グッドバイ、読み直そうっと...) -
Posted by ブクログ
レイモンド・チャンドラー長編の村上春樹訳としては最終となります。名残惜しいというか、余韻に浸るように読んでいきました。他のチャンドラー長編とは大分違った印象のある本作。少し期待を裏切られながらも、本作には光る魅力もありという内容でした。その場その場に読者を引っ張り込む、魅力的な文章の力は、他作品よりは弱いところがあり、そのある意味筋を無視したエンターテイメント性が影を潜めています。筋をしっかりと持った、一般的な推理小説に近いものにしているのですが、著者にとっては慣れないことをしてしまったのか、最後は矛盾を呈するようになってしまっているのを感じます。やはりチャンドラー小説は、読者が状況を呑み込めないまま流れに翻弄され、その翻弄を楽しむようなところがあると思います。ここが失われてしまっているのが残念だと感じます。チャンドラー小説の登場人物の魅力は活きていて、それだけで他の作家とは違う地位に挙げることができる位なのですが。
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Posted by ブクログ
村上春樹が翻訳したレイモンド・チャンドラーの名作「さよなら、愛しい人(Farewell,My Lovely)」を読みました。
「The Long Goodbye」「Big Sleep」に引き続き3作品目。
フィリップ・マーロウは相変わらず頭が切れて、率直で、男くさくて、女性に対してシビアで、へこたれず、強く、そして孤独です。
そこに首を突っ込むの?という点が普通と違ってドキドキの連続で、案の定痛い目に何度も会います。今回は半殺しのヤク漬けにされかかるなど、ちょっと程々にしておきなよと忠告したくなるぐらい。
あと言葉尻がいちいち面倒くさい。相手に食ってかかるし、皮肉っぽいし。あと、まるで○○のようだと比喩するのは村上春樹が訳しているから?そのせいもあって、そのうちフィリップ・マーロウが「やれやれ」とか言いそうな雰囲気。そういや村上春樹作品の主人公もフィリップ・マーロウ的な人が多い気もします。
そういったぶぶんも全部ひっくるめて、フィリップ・マーロウ作品群の最大の魅力だと思います。
登場人物も多彩。
へらじかマロイ、美女たち、警察の方々、クセの強いおばちゃんたち、臆病なスケコマシ、占い師、脱法医者、暗黒街のドン、などなど。皆ビビットに表現されており、頭の中で絵が浮かんでくるようです。
一番印象に残っているのは、のちに無残な姿となるアル中のおばちゃんですかね。お酒とラジオだけが私の心の拠り所、同情したくなる境遇の彼女の印象は深く残ってます。
前作Big Sleepでも思ったけど、名推理!と言うのはないです。
フィリップ・マーロウの行動が事件の解決に繋がっていくという流れ。
ストーリーの展開のされ方から、こうなりそうだな、と言う推測はつきますが、後の種明かしで、はあ、なるほどねとなります。読んでるだけではよく推理できないある種の名探偵コナン的な種明かし。まあ推理小説らしいですけどね。
物語では「愛しい人」は死んでしまい、「愛した人」も同じ道を歩んでしまいました。
愛しい人がどうであれ、
愛しい人に何をされようが、
貫く愛というのは素晴らしいものですね。