山本おさむのレビュー一覧
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深い物語。人間というもの、人間社会というものの、残酷さ理不尽さ、どうしようもなさ。その中で足掻く人の勁さ。
イデオロギーなぞで人が幸せになるか、と言った流転の海の熊吾のセリフを思い出す。
漫画なのに語られる言葉が重い。
『不完全であるところの実在の人間は、その理念を遂に、地上に実現することはできないのだ。美しい理念は、人間の邪悪なる欲望によって歪められ、汚され続け、やがて人々はそれを現実と呼ぶようになるのだろう。どのような政治体制になろうとも、そこからこぼれる者、はじき出される者は必ず出てくる。』
単なる理想主義に走るのではなく、こうした現実、人間と人間社会の特性をふまえて、制度の限界も踏ま -
無料版購入済み
今障害学を学んでいる者ですが、この漫画は教材としてあちこちの研究書に出てくるので興味がありました。思いの外内容が壮絶で、もし自分がこれらの子供の親だったらどうしただろうと考えさせられました。日本で初めて聾を大々的に扱った漫画として、また半世紀昔の日本の障害教育の歴史を描いた作品として、とても意味のある作品だと思います。
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購入済み
現代の事なのに、知らなかった
読み始めは、戦後すぐの話だと思っていたが、ほぼ同世代の話(主人公の武明が4年下)だった。私も高校時代、創立3年の新しい高校で、野球部が無く、自分たちの時代に野球部を立ち上げた。野球をやりたい人間を集めて、先生に頼んだら、それで野球部が出来て、公式戦にも参加出来たのに、福里ろう学校とは大違いだ。彼たちはこんなに苦しんだんだと思うと、自分たちのやって来た事は恥ずかしいばかりだ。あの時、彼らくらい野球に取り組んでいたら、その後の人生も変わっていただろう。でも還暦を過ぎた今、このマンガに出会えた事は感謝したい。小中学生の教材にして欲しいぐらいの作品だと思いました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ3巻まで一気に読み終えました。
「事実をもとにしたフィクション」という大前提をついつい忘れさせられる
作品ですね(それだけに巻末の「作者註」が面白く熱い!)
自分のこの時代背景に対する知識は大昔にヤングジャンプ連載の
”栄光なき天才たち”でトランボの話(単発)を読んだ程度です。
さすがに”ローマの休日”位は見たことありますが
あの映画にこれだけの背景があったとは驚き。
(あったかどうかはともかくそれだけ深読みできる作品という事がすごい!)
2巻のワイラーとトランボの「信頼」の絡みは涙なしでは
読み続けられない・・・。
3巻ラストのチャップリンとアルヴァの話もそう。
チャップリンの言葉が深く -
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Posted by ブクログ
山本おさむ『今日もいい天気 原発事故編』双葉社。
天栄村の道の駅で天栄村を舞台にした漫画と紹介されいたのを見付けて、田舎暮らし編と共に購入。
東日本大震災、福島第一原発事故により一変した自然豊かな天栄村の暮らしを描いたコミック・エッセイ。田舎暮らし編の面白可笑しい長閑な雰囲気とは全く異なり、著者の山本おさむの怒りと狼狽が描かれる。
福島原発事故の直後、福島市内でさえ、20マイクロシーベルトを記録した。当時の風向きのせいで、天栄村にも放射性物質が降り注ぐ…当時の政府の原発事故に関する大本営発表により、多くの人びとが苦難の道を歩むことになる。 -
全ての方に読んでいただきたい本
勤務先だった小学校に置いてありました。
【障害】について色々な側面が分かる本で、是非色々な場所に置いてほしい本です。
今自分が障害者になり、見えない障害の為、周りへの理解を求める事に苦悩してます。
…理解はほとんどされません。体験した事の無い人には家族ですら理解出来ないです。
家族は良かれと思ってでしょうが、自分の生きてきて学んだ事や自分の似た事例に当てはめて語りだす位で逆に傷つく事の方が多いです。
でも、それすらも伝わりません…。
家族はきっと良かれと思ってしてくれてる。
でも障害者本人からすると…。
本当に当事者にしか分からない事例が5万とあると思います。
だから -
Posted by ブクログ
ネタバレ山本おさむさんの福島暮らしマンガの続編。
2011年3月11日、埼玉の仕事場近くで地震に見舞われた山本さん。
当初は「数日もたてば交通機関等も含めてある程度元通りになる」と楽観的に思っていたようですが、自分もしかり、(後日話を聞く限り)首都圏にいる人は結構な割合でそんな風にどこかで思ってたような気がします。
それがあの津波の映像を目にしたことで一気に気構えが変わり、さらに原発から湧き上がる謎の煙(水蒸気)の映像を見て「これは何が起こってるのか」と不安にかられたのを思い出しました。
いまいち判然としない官邸からの発表を真っすぐポジティブに受け止めようとする反面「ホントか?」とどこか疑う自分もいて