谷瑞恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
図像学を学んだ天才少女千景と、その仲間たちが絵画の謎に迫るシリーズその2。
相変わらず千景は素直ではなく、人を愛してはいけないと考えている。
そんな心に空洞を持つ少女にひかれている幼馴染、透磨は彼女を気にかけながらも優しい言葉をうまくかけられない。
しかも今回は、そんな透磨の元カノも登場して、千景は「嫉妬」と憧れ」の感情を見つけていく。
駆け引きではなく、互いが相手を知り、補完し合い......そんな大人の恋愛にはまだほど遠く、進展はほんの少し。
それを象徴するような今回の絵画は、ブロンズィーノ。
『愛の寓意』で有名な画家だが、ブロンズィーノには一体どんな呪いが込められているのか?
しかも、贋作が出回っているという。
怪しげな噂と、悲劇が絡み合う。
贋作師としての汚名から逃れるためにはどうしたらいいのか?
自分をそんなところに置き、自尊心を貶めたやつにどうやって復讐したらいいのか?
死ぬことでプライドを保つことはできるかもしれない。
しかし、そうしたところで、果たして自分を苦しめたものから逃れることはできるのか?
自分が愛して、全てを注ぎ込んだ絵は、自分の心を苦しめるだけのものだったのか?
いいや、そうではない。
だが、周りが後からそのことを感じ取っても、当の本人は語ることもできなければ、やり直すこともできない。
誰かに相談していればもしかしたら違った道を見つけることができたかもしれない。
ただ、それは全て、「〜だったかもしれない」という仮定の話だ。
それが残念でならない。
千景の心は少しずつほぐれていっているのだろうか。
透磨は彼女の心に寄り添う。
憤る時だけは素直に感情を表してくれるなら、とその怒りを受け止めようとする。
傷ついた心を守ろうとする千景の感情の発露を、不器用ながらも守り、包みこもうとする。
千景の両親がなぜ彼女を捨てたか、まだ明らかにならないが、幸せな結末であることを望む。
『思い出のとき修理します』もそうだが、著者は家族によって傷ついた女性を主人公に据えるのが得意なようだ。
キャラクターは違うが、ふと感じた。 -
Posted by ブクログ
図像学という聞きなれない学問を使って、絵画の謎に迫るシリーズ、第一弾。
絵画に仕掛けられた呪いとは、そしてそれを打破するためにはどうしたらいいのか?
過去に謎と傷を持つ天才少女と、その幼馴染、そして怪しげなクラブの面々。
放っておけない魅力を持つ少女に、ぶっきらぼうな幼馴染。
少女漫画の王道ともいえる設定だが、ミステリとしては本格的。
西洋絵画に描かれる持ち物(アトリビュート)は有名なものではりんご、羊、孔雀、車輪など。
文字を読めない人々が大半だった時代には、決まった持ち物を描き入れることで、これが一体誰でどんな意味を持っているのかを伝えていた。
その意味のある物を組み合わせることで、画家はさらにメッセージを伝えた。
有名な画家の有名な主題をあえて使うことで、現実世界で本物を見る楽しみもある。
さて、呪いの絵画とは一体どんなもの?
今回はゴヤの「愚者の船」。
愚者はタロットにも使われており、そのまま愚かなもの、という意味も持つが、実は幅広い意味を持たされている。
手元にある『美術シンボル事典』では「、真実を言っても冗談の形を取る限り罪には問われない者」という表記もある。
この絵が呪いの絵画なのだろうか?
だとしたら一体なぜ?
呪いの絵画を見てしまった者は何に怯えているのか?
