レイモンドチャンドラーのレビュー一覧
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こんな有名な小説を、勘違いしていました。私。
ハードボイルドと言えばチャンドラー。
なのに。
フィリップ・マーロウ。
「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」という台詞で有名です。
確かにある意味タフですし、優しいとも言えますが、想像とは全然違うキャラクターでした。
一人称で書かれている地の文の人称名詞が「私」なんですよ。
ハードボイルドなのに!
そして会話の中では自分のことを「ぼく」と言っています。
ハードボイルドなのに!
木枯らし紋次郎のようなクールガイだとばっかり思っていたハードボイルドな探偵は、至極真っ当な私立探偵。
目の前で起きた殺人事件。一応警 -
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1943年発表だが、いささかも古臭さを感じさせない。
本作は、ファンが泣いて喜ぶ名台詞も、マーロウ自身のロマンスも、魅力溢れる脇役やシビれるシーンも、チャンドラーマニアからの人気もあまりなく、いうならば地味な作品に位置する。
けれども、警察権力に傷め付けられながらもストイックに謎を追うマーロウの姿は、ストレートな私立探偵小説の基礎となるスタイルを幾つも提示しており、読まずにおくのは勿体無い。
マーロウの冷徹な視点を通した登場人物たちの造形と、湖畔などの自然や様々な情景での描写力はハードボイルドならずとも、秀れた小説技巧の手本となるべきものだ。すでに完成されていたスタイルはさらに磨き上げら -
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レイモンド・チャンドラーの村上春樹翻訳シリーズ。過去に読んだ「ロング・グッドバイ」、「さよなら、愛しい人」がいずれも素晴らしかっただけに期待していたけれど、期待を裏切らない作品。
チャンドラーの作品における印象的な主人公である探偵フィリップ・マーロウが初めて登場する作品である本作も、自由に、かつシニカルに動き回る彼の姿を堪能できる。
依頼人からのさほど複雑ではない依頼を解決するために動き回るうちに、彼の周りで多くの殺人や起こり、そして行方不明になった一人の人間を見つけることが、依頼人にとっての本当に依頼ではないかと気づく。「大いなる眠り(The Big Sleep)」というタイトルは、この -
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レイモンド・チャンドラーの長いお別れ、村上春樹訳。
まずそのタイトルに惹かれた。ロング・グッドバイ。
なかなか粋なタイトルである。
フィリップ・マーロウの織り成す物語に、
読んでみて大分想像してたものと違っていた。
いわゆる推理物と呼ばれる、事件が起きて推理していって犯人を暴いていく、
そんな王道パターンとはどこかズレているような、
まずもって、人間臭さが全開である。そして何処までもキザな。
そんなフィリップ・マーロウという男の魅力を存分に味わう、
読んでいくうちに珈琲を深く味わうような、
そんな苦味にも似た切なさがそこには広がっていた。
ハードボイルドとはこういうことなのかもしれない。