谷瑞恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
プリンスの組織からリディアを護るため、そして二人の将来のため、決死の覚悟とともにリディアと離ればなれになることにしたエドガー。アーミンとともに組織に入り込み、プリンスになったふりをするのだが・・・。一方、リディアはフランシスや仲間たちとともに妖精国に向かう船に乗り込むのだが、船にはプリンスの部下・テランの策略で、女妖鬼であるブーヴァンシーが紛れ込んでいた。危険すぎる罠に気づかず、信じる気持ちを失いかける仲間たち。リディアは皆を率いる者として必死に立ち向かおうとする。永遠不滅の二人の愛で奇跡が起こる。
いよいよ妖精国、プリンスの記憶絡みで核心に迫ってきたなあという感じ。離れ離れのエドガーとリデ -
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Posted by ブクログ
“「そうね」
ロタに同意し、リディアは少年に手を差し出した。そんなリディアに、彼は首を横に振る。
(でも、仕事がおわらないと帰れない)
「仕事?」
(女の人をたべるんだ)
わけがわからなくて、ロタやポールと顔を見合わせたが。
(きみどりの目の、さび色の髪の)
ぞくりとした。
視線をあげた少年の、長い前髪がゆれ、その隙間から瞳が覗く。
あきらかに人間ではなかった。額の真ん中に、大きな一つ目があったのだ。
(ねえ、カイブツって何?ぼくがカイブツ?)
異形の瞳でリディアを見つめる少年の、皮膚がどろりと溶け出した。むき出しの肉や血管があらわになった手で、彼はリディアが差し出した手をつかもうとのばす。
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“「膝掛け、編んでほしいな」
じゃれつくように耳元でささやく彼は、熱い瞳でリディアを見つめる。男の人はもっとそっけないものだと想像していたリディアにとって、こういう日々も予想外のことだった。
「えっと、ケリーに聞いたの?」
「うん、ふたりで使えるくらい大きいのがいい」
なるほど、仕事に忠実なレイヴンが、部屋をあたために来ないのは、ケリーが忠告したからに違いない。
ケリーは気づいていないかもしれないが、レイヴンはケリーの仕事を認めている。
「そう、ね。いいわね」
周囲のみんなにも助けられて、リディアの日々の幸せはある。そう実感しながらリディアは微笑んだ。”
エドガーの幼いころの話とか入った短編 -
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“「大丈夫です、あたしは奥さまの味方ですから」
ハンカチをリディアの手に握らせる。ようやくリディアは自分の涙に気づきながら、子供みたいにすすり泣いた。
「どうしよう……あたし……」
「奥さまは悪くありません」
「彼を責めるつもりじゃ……なくて……」
リディアをあやすケリーのおさげに、涙が染みこんでしまうから、泣きやもうとするけれど、なかなか止められない。
「旦那さまは、きっとすぐにあやまってきます。いつもそうじゃないですか」
でも、今度もそうだとは限らない。
そう思ったとき、ガチャリとドアが開いた。
「リディア、ごめん」
エドガーがそう言った。
「早っ……」
ケリーのつっこみに同感するよりも、 -
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“「エドガーさまは、どんなにつらい状況でも前向きに楽しみを見出す方なのです」
一見格好のいい言い方だが、伯爵の場合、天然のタラシだというだけではないか。
「とにかく、このままじゃだめだって。伯爵家のためにもならない。あんただってそう思うだろ?」
「はい。エドガーさまに手をあげることができるのはリディアさんだけです」
またリディアはやったのか。と思うニコは、エドガーが従順な妻を歓迎するのも無理ないかもしれないと少しだけ同情した。
「リディアさんの平手だけが、エドガーさまをプリンスから守ってくれそうな気がするのです」
なるほど。と笑いながらニコは、そうだったらいいと願う。
「だったら伯爵は、リディ -
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“「ようレイヴン、あのふたり、結婚すればもっと落ち着くかと思ったのに、ますますあぶなっかしくて、あんたも苦労するよな」
「はい」
隣のニコに顔を向けたレイヴンは、ケリーが知るよりもやわらかい表情をしているように見えた。
「でもこの苦労は、悪くありません」
「ま、そうだな。ちょっと前まで、あのふたりもケンカなんかしてる場合じゃなかったわけだし」
顔を見合わせ、深く頷きあう。
「あのう、レイヴンさんはニコさんと仲がいいんですね」
ケリーがそう言うと、レイヴンは意外そうに彼女の方に顔を向けた。
「ケリーさん、いつからそこに?」
見えてなかった?”
