谷瑞恵のレビュー一覧
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プリンスの組織からリディアを護るため、そして二人の将来のため、決死の覚悟とともにリディアと離ればなれになることにしたエドガー。アーミンとともに組織に入り込み、プリンスになったふりをするのだが・・・。一方、リディアはフランシスや仲間たちとともに妖精国に向かう船に乗り込むのだが、船にはプリンスの部下・テランの策略で、女妖鬼であるブーヴァンシーが紛れ込んでいた。危険すぎる罠に気づかず、信じる気持ちを失いかける仲間たち。リディアは皆を率いる者として必死に立ち向かおうとする。永遠不滅の二人の愛で奇跡が起こる。
いよいよ妖精国、プリンスの記憶絡みで核心に迫ってきたなあという感じ。離れ離れのエドガーとリディアでしたが、幸せな回想場面があるせいか、むしろ互いを大切に思う心がありありと分かって幸せな心地になりました。夫婦の絆もついにここまで・・・と初期のエドリディを読み返すたびに感慨深い(笑)ペリドットは誕生石でもあって個人的に好きだけど、「闇を照らす太陽の光」でもあったんですね~。今の二人にはぜひとも必要な石!シリーズものの宿命で登場人物がだいぶ多くてごたごたするけど、上手くまとめてる感じがしました。正直ポールとロタが気になりすぎます・・・。 -
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“「そうね」
ロタに同意し、リディアは少年に手を差し出した。そんなリディアに、彼は首を横に振る。
(でも、仕事がおわらないと帰れない)
「仕事?」
(女の人をたべるんだ)
わけがわからなくて、ロタやポールと顔を見合わせたが。
(きみどりの目の、さび色の髪の)
ぞくりとした。
視線をあげた少年の、長い前髪がゆれ、その隙間から瞳が覗く。
あきらかに人間ではなかった。額の真ん中に、大きな一つ目があったのだ。
(ねえ、カイブツって何?ぼくがカイブツ?)
異形の瞳でリディアを見つめる少年の、皮膚がどろりと溶け出した。むき出しの肉や血管があらわになった手で、彼はリディアが差し出した手をつかもうとのばす。
「リディア、そいつに手を触れるな!」”
レイヴンの素直な台詞が面白い。
エドガーの決めた決断が次からの展開にどのような影響をもたらすのやら。
というか最後、何でフランシスがいたのだろう?
“「まあ、そうなんですか。フランシスさんは物知りですね」
ケリーにほめられて、フランシスは胸を張る。
「男は頭がよくないとね。腕力が自慢なんてのはもう時代遅れさ。なあレイブン、そう思うだろう?」
ちらりとレイヴンを見るフランシスは、武術に秀でたレイヴンをやり込めてみたかったのかもしれない。
「でしたらフランシスさん、頭を使ったことがないのはどうしてですか?」
皮肉や嫌味を言えないレイヴンだけに、純粋な気持ちで述べられた疑問は、かなりの破壊力があった。
フランシスはすごすごと降参して口をつぐんだ。
ケリーがそっとついたため息は、フランシスも頼りにならないと落胆したからだろうか。” -
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“「膝掛け、編んでほしいな」
じゃれつくように耳元でささやく彼は、熱い瞳でリディアを見つめる。男の人はもっとそっけないものだと想像していたリディアにとって、こういう日々も予想外のことだった。
「えっと、ケリーに聞いたの?」
「うん、ふたりで使えるくらい大きいのがいい」
なるほど、仕事に忠実なレイヴンが、部屋をあたために来ないのは、ケリーが忠告したからに違いない。
ケリーは気づいていないかもしれないが、レイヴンはケリーの仕事を認めている。
「そう、ね。いいわね」
周囲のみんなにも助けられて、リディアの日々の幸せはある。そう実感しながらリディアは微笑んだ。”
