あらすじ
妖しい美しさで王エロドの心を奪ってはなさない王女サロメ。月光のもとでの宴の席上、7つのヴェイルの踊りとひきかえに、預言者ヨカナーンの生首を所望する。幻想の怪奇と文章の豊麗さで知られる世紀末文学の傑作。R.シュトラウスのオペラ「サロメ」の原典にもなった。幻想的な美しさで話題を呼んだビアズレーの挿画をすべて収録。
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Posted by ブクログ
今度オペラを見に行くので、久しぶりに読みました。かれこれ10年ぶりくらい…?以前読んだのは高校生か大学生なりたてかの多感な時期で、ひどく美しく耽美な戯曲に、そしてその日本語を書いた福田恆存に、くらくらしていた記憶がある。
久しぶりに読み返してそこまでの陶酔感が得られなかったのは、再読だからか、年だからなのか…再読だから、だといいんだけど笑
ドリアンなども読んだ身からすると、いかにもワイルドらしい表現、特に月に対する表現に、にんまりしていた。
「月を見るのはすてき! 小さな銀貨そつくり。どう見ても、小さな銀の花。冷たくて純潔なのだね、月は…さうだよ、月は生娘なのだよ。生娘の美しさが匂つてゐるもの…さうとも、月は生娘なのだよ。一度もけがされたことがない。男に身を任せたことがないのだよ、ほかの女神たちみたいに」
改めて読んでいると、この物語のサロメという少女は空洞で、ヨカナーンに口づけしたいという想いだけを持っていて、むしろエロド・エロディアスの方が人間らしく、語ることも多い。サロメはもちろん純粋で際立っているし、ファムファタールといえばそうなのだけど、どこか透明な・天使的なキャラクターなのだと感じた。
あと完全に存在を忘れていたのですが、若きシリア人とエロディアスの侍童、この二人らぶな関係だったのではないですか…?ワイルド特有のにおわせ、の雰囲気を感じてしまいました。
そして本作をフランス語で書いたワイルド…
J'ai baisé ta bouche Iokanaan
J'ai baisé ta bouche...
英語だと、
I have kissed thy mouth, Jokanaan,
I have kissed thy mouth
福田恆存だと、
あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン、
お前の口に口づけしたよ
オペラ楽しみです。
Posted by ブクログ
こういった登場人物一人ひとりが独自のベクトルを持っていて、象徴的な描写に富んでいるもの。いかにも戯曲的・構造的で好き。セクシー。ビアズリーの挿絵もエロティックで良い。
「とある出来事をきっかけに主人公の内面が変化する~」みたいな、信念の軽薄なものは好きじゃないからとても満足。悪役は悪役のままで悪党の美学を貫いて欲しい。
余談。聞いた話によると、イスラム圏では、"S・L・M"の並びの音は「平穏・安寧」を意味しているよう。イスラム然り、ソロモン然り、スレイマン然り。
Posted by ブクログ
オスカー・ワイルド作『サロメ』は、預言者ヨハネの斬首のエピソードを下敷きにした戯曲である。新約聖書マタイ伝に記された「聖者の生首を所望する姫」という猟奇的な逸話は、モローやシュトゥック、カラヴァッジオなど多くの芸術家に取り上げられてきた。その中でもワイルドの戯曲は、創作としてのサロメの決定版といった趣きがある。ビアズレーの挿絵と共に、世紀末芸術の代表的作品といっていい。
この戯曲の中では、サロメは処女でありながら、文学史上稀に見る淫婦として描かれている。ヨカナーンの首を前にして陶然と愛を語るサロメの姿は凄まじいというよりほかなく、さらにその唇に接吻するとあっては、冒瀆だとして作者の本国イギリスでの上演が禁じられたというのも、無理からぬ話と思われるのである。
一方で、倒錯もここまで極めれば、いっそ神話的であるともいえる。古来、処女性と残酷性とは、しばしば表裏一体のものとして描かれてきた。純潔を守るため、または愛の成就のため、あるいは愛の証明のために、乙女が男を理不尽に破滅させるのは、いにしえより語り継がれてきた物語の原型のひとつである。
裸体を見られたためにアクタイオンを鹿に変えたアルテミス、愛するエンデュミオンに不死の眠りを与えたセレネ、求婚者に難題を課して死に至らしめたかぐや姫の逸話もある。彼女らがみな月に関わりの深い女性だというのが興味深い。サロメがヨカナーンを誘惑し、その生首に接吻をしたのもまた、月の光のもとであった(さうだよ、月は生娘なのだよ)。
甘やかな芳香の中に微かな腐臭を漂わせる熟れきった果実、今まさに風に散らされようとしている満開の薔薇、そんな印象の物語だ。福田恒存による美文調の翻訳が、この作品にいっそう麻薬的な魅力を与えていることは、言うまでもない。
Posted by ブクログ
元祖School Days、というわけじゃないですが、パートナーの首を切って所有するというのは、時代を超えた愛の表現なのでしょうか。
首を愛するとういうのは、相手の身体性と同期するような快感がありますね。
Posted by ブクログ
最初はビアズリーの挿絵付きの英語版を手に入れましたが、当時は英語が苦手で読めなかったため、戯曲の内容はこちらの日本語訳で読みました。
神もご照覧あれ!あの有名な洗礼者ヨハネのエピソードが、世紀末の寵児ワイルドの手で見事なまでにイカれたストーリーに生まれ変わりました。是非ともビアズリーの挿画と一緒にご堪能ください。
Posted by ブクログ
新約聖書をもとに預言者ヨナカーンの首を欲する美しきサロメと、サロメを取り巻くユダヤの王エロドとその妃エロディアス。どんどん先を読みたくなる岩波文庫の福田恆存訳。
Posted by ブクログ
うーん、艶美!
