神戸遥真のレビュー一覧
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老舗旅館を営んでいた父が急逝した夏希に遺されたのは、旅館リニューアルに伴う借金5000万円と女将になる道と支援者で採点魔の遼介との契約結婚。慣れない女将業に苦戦しつつ借金返済&離婚を目指して突き進む夏希と、嫌味だけど思いのほか人間味のある遼介のやりとりが、だんだん微笑ましくも思えてくる。
この作者さんの書かれる作品が、私の中で、ちょっとダメ寄りの女の人と口が悪めの男の人の物語、となっていて、今回もまさにそんな感じ。おいおいと思うこともあれど前向きに進んでいく夏希のはっきりしたところ、ないわーと思うこともあれどなんだかんだ分かりにくい優しさと可愛げのある遼介のやりとりはほっこりした。 -
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▼神戸さんの「恋ポテシリーズ」(というのでしょうか)第2作。割と明快に、「ウケたからシリーズにしよう」感があって微笑ましいです。
▼10代、内面的な悩み、親との葛藤、社会に出ていろんな人を知ること、先入観イメージと、リアル体験の落差、労働を知ること・・・などなどの主題みたいなものは前作で一応やりきっていはります。続編は、そのようなことを引き続き描きながらも、対人関係、恋愛、三角関係、みたいな路線にかなり舵を切ってます。それはそれでキャラクターには馴染み感が増して行くので、悪くありません。
▼個人的にはこの続編の白眉は、バイト先の先輩の、フリーターの「萌夏 さん」が、正社員に挑戦して受かり、皆と別れる(正社員になると店舗が変わる。チェーンだから)、というくだりかと思います。やはり別れというのは青春で成長で涙だなあ(笑)。 -
Posted by ブクログ
人が人を理解しようとする時の手がかりとして、いろんなタグを付けるのはごく当たり前におこなっていることだけど、そのタグ、本当に合ってる?と時々振り返ってみなければいけないと思ってる。
見た目、言葉遣い、ちょっとした振る舞いに対する自分の感じ方etc.……その時々の移り変わる心象や状況でいかようにでも編集されてしまうタグを固定させてしまわないように、と自制できるのが人として成長するということなのかもしれない。
「何も知らなくても、相手の考えなんてわからなくても。理解できることはあるんだろうか。
寄り添えることはあるんだろうか。」(117ページ)
背景として少しだけ登場する別シリーズの世界が、物語の色合いを明るく優しく照らしているところも良かった。 -
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聞いたところによると、『ぼくらの胸キュンの作り方』と同じ学校が舞台だそうだ。「中学生による共同での創作活動」が描かれる点も共通している。
『ぼくキュン』は、「好き!やってみたい!」という気持ちから友だちと二人で漫画製作を始め、物語やキャラクターをゼロから作り込んでいく過程で、気づきや経験を得ていくお話だった。一方本作の主人公の波瑠くんは、周囲の期待に合わせてうまく立ち回ろうとしていたら、やりたくもなかったが流れで自主制作映画のほぼ主役(映画研究会看板女優の相手役)を演じることになり、先輩の書いた脚本と指示に沿ったモノづくりに巻き込まれていく。
やるとなったら中途半端なことはしない、真面目な波瑠くんなので、いやいやながらの後ろ向き参加では決してなく、主体性はちゃんとある。そうやって役者という初めての役割に取り組む彼の姿を見ていると、役者さんというのは、作り手でありながらも与えられた脚本の読者という意味では受け手でもあって、作り手といいつつも“作り”ようのない自分の姿形と声と気持ちを丸見せすることがその実作業であるという、面白い創作の形だなあということを発見した。
波瑠は、これまでは自分の本音に蓋をしたり、偽りの笑顔や気配りをうまく表に出したりする、そういうスキルを身につけ研ぎ澄ますことで生き延びてきたけれど、映画のための演技をきっかけに、自分の本音に向き合うスキルを使って生きてみることもできるのかもしれない、と気づいていく。そんな彼の変化が、実はよりハードな環境で生きてきた、看板女優にして“嘘泣き女王”の凛子にも影響を与える様子が、なんだかおばさんには眩しい⋯。表紙絵の美少女が眩しいのは、「こんな可愛い子に助けを求められたら恋しちゃうし頑張っちゃうよね〜」という他者から見た魅力によってではなく、この子自身が持っている自分で変わっていく力で輝いているからなんだなと、読み終わってみるとわかる。
「男の涙」がテーマということで、確かに男性が泣いたり弱さを見せたりすることの許されてなさ、泣いてもええんやで問題はあるよな、と思う。だが、女だっていつでもどこでも泣いてまえーが許されてるわけではなく、泣いたら泣いたで「涙は女の武器」とか非難めいた発言をされ、それを受けて別の女性が「私は泣いても男性に『女の武器』と言っていただいたことはない」とコメントするなど、私が高校生のころ政治家たちのそんなやりとりがニュースを賑わせていた記憶がある。作中でも凛子は女子から嫌われがちという描写があり、あれは嘘泣きだからかもしれないけど、とにかく涙問題は複雑!
きっと、男であれ女であれ、この土俵では泣いてはいけないとされる場所が確かにあるのだと思う。土俵を下りちゃうのも手だけど、「不逞不遜の大胆さ」(by キャロル・ギリガン)を発揮して堂々と泣いてみるのも、今度はやってみたい。