エドガーの幼いころの話とか入った短編集。
昔からその性格だったのね……。
“「そういえばポール、大公とご対面するのははじめてだっけ。ちょうどいいじゃないか、気に入ってもらうチャンスだ」
すると彼は、あわてて否定の身振りをしようとしたせいか、スケッチブックを派手に落とした。
「まさか……!ぼくなんか論外ですよ!大公は亡命された身とはいえ、ヨーロッパ各地の王侯貴族と親戚なんですよ。ロタだって、国で革命が起きなければお姫さまだったわけで……、庶民の相手になるような女性じゃ」
「おや、そっちの話?画家として売り込むチャンスだと思ったんだけど」
拾いかけたスケッチブックをまた落とす。
うろたえるポールを見るのを、悪趣味ながらエドガーはひそかにおもしろがっている。
が、もっとひどいのはフランシスだ。
「ポールって、とくに欠点はなさそうなのに、女性の趣味だけはいかんともしがたいよね」
悪気なんかなさそうに、にっこり笑う。口をあけたままのポールをそのままにして、フランシスは話を変える。” -
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“「大丈夫です、あたしは奥さまの味方ですから」
ハンカチをリディアの手に握らせる。ようやくリディアは自分の涙に気づきながら、子供みたいにすすり泣いた。
「どうしよう……あたし……」
「奥さまは悪くありません」
「彼を責めるつもりじゃ……なくて……」
リディアをあやすケリーのおさげに、涙が染みこんでしまうから、泣きやもうとするけれど、なかなか止められない。
「旦那さまは、きっとすぐにあやまってきます。いつもそうじゃないですか」
でも、今度もそうだとは限らない。
そう思ったとき、ガチャリとドアが開いた。
「リディア、ごめん」
エドガーがそう言った。
「早っ……」
ケリーのつっこみに同感するよりも、リディアはあまりにも驚いて、涙に濡れたままの瞳を見開く。”
レイヴンが可愛い。
三姉妹が良い人すぐる。
“リディアのすべてを受け止められるのかどうかを、決めなければならない。
これまでずっとエドガーは、自分のことにリディアを巻き込んでいいのかと気にしてきた。リディアに救われて、彼女と生きていきたいと思えたから、必ず守ると決意した。
けれど、リディアの宿命について、どこまで考えていただろう。マッキール家の島から彼女を連れ戻したとき、エドガーは、自分さえしっかりしていればどうにかなると思っていた。
プリンスの記憶を封印できさえすればと考えていた。マッキール家の敵はプリンスであって、エドガー自身ではない。ならば自分とリディアは相反する存在ではないはずだった。
けれどリディアに降りかかるものが、プリンスとは関わりなくエドガーから彼女を引き離すのだとしたら。
それでも彼女とともに歩いていく覚悟ができるのかとニコに突きつけられ、動揺していた。
リディアは、エドガーの宿命も何もかも受け止めてくれてそばにいる。それだけの覚悟をしてくれたのに、エドガーはどうだろう。” -
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“「エドガーさまは、どんなにつらい状況でも前向きに楽しみを見出す方なのです」
一見格好のいい言い方だが、伯爵の場合、天然のタラシだというだけではないか。
「とにかく、このままじゃだめだって。伯爵家のためにもならない。あんただってそう思うだろ?」
「はい。エドガーさまに手をあげることができるのはリディアさんだけです」
またリディアはやったのか。と思うニコは、エドガーが従順な妻を歓迎するのも無理ないかもしれないと少しだけ同情した。
「リディアさんの平手だけが、エドガーさまをプリンスから守ってくれそうな気がするのです」
なるほど。と笑いながらニコは、そうだったらいいと願う。