すごく好みドストライク。今はワイルドがツボだな。
痛覚と悦楽が紙一重であるように、美と醜悪もまた根本は同じなのかもしれない。
私の指先は若きシリア人の血を踏みしめ、ぱりぱりと銀にきらめく空気を吸い、欲望にまみれた王の視線を全身に浴びた。
未だに内臓の奥がエロティック。
Posted by ブクログ
周囲を虜にし、また危惧させるほど魔性の美貌を誇る王女サロメの、預言者ヨカナーンへの執着たるや! どれほど本人から拒まれようと恋慕し、己が手中に入れんとする様が恐ろしい。狂気ここに極まれり。
なぜエロド王はサロメのことをずっと視ていたのか?
ヨカナーンが非難していたのは本当にエロディアス妃だったのか、そもそも彼女は本当に罪深かったのか?
そもそもヨカナーンは真に預言者であったのか?
……戯曲としてはかなり短い内容。聖書から材を得ているらしいが、分からないことだらけ。とは言え狂おしく禍々しいくらいの耽美の世界には圧倒された。収録されているAubrey Beardsleyの不可解で官能的な挿絵18点もいい。
旧仮名遣いではある(※私が読んだのは2012年発行の第15刷。1959年 第1刷/2000年 改版第1刷)が、福田恆存の翻訳文がいい! 戯曲=「声に出して読まれるテキスト」としての話しやすさと品格が備わっていると思う。翻訳者による巻末の「解題」を作者Oscar Wildeの経歴紹介に割き、作品自体の解題を新潮文庫版に丸投げしている点はいただけない。
Posted by ブクログ
文学の力を体現したような文章と訳で、内容は非常に面白かったのだが、ビアズリーの挿絵で全部ぶち壊されていて笑ってしまった。盛り上がって引き込まれていくシーンでヌルッと出てくる気の抜けた「サロメの化粧」等々は全く関係なさすぎてワイルドの文学に対する冒涜としか思えないのだが、ワイルドとビアズリーの当時のバチバチした関係が味わえてよかった。ビアズリーの挿絵を載せるかどうかは意見が分かれるところではあると思うが全部載せてくれた岩波文庫に感謝。
Posted by ブクログ
わずか90ページだが濃密。オスカーワイルドのサロメ。王女サロメはサイコパスなのか、欲望の奴隷なのか。サロメの欲するものは預言者ヨナカーンの首。ビアズリーの挿絵も強烈で凄く、インパクトのある本でした。
Posted by ブクログ
ヨカナーンの声
「その日、日は黒布のごとく翳り、月は血のごとく染り、空の星は無花果の実の、いまだ熟れざるざるに枝により落つるがごとく地におちかかり、地上の王たちはそのさまを見て恐れをののくであらう」
『私にヨカナーンの首をくださいまし』
なんともおぞましいセリフではあるが、このあとサロメはヨカナーンに口づけをする
ピアズレーの挿絵もなんとも素敵でぞわぞわする
預言者の予言の表現といい、サロメと言う作品が
長く伝わるのは、サロメの恋の激しさが、狂気が
わかるからだろうか
こ、こわい
『ああ!あたしはとうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン、お前の口に口づけしたよ。お前の唇はにがい味がする。血の味なのかい、これは?‥いいえ、そうではなくて、たぶんそれは恋の味なのだよ。恋はにがい味がするとか‥でも、それがどうしたのだい?どうしたといふのだい?あたしはとうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン、お前の口に口づけしたのだよ』
Posted by ブクログ
ヨカナーン
大学生の時に買って、やっと読んだ
すごく舞台的な作品だった
真っ黒真っ白真っ赤、金に銀