私たちが美術品やその他いろいろな者から得ている情報は思っているより多く、次第に心の奥底に溜まっていく。
もちろん悪い影響ばかりではない。
自らを助け、導く助けになる物もたくさんあるが、この呪いは自分の中にある黒い感情を呼び起こすのだ。
それが自分自身を追い詰めていく。
悪は自分を削り、蝕むもの。
それを手懐けられるはずもない。
千景はそれをよくわかっているから自分を許せず、他人と関わろうとしない。
でも、もし、自分と向き合えたのならば。
彼女の成長を見守りながら、妖しい魅力を放つ絵画の世界を楽しみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第三弾。今回は千景の父に対してフォーカスが当たっている。父が手掛けたイカロスの墜落を見立てた庭園に足りないものを見つけるよう依頼された千景たちは、庭に無いのはイカロス自身であることを発見する。
依頼者は足りないイカロスとは、粗暴に成長した息子の事ではないかと考えており、千景は父がそんな未完成の庭園を作ったことで、千景へイカロスはお前だとメッセージを送られたように感じて、依頼人の息子に興味を抱く。
そのことにやきもきしながらも、素直に態度に出せない透磨。
千景が忘れてしまった記憶を思い出して欲しいのか欲しくないのか葛藤する彼だが、そんなこと知らない千景は透磨のツンツンした態度に無意識に傷つく。
千景は絵画に関してプロフェッショナルな知識を持つ職人だが、美人なのに10代らしく両親や周りとの関係を上手く作れなかったことで自分は誰からも必要とされないというコンプレックスを抱えるアンバランスさを持っていて、非常に危ういなぁと感じる。やはり親の影響って本当に大きい。
透磨が千景を受け止められるようになるには、まだまだ何か足りないなぁ。
不器用な二人のやり取りで、読み手側はじりじり感じてしまうが、今回の件で二人の仲が絵画と図像術を通してまたほんのちょっと縮まったかな? -
Posted by ブクログ
贋作がある、という噂を聞いて、真実を確かめるため
動き出したはいいものの…。
この二人の屈折したというかなんというか…。
関係性、最後の方には多少動いてますけど
他からみたら、ほぼ動いてないに等しい状態。
幼馴染の警察は、確実にあと一歩どころか
やろうと思う所で阻止されまくりそうです。
発見された絵に、画廊に、昔の彼女。
色々掘ったら出てきました状態なのに
本人達が掘り下がらない…!
事件だけが掘り下がって、発掘されて終了。
そのついでに、と双方の感情がでてきたりしますが
この温度差、というか気になり具合の違い差。
うん、これはさっさと別れて正解です。
相手に失礼。
付き合う事を選択した時点で、結構失礼。
事件としては、出てくる人間限られてるので
分かりやすいというか、何かある、と。
感情って、すごい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ谷瑞恵の新作。伯爵と妖精で培ったイギリス文化の知識が絵画というジャンルで再構成されている。
舞台は現代だけど、主人公の千景はリディア並に頑固で、人間関係を苦手としている18才の女の子。7歳時に起こった誘拐事件以前の記憶がなく、両親を憎み、祖父から学んだ絵画に込められる図像学を専門に飛び級して大学に入ったというとびきり変わった経歴を持つ。
そんな中、見ると不幸になるというゴヤの絵が盗まれ、日本にあるという情報が彼女の天敵、西ノ宮透磨にもたらされる。
彼はそういった絵画を収集する集まりキューブを結成していた。
不幸をもたらす絵を放置できないと、自分も調査にのりだすが、対人が苦手な主人公は、絵さえあれば一人でいい、となかなか頑なな態度になってしまう。
周りの人物たちが大人で、早熟で頭の回転が早い割に不安定な情緒の主人公を理解してくれるからうまく回ってるけど、ただの同級生だったら絶対に嫌煙されるか、浮いてたと思う。なまじ美人だから余計に。
こういうワケありな過去を持つ人と付き合う度量ってどうやったら身に付くんだろう。
たぶん平穏を求める人にとって、和を乱す、トラブルを起こすものに対してイライラしてしまうのはしょうがないのかなと思わなくもない。(自分とテンポが合わない人っているし…)
そんな両親に疎まれてしまった主人公がどんな風に絵画と、そして透磨と向き合っていくんだろう。 -
Posted by ブクログ
すべての戦いを終え、平和を取り戻したリディアとエドガー。息子のアルヴィンも1歳半になり、エドガーは改めて亡き父の領地であるシルヴァンフォードを訪ねることに。だが両親の墓は硬く閉ざされており、墓守の老人はエドガーを後継者とは認めなかった。一方パリへの留学話が出ているポールは、ロタに求婚するべきか悩んでいて・・・。
本当に、終わってしまったんだなぁと実感した番外編。最終巻が怒涛の展開でハラハラドキドキという感じだったので、色々ありながらものんびりした短編で伯爵家もようやく安心して暮らせるようになったんだなぁとしみじみしました。シルヴァンフォードの地で、エドガーが笑えるようになって本当に良かった。アルヴィンもかわいい♡そして息子にすらやきもちのエドガーは全読者の期待を裏切らないねwポールとロタも何とか落ち着きそうだし、これからも幸せな未来が待っているでしょう。谷先生の新作も楽しみです。