「だったら伯爵は、リディアの思い通りにならないところを、ちゃんと取り戻そうとしてくれるかな」
「ニコさん、エドガーさまを信じてください」
主人を神のように思っているレイヴンだ。根拠もなく信じているに違いない。
それでもレイヴンの、わずかにも迷いのない目を向けられると、ニコはエドガーへの不信感が少しはやわらぐのだった。
リディアの身を誰よりも案じているのはエドガーであるはずだ。そろそろ信用してやらないと、リディアにも申し訳ないだろう。”
いつも擦れ違いの繰り返しが続いて。
ううう、少しもどかしさが募る。
“エドガーも首を傾げる。
「ポールは襲われてもいいのか。あれは前進したってことなのかな」
「どうなのかしら。ロタの抱擁はじゃれついてるようなものだから」
「まあいいや、僕たちも帰ろう」
さりげなくリディアの腰に腕を回すエドガーを、フィリスはじっと見ていた。
「ああそうだ、フィリス。きみが一人前の男だってことは認めよう。けど、僕のライバルになるには、テムズ河で泳げるようにならないとだめだよ」
河に投げ込むぞとい脅しを遠回しな表現にくるんで、にっこりと極上の微笑みを向けるエドガーに、フィリスは首を傾げた。
そんな彼も、いずれは紳士のユーモアとやらを理解するようになるのだろう。” -
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“「ようレイヴン、あのふたり、結婚すればもっと落ち着くかと思ったのに、ますますあぶなっかしくて、あんたも苦労するよな」
「はい」
隣のニコに顔を向けたレイヴンは、ケリーが知るよりもやわらかい表情をしているように見えた。
「でもこの苦労は、悪くありません」
「ま、そうだな。ちょっと前まで、あのふたりもケンカなんかしてる場合じゃなかったわけだし」
顔を見合わせ、深く頷きあう。
「あのう、レイヴンさんはニコさんと仲がいいんですね」
ケリーがそう言うと、レイヴンは意外そうに彼女の方に顔を向けた。
「ケリーさん、いつからそこに?」
見えてなかった?”
リディアとエドガー、まだすれ違うかと若干呆れ気味。
レイヴンが変わりつつあるけど、その方向性が面白い。
ケリー可愛いよ何か健気だ。
“「彼、古い傷がたくさんあるんだね。そんなに目立たないけど、いったいどんな生活をしていたのかな」
問うというよりは、リディアに教えるかのようだった。
そしてリディアは駆け出していた。
“体の痛みは我慢できる。過ぎ去れば消えるものだから”
そのくらい彼にとって、痛みはありふれたものだった。
それ以上の苦しみを、エドガーは知っていた。過ぎ去っても消えないもの。いつまでも彼をさいなんでいるもの。
心の痛みは?
生まれてきてはいけなかったなんて、あんまりな言葉だ。
エドガーは自分のせいで両親が殺されたと自覚していて、傷ついていた。それでもレイヴンや仲間を守るために生きてきて、ようやく自分の将来に希望を持てるようになったのだ。
リディアはその希望をささえられるつもりでいたけれど、この新婚旅行にしたって、エドガーを心から楽しませることができていただろうか。
楽しい時間を過ごそうと、彼の方は心を砕いてくれていたのに。” -
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“「新婦、リディア・カールトン」
また急に緊張しながら、リディアは顔をあげた。
「あなたはこの男と結婚し、神の定めに従って夫婦になろうとしています。健やかなるときも病めるときも、常にこれを愛し、これを敬い、これを慰め、これを重んじ、これを守り、死がふたりを分かつまで、かたく節操を守ることを誓いますか?」
「……はい、誓います」
もう大丈夫。妖精はじゃまをすることができなかった。
安堵して、そしてあらためて、誓いの言葉が胸にしみ入ると、リディアの瞳はうるんだ。
エドガーの手が、頬をぬぐうように触れた。
