久しぶりに読むのを非常に心待ちにして温めていた作品
果たしてサロメはどれほどの妖しさを持った女性なのだろうか
そしてヨカナーンの首をなぜそこまで欲していたのだろうか
美と狂の瀬戸際である妖艶でおどろおどろしいビアズリーの挿絵から妄想が止まらない
ビアズリーの絵いいですねぇ
例え血の滴る描写であっても美しい
モノトーンの色彩が残虐さを美に変えているようである
おまけにユーモアまで感じる
もし、「不謹慎だ」を真剣に非難する人間がいるとしたら、「その人間の立っている土台が次元の違う場所にあるのだよ」
と笑い飛ばされそうだ
ユダヤの王エロドの宮殿で宴会が開かれている
集まった者たち(ユダヤ人、ギリシア人、ローマ人、カパドキア人、ヌビア人ら)が
「蒼く白くまるで死人のように美しい」サロメを褒めたたえる
一方のサロメは彼らの悪口を言い、「みんな嫌い」と言い放つ
俗っぽい王である義理父は性欲剝き出しの視線をしつこくサロメに送る
妻であるエロディアスに「もう、あなたたいがいになさいまし」と咎められる
エロド王は預言者ヨカナーンを聖なる者としながらも恐れている
砂漠からきたヨカナーンをかつて水槽であったという深く暗い牢獄に幽閉している
サロメはヨカナーンに興味を示し、自分に気があるシリア人の若者をしもべの如く使い
「会わせろ」とせがむ
ヨカナーン
不思議な声、白い肌の色、黒い髪の毛、そして赤い脣…
それぞれ褒めたたえるサロメ
ヨカナーンが「退れ、触るな、女こそこの世に悪をもたらすもの」と言えば、
褒めたくせにけなす
また褒めたたえ、そしてまたけなす
何この心理!
笑ってしまう
自分の気持ちにどうしてよいかわからないのか…
いじらしさと幼さ満載
ヨカナーンはエロディアスの不義、不貞を咎め、
サロメと母エロディアス対し同じ邪悪な者と全否定(でも兄であった妻を自分の妻にしたのは王なんじゃないの?)
ヨカナーンはエロディアスを含む女性そのものを蔑んでいるかのようだ
一方サロメ
女王として皆からチヤホヤされ、スポイルされており、世間知らず
恐らく王の元から外(世間)に出ることも許されないのだろう
そして退屈でウンザリする毎日を送っているのだ
本当の父親はエロド王の兄でエロド王の命令で殺されちゃってるし…
脳内が薄っぺらい母親のエロディアスはサロメに対する愛情もなさそうだし…
そして男性からはいつも羨望と性的なまなざししか受けたことがないのだ
自分を見向きもしない、そして否定までする男に興味を持つ心理
さてちっとも自分のモノに出来そうもないヨカナーン
手に入らないものは喉から手が出るほど欲しくなるのが人の心理
ましてや常識のないわがままお嬢さん
義理父王が領土の半分やると言っても
「ヨカナーンの首が欲しい」
と繰り返すサロメはまるで駄々っ子の少女のようだ
そしてとうとう念願のもの手に入れる!
ビアズリーの挿絵のイメージが強かったせいか自分の妄想と本書にちょっとギャップを感じてしまった
思った以上にサロメは妖女ではなく幼女に感じた
鬱屈した精神の反逆
今までに味わったことのない自分に目を向けない男に対する好奇心
初めて持った欲は手に入らない分大きすぎて、コントロールできないほどパンパンに膨れ上がる
手に入れる方法はもう一つしかない
自分で自分を追い込むサロメ
濃縮された歪んだ情熱がはじけたとき、ようやく手に入れることができた
ふふふ
短いストーリーでこの圧縮したスピード展開は小気味よい
何かが起こる…
徐々に迫ってくる暗黒
王が楽しいと言えば言うほど、他の者らは「王は暗い顔をしている」と言う
不穏で不思議な月が見る者の心の不安を反映する鏡のように変化する
それぞれの感じ方が面白い(個性出てる!)
エロド:血のように赤く見える
エロディアス:月はただの月
サロメ:冷たくて純潔な生娘
何かが羽ばたく音…
さぁ不吉なお膳立てはそろった
いよいよ来る
来る
来る…
ついに…
キターーーーーー!
ヨカナーンの血の滴る首を手にし、ようやく口づけを果たしたサロメ
征服欲が満たされていく…
愛憎の極みが最高潮に達する
戯曲のテンポ感の良さが実に引き立つ作品である
そして個人的には世界観がなかなか好きである
グフフ
「美や芸術」というのは理屈も理論も社会の常識もモラルも
何も関係ないところで成り立っているのだ!
とまるで胸を張って言われた清々しい気分だ
そう正解とかないし
感じるまま、思うまま
妄想は自由なのよ
どこまでも
これは想像力を最大限に駆使することができる、その喜びに溢れる作品なのだから