色のコントラストがいっぱい出てきてビビッドな世界が広がっていた
みんなヤバびと
Posted by ブクログ
サロメを描いた絵画を見たことはあるが、元は戯曲。戯曲に苦手意識が有ったが、短かく読み易い。
絶世の美女であり王女でもあるサロメを、預言者ヨカナーンは見もしない。サロメはヨカナーンの首を欲する。
物語は最初から不吉な予感が漂っている。宴の席なのに、禍という言葉が何度も出てくる。皆が常に何かに怯えている。その中、大胆不敵なサロメがいる。何でも手に入る筈なのに、ヨカナーンは手に入らない。彼の首は手に入ったが、結局自分を見てもらえない。無理矢理手にしても本当に得られたわけではない。
本書はビアズレーの挿絵18点も収録されていたのが嬉しい。
ただ、自分に宗教知識がないのが残念である。
Posted by ブクログ
言わずと知れたワイルドの戯曲ですね。ビアズリーの挿絵選びのセンスが好きなので、岩波文庫での読書を提案します。訳は言わずもがな、ワイルドらしい詩的な装飾の施された文体がやはり素晴らしいですね。
ワイルドしかりビアズリーしかり、彼らが日本人に与えた影響は図りしれないでしょう。三島由紀夫が初めて自分で買った本はワイルドだと言いますし、水島爾保布などの描く絵はビアズリーチックで魅力的です。話は逸れるようですが、サロメを読むと、中公文庫の谷崎潤一郎『人魚の嘆き 魔術師』も一緒に読みたくなります。短くてすぐに読み終わるのに、電撃的な恍惚感に浸れるので最高です。まるでヨカナーンに一目惚れしてしまったサロメのよう…
Posted by ブクログ
サロメをあんなにまで執着させるヨナカーンに興味が湧いた。誰もを魅了する美しさをもつサロメが美しいと思う青年、預言者ヨナカーン。。妖しい描写がビアズリーの挿絵とマッチし過ぎて怖ろしくなりました。
Posted by ブクログ
サロメ
(和書)2009年05月05日 22:45
2000 岩波書店 ワイルド, Wilde, 福田 恒存
短いけど、とても印象に残る作品だった。サロメを殺す最後のシーンはとても美しく感じました。
一気に読める作品です。
Posted by ブクログ
訳が素晴らしい。この手の言い回しが心地よく感じる人とそうではない人がいるので万人には勧めないが、私はこのような訳がモウレツに好きなのです!
後半のサロメのしつこさには舌を巻きます…
Posted by ブクログ
仰々しい感じを受けるが、王と妃と妃の娘、予言者が登場する宴会場での出来事を劇にしている。位の高い人たちは、やたらと人を殺したがる生き物になるらしい。ドラマチックな展開だが、共感する人物も登場せず傍観者として置き去りにされた印象を持つ悲劇かな?
Posted by ブクログ
愛する者を手に入れるためには、その者の命を奪ってでも手にいれたい…という、ある王女の狂気的な愛を聖書を模して一幕に収めた劇。
登場人物に誰一人まともな人がいない、狂気の世界。醜くい世界ではなく、むしろ美しいかもしれません。
挿し絵もちょっと幻想的で、非現実的な世界に浸るにはちょうど良い一冊。これを演じきるのは、とても難しそう…
人間の狂気に触れたい方は、ぜひ。
Posted by ブクログ
少し読みづらいというかわかりにくい部分もあるけど、やはり良い。
サロメの台詞回しはすごく好き。
ああいった悪女というか魔性というか…そういう女の人には独特の魅力があってどうしても惹かれてしまう。
終わり方も好きだなぁ。
Posted by ブクログ
ビアズリーの絵が目的で買ったようなとこがあるけど、読んでみたら、
こっ、わっ。
の一言でした。
口づけしてるあの絵の意味が解って、これまたやはり、
こっ、わっ!