いつのまにかベールはあげられていて、隔てるものもなく彼の顔を間近に見ている。
“父と子の聖霊のみ名において……”
口づけは驚くほど慎重だった。
そっと触れて、そっと離れた。
“神があわせられたものを、人は離してはなりません。……アーメン”
もう誰かに、不本意に、引き離されることなんてないんだ。
そう思うとうれしくて、こらえきれずに涙がこぼれた。”
こういう類の小説の中で結婚式をあげるなんて話初めて読んだ。はふぅ。
結婚式当日にも相変わらずな二人に少し呆れる。
チェンバレン主教とか、ユリシスの動きが何か怪しい。
“見透かしたように、ユリシスはくすくすと笑う、この結果をわかっていたとでも言いたげだった。
「前のプリンスにはうまく取り入っておられたあなただが、今度のプリンスには嫌われたかもしれませんね。まだ挽回はできますよ。ただ、彼には“プリンス”の自覚がない。おもちゃを取り上げようとすれば、全力で抵抗します。しばらくは、遊ばせておくのが最善でしょう」
「ユリシス殿、あなたなら、いずれプリンスを意のままにできると?」
「その考えは捨てるべきです。プリンスは、まだ赤子のようだろうと、自らがすべての上に立つことを直感的に知っている……。実感なさったはずでは?」
そうだった。美しく鋭利な刃物のような、青年貴族。それでいて、この世の地獄というものを本当に知っているのかもしれないと、微笑みの裏にそら恐ろしさを感じた。
「プリンスの新しい英国での恩恵をお望みなら、今後は我らに従っていただけますね?」
この、プリンスの組織を束ねる若者も、おそらく見かけどおりではないのだろう。
「王子が目覚めたあかつきには、国教会を廃し、あなたの望む協会を樹立することができるでしょう。悪魔信仰だろうとご自由に」
馬車の列が動き始めていた。ユリシスの馬車は止まったままだったのか、間もなく主教の視界から消えた。” -
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“「アシェンバード伯爵は、危険な人です。正しいかどうかよりも、あなたを守ることを優先する」
……でも、正しいことって何?
「エドガーが間違ってるっていうの?あなたたち、何も知らないくせに!」
エドガーはプリンスの犠牲者だ。彼らの組織と戦ってきて、やっと復讐を果たしたのに、新しい“プリンス”にされようとしている。
「あなたたちも予言者も、エドガーさえいなくなればいいのでしょうけど、それが正しいことだっていうの?あなたたちが氏族<クラウン>を守りたいように、エドガーだって大切な人たちのために戦っているだけだわ!」
リディアの必死の反論にも、パトリックは動じなかった。
何がおかしいのか、にやりと笑う。
「伯爵をプリンスにしたくないなら、確実な方法がありますよ。婚約を解消することです」
「な、何を……」
「あなたの気持ちが変わったとなれば、アシェンバード伯爵は、薬を手に入れる必要はなくなります。もはや悪しき妖精の力を使う意味もなく、さっさとロンドンへ帰って、島々の魔力やプリンスの因縁とかかわりなく過ごすなら、ただの人間としての彼のままでいられるのでは?」
リディアがいるから、エドガーは一線を踏み越えてしまう。
パトリックの言うとおりだった。”
二人の気持ちが揺れ揺らいで落ちるべきところに落ち着いて、一段落。
パトリックが何か憎い。苛々。
周囲の人の行動が良かった。
ニコ帰ってきて良かったよニコ。
“「そろそろ行くよ」
傾いた木戸を開けるその背中を、リディアは眺めていることしかできない。
小屋の外はまだ雨が降っていて、ときおり空も光る。なのにエドガーはひとり出ていく。
このままもう、会えなくなるの?
そんなのいやだ。
しかしリディアは、エドガーを止められなかった。
彼がプリンスに近づく危険をおかすなんて、これで最後にしてほしいから、追うことなんてできない。
……本当にそう?