リディアとエドガー、まだすれ違うかと若干呆れ気味。 -
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“「新婦、リディア・カールトン」
また急に緊張しながら、リディアは顔をあげた。
「あなたはこの男と結婚し、神の定めに従って夫婦になろうとしています。健やかなるときも病めるときも、常にこれを愛し、これを敬い、これを慰め、これを重んじ、これを守り、死がふたりを分かつまで、かたく節操を守ることを誓いますか?」
「……はい、誓います」
もう大丈夫。妖精はじゃまをすることができなかった。
安堵して、そしてあらためて、誓いの言葉が胸にしみ入ると、リディアの瞳はうるんだ。
エドガーの手が、頬をぬぐうように触れた。
いつのまにかベールはあげられていて、隔てるものもなく彼の顔を間近に見ている。
“父と子の聖霊の -
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“「アシェンバード伯爵は、危険な人です。正しいかどうかよりも、あなたを守ることを優先する」
……でも、正しいことって何?
「エドガーが間違ってるっていうの?あなたたち、何も知らないくせに!」
エドガーはプリンスの犠牲者だ。彼らの組織と戦ってきて、やっと復讐を果たしたのに、新しい“プリンス”にされようとしている。
「あなたたちも予言者も、エドガーさえいなくなればいいのでしょうけど、それが正しいことだっていうの?あなたたちが氏族<クラウン>を守りたいように、エドガーだって大切な人たちのために戦っているだけだわ!」
リディアの必死の反論にも、パトリックは動じなかった。
何がおかしいのか、にやりと笑う -
Posted by ブクログ
“が、彼の指には、そしてほかのどこにも、赤い糸は見あたらなかった。
「あれ?おかしいわね」
はっきり告げたロタに、レイヴンがショックを受けたのかどうかは、彼の表情からはわからなかった。
「ねえレイヴン、今は糸がなくたって、いつか現れるわよ、きっと」
リディアの苦しい慰めが届いたかどうかもわからない。ただレイヴンは、ニコの方に顔を向けた。
「ニコさんは」
エドガー以外の人にほとんど興味を持たないレイヴだが、どうにもニコだけは仲間意識を持っているようなのだ。
「おれ?ちゃんとあるよ、赤い糸」
気を遣うわけもなく、自慢するように片手を振ってみせたニコには、さすがにレイヴンも落胆の色を隠せなかったよう -
Posted by ブクログ
“「リディア、そういうことじゃないんだ」
窓辺に近づいていったニコは、背伸びして外をのぞき見た。
「長いこと生きてるほど、過去のことは遠すぎて思い出せなくなっていく。とうの昔におれは、いつからこの島にいるのか、どうしてひとりきりなのか、わからなくなってた。ただ、あの霧の山々を見てると、いつも同じことを感じる。ずっと昔から、ここにいたら誰かが、おれに会いに来るような気がしてたんだ」
「ここでまた、誰かを待つ気なの?」
「よくわからない。誰も来ないかもしれないし。でも、この島でならおれは、先のこと考えずにのんびり過ごせる。アウローラと先生の家も、リディアと伯爵の家も、いつまでもおれの家ってわけじゃ -
Posted by ブクログ
“「……なんだ、そういうことか」
つぶやいたニコが、むしろレイヴンが怒っているのではないかとおびえていたことなど知る由もない。
ニコはほっとしたように息をつくと、急に胸を張って咳払いをした。
「そりゃ、たいへんだったな。人間ってのはそのへん、器が小さいからな」
「ニコさんは違うのですか?」
「いいか、レイヴン。おれはそんな細かいことを気にする男じゃねえ。誰にだってそれぞれ事情ってもんがあるからな。あんたに悪気がないってことはわかってるさ」
てくてくとこちらへ近づいてくると、いつものようになれなれしく膝のあたりをぽんぽんとたたく。
「心配しなくていいぞ。きちんとあやまる相手には、寛大な気持ちで許