Posted by ブクログ
久しぶりに読むのを非常に心待ちにして温めていた作品
果たしてサロメはどれほどの妖しさを持った女性なのだろうか
そしてヨカナーンの首をなぜそこまで欲していたのだろうか
美と狂の瀬戸際である妖艶でおどろおどろしいビアズリーの挿絵から妄想が止まらない
ビアズリーの絵いいですねぇ
例え血の滴る描写であっても美しい
モノトーンの色彩が残虐さを美に変えているようである
おまけにユーモアまで感じる
もし、「不謹慎だ」を真剣に非難する人間がいるとしたら、「その人間の立っている土台が次元の違う場所にあるのだよ」
と笑い飛ばされそうだ
ユダヤの王エロドの宮殿で宴会が開かれている
集まった者たち(ユダヤ人、ギリシア人、ローマ人、カパドキア人、ヌビア人ら)が
「蒼く白くまるで死人のように美しい」サロメを褒めたたえる
一方のサロメは彼らの悪口を言い、「みんな嫌い」と言い放つ
俗っぽい王である義理父は性欲剝き出しの視線をしつこくサロメに送る
妻であるエロディアスに「もう、あなたたいがいになさいまし」と咎められる
エロド王は預言者ヨカナーンを聖なる者としながらも恐れている
砂漠からきたヨカナーンをかつて水槽であったという深く暗い牢獄に幽閉している
サロメはヨカナーンに興味を示し、自分に気があるシリア人の若者をしもべの如く使い
「会わせろ」とせがむ
ヨカナーン
不思議な声、白い肌の色、黒い髪の毛、そして赤い脣…
それぞれ褒めたたえるサロメ
ヨカナーンが「退れ、触るな、女こそこの世に悪をもたらすもの」と言えば、
褒めたくせにけなす
また褒めたたえ、そしてまたけなす
何この心理!
笑ってしまう
自分の気持ちにどうしてよいかわからないのか…
いじらしさと幼さ満載
ヨカナーンはエロディアスの不義、不貞を咎め、
サロメと母エロディアス対し同じ邪悪な者と全否定(でも兄であった妻を自分の妻にしたのは王なんじゃないの?)
ヨカナーンはエロディアスを含む女性そのものを蔑んでいるかのようだ
一方サロメ
女王として皆からチヤホヤされ、スポイルされており、世間知らず
恐らく王の元から外(世間)に出ることも許されないのだろう
そして退屈でウンザリする毎日を送っているのだ
本当の父親はエロド王の兄でエロド王の命令で殺されちゃってるし…
脳内が薄っぺらい母親のエロディアスはサロメに対する愛情もなさそうだし…
そして男性からはいつも羨望と性的なまなざししか受けたことがないのだ
自分を見向きもしない、そして否定までする男に興味を持つ心理
さてちっとも自分のモノに出来そうもないヨカナーン
手に入らないものは喉から手が出るほど欲しくなるのが人の心理
ましてや常識のないわがままお嬢さん
義理父王が領土の半分やると言っても
「ヨカナーンの首が欲しい」
と繰り返すサロメはまるで駄々っ子の少女のようだ
そしてとうとう念願のもの手に入れる!
ビアズリーの挿絵のイメージが強かったせいか自分の妄想と本書にちょっとギャップを感じてしまった
思った以上にサロメは妖女ではなく幼女に感じた
鬱屈した精神の反逆
今までに味わったことのない自分に目を向けない男に対する好奇心
初めて持った欲は手に入らない分大きすぎて、コントロールできないほどパンパンに膨れ上がる
手に入れる方法はもう一つしかない
自分で自分を追い込むサロメ
濃縮された歪んだ情熱がはじけたとき、ようやく手に入れることができた
ふふふ
短いストーリーでこの圧縮したスピード展開は小気味よい
何かが起こる…
徐々に迫ってくる暗黒
王が楽しいと言えば言うほど、他の者らは「王は暗い顔をしている」と言う
不穏で不思議な月が見る者の心の不安を反映する鏡のように変化する
それぞれの感じ方が面白い(個性出てる!)
エロド:血のように赤く見える
エロディアス:月はただの月
サロメ:冷たくて純潔な生娘
何かが羽ばたく音…
さぁ不吉なお膳立てはそろった
いよいよ来る
来る
来る…
ついに…
キターーーーーー!
ヨカナーンの血の滴る首を手にし、ようやく口づけを果たしたサロメ
征服欲が満たされていく…
愛憎の極みが最高潮に達する
戯曲のテンポ感の良さが実に引き立つ作品である
そして個人的には世界観がなかなか好きである
グフフ
「美や芸術」というのは理屈も理論も社会の常識もモラルも
何も関係ないところで成り立っているのだ!
とまるで胸を張って言われた清々しい気分だ
そう正解とかないし
感じるまま、思うまま
妄想は自由なのよ
どこまでも
これは想像力を最大限に駆使することができる、その喜びに溢れる作品なのだから
Posted by ブクログ
Oscar Wilde(1854-1900)
アイルランド出身でダブリンのトリニティカレッジをへてオックスフォード大学に学び、在学中からその才能は大衆から人気を集めた。卒業後はロンドン社交界で唯美派のスターとしてもてはやされた。時代の因襲と社会常識を逆撫でするような生き方を続けた。
Posted by ブクログ
原田マハさんの「サロメ」を読んだので、こちらも。
絵画作品としても題材になるため、いずれは読もうと思っていた。
まあ、なんというか、普通じゃない感覚。