違う、あたしはプリンスを恐れているだけ。
エドガーは、プリンスから得たものでも青騎士伯爵の力にできると思っている。立ち向かっていこうとしている。けれどあきらかに無謀な行為で、不幸な結果を招くだけかもしれない。
……だったら、いっしょに堕ちればいいじゃない。
彼が背負ってしまったものも、それが招く結果も、いっしょに受け止めればいい。
自分も彼も幸せになれないなら意味がないと、別れようとしたなんて。
行かなきゃ。” -
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“が、彼の指には、そしてほかのどこにも、赤い糸は見あたらなかった。
「あれ?おかしいわね」
はっきり告げたロタに、レイヴンがショックを受けたのかどうかは、彼の表情からはわからなかった。
「ねえレイヴン、今は糸がなくたって、いつか現れるわよ、きっと」
リディアの苦しい慰めが届いたかどうかもわからない。ただレイヴンは、ニコの方に顔を向けた。
「ニコさんは」
エドガー以外の人にほとんど興味を持たないレイヴだが、どうにもニコだけは仲間意識を持っているようなのだ。
「おれ?ちゃんとあるよ、赤い糸」
気を遣うわけもなく、自慢するように片手を振ってみせたニコには、さすがにレイヴンも落胆の色を隠せなかったようだ。
「…………そうですか。…………私にだけないのですか」”
短編集。
最近のレイヴンが面白い。
あとポールも。なんか可愛い。
“「ええと、ロタ、きみにはもっとふさわしい人が現れるよ」
あわててなぐさめようとする彼は、どうしてこんなに女の子を相手にしているみたいなんだろう。
「前にもそんなこと言ったよな」
「えっ、そうだっけ」
「ありがおt。そういうこと言ってくれるのもポールくらいさ。そうだ、これやるよ」
持ってきた小箱をポールに手渡す。何だろうと怪訝そうに、彼はふたに手をかける。
とたん、中身が飛び出した。
「わあっ!」
驚いてひっくり返ったポールの頭に、ハリネズミがしがみつく。振り落とされて、床の上でまるくなる。
おかしくて、ロタは笑った。
「びっくりした?かわいいだろ、これ」
そっと拾いあげ、彼のほうに差し出す。やがて手の中で、もぞもぞと動き出したハリネズミに、じっと見られてポールも笑った。” -
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“「リディア、そういうことじゃないんだ」
窓辺に近づいていったニコは、背伸びして外をのぞき見た。
「長いこと生きてるほど、過去のことは遠すぎて思い出せなくなっていく。とうの昔におれは、いつからこの島にいるのか、どうしてひとりきりなのか、わからなくなってた。ただ、あの霧の山々を見てると、いつも同じことを感じる。ずっと昔から、ここにいたら誰かが、おれに会いに来るような気がしてたんだ」
「ここでまた、誰かを待つ気なの?」
「よくわからない。誰も来ないかもしれないし。でも、この島でならおれは、先のこと考えずにのんびり過ごせる。アウローラと先生の家も、リディアと伯爵の家も、いつまでもおれの家ってわけじゃない」
人の寿命は短い。親友のアウローラを亡くし、見守ってきたその娘も結婚して家を離れる。そんなめまぐるしい変化に、ニコはむなしさを感じているのかもしれなかった。
人とつきあえば、何度も悲しい別れを体験しなければならないから。
リディアはニコの前に膝をついて座り込んだ。
「あたし、島を出たら、もうあなたとは会えなくなるの?」”
リディアを取り巻く環境が変化しつつあって。
プリンスと、マッキール家と。
終わり方も、中途半端で。
ううう、気になる。
リディアの瞳の色の理由は、アウローラがリディアを取り返しにいった、その時のことに理由してるの?
“「エドガーさまに仕える私を、尊敬すると言ってくださいました。エドガーさまの選択も、認めていらっしゃるはずです」
「そう。ニコはすばらしく公平だ。立派な紳士だからね」
レイヴンは頷き、ポケットを探る。そうして、球状に磨かれたブラッドストーンを取り出す。
「これを返しそびれました。……いえ、返してしまうと、ニコさんと縁が切れてしまうような気がしたんです」
エドガーは、レイヴンが眺めていた遠くの方に目をやった。
「そうだね。それがあるなら、いつかまた返す機会が訪れるだろう」
「また、この島を訪れることがありますか?」
リディアを連れて帰るなら、もうあり得ない。けれどエドガーは、レイヴンの問いに頷く。
「ああ、必ず僕は戻ってくるよ」
リディアを死なせたくない。何よりもそう思えば、ほかに選択の余地はなかった。
けれどまた、リディアをだますことになるのだ。彼女はエドガーを恨むかもしれない。
それでも、彼がリディアを失わずにすむ可能性があるとしたら、マッキール家にたよることだけだった。
「僕はリディアを愛し続ける。いつか、もういちど彼女の心を取り戻してみせるよ」”