オスカー・ワイルドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
想像以上におもしろく、引き込まれながら、気になるフレーズのあちこちに線を引きながら読んだ。あらすじは随分昔から知ってはいたけれども、そうした筋よりも、ヘンリー卿の皮肉で逆説に満ちた、でも知性的で魅力ある警句の数々、並べ立てられる芸術的な美への賛辞などなど、言葉をたどることが興味深く、おもしろかった。悲劇的なドリアンの最期は、それでも救いがあったのか。ヘンリー卿にいわせると、はじめから救われるべきものなんてないのかもしれないけど。
線を引いたフレーズのひとつ。もちろんヘンリー卿の言葉。
「ものごとを外見で判断しないのは底の浅い人間だけだよ。世界の本当の神秘は目に見えないものではない。目に見える -
Posted by ブクログ
何も知らないということは、
人間が失ってしまった
全てのものを持っている
ということだ。
これには本当に納得した。
何も知らない、無垢な状態とは
知恵の実を食べてしまう前の
楽園のイブだ。
ヘビであるヘンリー卿がそそのかし、
ドリアンは罪を知ってしまった。
この時点でドリアンは
神から見放され、
人生を追放されたのだと思う。
また、バジルの描いた絵も、
美しくありながら、
怪しいヘビであったのではないかと
感じた。
ドリアンの美しさを崇拝しながら
一方では、彼の美しさを
自覚させてしまうエゴに悩む。
だからバジルはあんなに苦しみ
絵に罪を感じていたのではないか。
けれど罪というものは美しく
魅 -
ネタバレ 購入済み
サロメとかも書いてます
どちらかといえばサロメよりの話が多いワイルドさんですが、
とても同じ人の頭から紡がれた話とは思えない。
たいへん綺麗な話です。
汚れた話を書いている自覚があって、その反作用でこうした話を紡ぎ出したのでしょうか。
草葉の影に引っ込んだ後、機会があれば聞いてみたいものです。
お好みで。 -
Posted by ブクログ
ビアズリー展のミュージアムショップで購入し、展覧会の余韻に浸りながら帰りの新幹線で読破。
そう、今こそその口にキスをするわ、ヨカナーン。
……ああ!ヨカナーン、ヨカナーン、おまえだけなのよ、私が愛したのは。
同じ言葉の繰り返しが多用されていてサロメの激情がひしひしと伝わってくる。きっと劇で見ると迫力がもっとあるんだろうな。
オスカー・ワイルド本人はビアズリーの挿絵を「日本的だ」と嫌っていたみたいだが、サロメの退廃的で耽美的な世界観にはビアズリーの美しく繊細ながらも不気味な絵柄が合うな…と思ってしまう。
訳者あとがきも面白かった。フランス語の二人称の使い分けと心理的距離の変化が連動してる -
Posted by ブクログ
ネタバレ文学を読もうと思い名前を聞いたことがあった本書を手に取りました。本書はちょっと昔のイギリスの金持ちの若者がひょんなことで堕落し、最終的に悪の方面に転落しきって亡くなるという小説です(あまりにも雑な要約)。
元来真面目(あるいは無垢?)であった主人公のドリアンは、画家のバジルを通じて知り合ったヘンリーに唆されどんどんよくない方向に進んでいきます。ヘンリーの人間像が非常にいい感じで、哲学的でなんだか深そうなよくわからないことを滔々と喋り続けるわけです。現代日本人である私の感覚からすると、ある種の魅力はあるにせよ関わってはいけないタイプの人間に感じられます。思うに、いい大人であれば本書が出版され -
Posted by ブクログ
存在は知っていたけれど、舞台ミュージカル「ワイルド・グレイ」を観ることにして、ようやか手に取った1冊。
美貌の青年ドリアン、ドリアンに魅了される画家バジル、ドリアンが魅了されていくヘンリー卿。「美」とは?「若さ」とは?
寓話的にも読める話。
これまで思いもつかなかった視点からの見方に、ドリアンが魅了されるのがよくわかります。
ドリアンが手にした様々な美しい物の羅列のあたりは、自分の想像力が及ばないので、冗長に感じましたが、
そこを乗り越えるとミステリーのような展開になり、一気に読み進めてしまいました。
最初は客観的な書き方だったのが、美しい物の羅列の後はドリアンの心情も含めた主観に近い