オスカー・ワイルドのレビュー一覧
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平野啓一郎によるサロメ。解説でご本人が述べられていたが非常に少女性があるサロメになっている。好きな男を振り向かせようとして一生懸命なサロメ。だけど振り向いてくれず最後は殺してしまう。ヘロデも娘を振り向かせようと領土の半分を与えようとする。耽美的になりすぎず一方でサロメ独特の魅力も残したままうまく訳されていると思う。
平野さんの解説も出色で世紀末の京都の雰囲気が懐かしかった。田中さんのワイルドに関する解説もワイルド、サロメ理解を深めてくれるもので、田中さんのアドバイスがあっての平野訳ということでもあるのだろう。リヒャルト・シュトラウスのサロメとは違うということも解説を通じて知ることができた。
宮 -
匿名
購入済み雑な感想ですが
あとがきやレビューでも言われている通り、とても読みやすい翻訳。それほど平易な日本語とも思えないのに、スムーズに読めるから不思議だ。ここまで物語の内側にすっぽりくるまれるかのようにしてこの年代の海外作品を読んだことはない。
内容に関して言えば、読んでいる最中には色々な思いが去来したものの、今はただ美しい…という以外に感想がない。私が感受性に乏しいからそれしか言えないのだろうが、この物語は本文の中ですでに完成し切っており、それ以上に言い足したいことがないという気持ちでもある。
解説の中で、エドガー・アラン・ポーらの作品との共通点が指摘されている。怪奇幻想的な雰囲気もさることながら、メタファ -
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ネタバレ私の中で1.2を争うほどお気に入りの本になりました。
思いつきそうで思いつかなかったストーリーもさることながら、キャラクターがとても魅力的。
ヘンリー卿のレスバトルの強さ……
それが正しい、と思わせる自信と巧みな言葉で相手を沼に落としていく。この作品の人物、ほぼ全てが彼の被害者と言っても過言ではないな……と思います。
恐ろしいのは彼に悪気や恨みがあってそうしているわけではないというところですね……
ヘンリー卿からしてみれば、己の意見を口にしているだけ、アドバイスをしているだけ、戯れているだけなんだろうな、と……
後半のドリアンもとても魅力的。思わず読む手が止まらなくなりました。
バジルとの -
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「なんと悲しいことなんだ!僕は歳をとっていく。そして恐ろしく醜い姿になっていく。この絵は若さを失わない。…反対だったらいいのに!いつまでも若さを失わないのが僕の方で、この絵が老いていけばいいのに。…」(P56)
3月は古典に触れようと思います。
そんな矢先に、読もうと思ったのがこの本でした。
人間、いつまでも若々しくありたいもの。しかし、鏡に映る自分は日を追うごとに歳を取って行きます。
主人公である、美少年ドリアンもそう思っていて、画家バジルが描く自分の姿を見て、冒頭の言葉を言い放った。
何気なく、情動的に出た一言。しかしこの言葉が彼の人生を大きく狂わせることとなったのでした。
絵の -
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こんなに有名な本を今までなぜ読まなかったのか、それが最大の謎。特に、これだけ素晴らしい本だというのに!
高校のときに選択科目で取っていた演劇で、The Importance of Being Earnestという劇で初めてワイルドを知り、その後、同じく高校時代にスティーブン・フライ主演のWildeという映画が流行っていたのが二回目のワイルド体験。その後も、何度も彼の名前は色々な場所で見かけていたというのに、なぜかこの本だけは読んだことがなく。
「美しい」ことと「若い」ということが決してイコールだとは思えないけれど、でも、「若くて美しい」ことに意味があるというのはわかる。そこまでは、同調できる。 -
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大変面白かったです。確かに唯美主義的な物語でもありましたが、別の側面から見ると、「人生の目的は自己を伸すことにある」という思想の下、悪徳の限りを尽くして徹底的に自己の快楽のみを追い求め続けるという破滅的な「自己」を背負った主人公がどのように生きていくのかを追った物語でもありました。
その結果がいわゆる一般的な生き方をしていれば普通にはありえないような恐ろしい死であったとしても、各人が持つ交換不能の「自己」を存分に伸ばす生き方には、確かな魅力があります。しかし、それによって開示される「自己」が周囲の人々をことごとく不幸に巻き込むようなものであったとしたら? かなり面白いテーマだと思います。
「日 -
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19世紀アイルランド出身の作家・劇作家、
童話も名高いオスカー・ワイルドの小説。
高校生の頃、旧訳を古本屋で買って
積読しっ放しだったことを思い出しつつ、
あまりに有名なため、
読まずしてオチを知ってしまっていたので避けていたが(笑)
まあまあ気に入っている光文社古典新訳文庫にて
第2刷が出たのを機に購入。
予想を遥かに上回る面白さに驚いた。
老若・美醜の問題に囚われるあまり
言動が常軌を逸していく主人公の混乱っぷりは他人事でもなく、
意外に感情移入して世界観にとっぷりハマることが出来た。
男性三人が同性愛の関係にあるのは明白なのだが、
それが罰せられる世の中だったため、
極めて婉曲かつ控え -
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大学で絵画を専攻しているのですが、人物画のモデルには、知り合いか他人かに関わらず、特別な感情が湧きます。
私はモデル本人に打ち明けたことはありませんが、ドリアン・グレイの画家がドリアンに打ち明けたのはすごい事だなと思い、それが印象深かったです。
制作中は実際会ってる時と違う気持ちにもなり、長く描いてると、絵の中のモデルとの付き合いが長くなり、妙な親密さを持ち、「私の知っている絵の中のモデルとは」を考えることがあります。
それは自分の見たかったモデルの姿とか、理想像であったり、一瞬の人間らしさを感じるたたずまいなどです。
だから自分が描いた絵画の中のドリアンが変貌していくなんて知ったら、とて