人にとって獣を飼うというのは、一生獣に振り回されることでもある。(p.66)
〔毛玉堂〕夫婦なのにいまだ男女の関係になってない二人。
〔お仙〕武家の行儀作法を教えてくれる家でどうも上手くいかず里帰り中。
〔けんけん堂〕全編通じた話題。主は伝右衛門。見目が良く賢い犬で評判を取っている犬屋。骨盤が細く脚が痛みやすいのも特徴。
〔白魚〕美しい白い毛並みと青い瞳の猫。脚が痛そうだ。飼い主の千紗とともに大きな商家に入った。
〔赤玉〕緋鸚鵡。料亭の看板鳥だったが加齢で引退、長年世話していた番頭の種市が自身の隠居と同時に引き取った。
〔仲蔵〕信頼できる鳥屋。
〔てろ助〕焼いた餅のような柄の、白くて大きな犬。気はいいがまったく躾ができていないアホ犬。飼い主は文。
〔玉三郎〕十三歳になる茶虎に緑色の目の猫。飼い主は魚河岸で荷運びをしている権助。権助が寝ていると叩いて起こすことがある。
〔影法師〕黒い犬。大八車が尾に乗りちぎれたのに鳴きもせず耐えていた異常性。
■毛玉堂についての簡単な単語集
【赤玉/あかだま】玉屋という大きな料亭で飼っていた緋鸚哥だったが年をとったので引退して長年世話をしてくれていた種市という番頭が自身の隠居と同時に引き取った。
【アズキ】足袋問屋「山吹屋」の飼っている狆。惣領の庄之助はアズキの不調が治らなければ手放すしかないと言ったらしい。庄之助の妻は美津にとっては気になっている「絹」という名らしい。
【おサビ】春信の飼っている錆猫。
【おちゃっぴい】白く賢い犬。脚を痛めやすい身体つき。
【影法師】黒い犬。大八車が尾に乗りちぎれたのに鳴きもせず耐えていた。
【絹】小石川にいた頃、凌雲となんらかの関わりがあったらしい。数を計算する馬、竹馬の主のお婆さんの口から出た名前。どうやら小石川療養所で凌雲の助手をしていた娘らしい。小石川小町と呼ばれていた美人。凌雲が小石川を辞め、長いこと落ち込んでいた理由なのか?
【毛玉堂】凌雲の開いている、けもの医。谷中感応寺にある。
【けんけん堂】賢犬堂。主は伝右衛門。浅草寺参道の近くにある犬屋。賢くて見栄えの良い犬を売って評判になっている。ただ、骨盤が細く脚を痛めやすいのも特徴。
【黒太郎】毛玉堂の犬。
【コンタ】茶色い狐顔の仔犬。ちゃんとぺこりと頭を下げて挨拶する。飼い主は犬屋で店賃一年分くらいの値で買った。
【時代】明和五年から始まる。
【白魚】千紗という女の猫。日本橋にある呉服屋の「梅酒屋」から来た。
【白太郎】毛玉堂の犬。巨体。一年半前に凌雲の家の前に捨てられていて人に敵意を抱いていた。生ける屍状態だった凌雲がけもの医になるきっかけとなった。
【鈴木春信】絵師。お仙の絵を描きたがっている。
【仙】美津の幼馴染。いつも差し入れをしてくれる。惚れ惚れするような別嬪。笠森稲荷の境内にある水茶屋「鍵屋」の看板娘。浅草寺奥山の楊枝屋「柳屋」の藤、二十軒茶屋の水茶屋「蔦屋」の芳と並ぶ江戸の三美人の一人。旗本の倉知政之助と恋仲。《噂話は私の生きがいさ。》p.97。《私にとっていちばんに考えなくちゃいけないのは、どれだけ私が美しくあるかなのさ。》p.69。実在の人物のようなので小説に登場することも多そう。ぼくが読んだ中では米村圭吾さんの「退屈姫君」シリーズに出てきたお仙と同一人物と思われる。
【善次】仙が連れてきた八歳の子どもで、毛玉堂の見習いになった。絵心がある。実の父親はさる大名。
【竹馬】数の計算ができる馬(ということになっている)。お婆さんが飼い主で、その息子の八吉(やきち)が見世物にしている。
【玉三郎】十三歳になる茶虎に緑色の目の猫。飼い主は魚河岸で荷運びをしている権助。権助が寝ていると叩いて起こしてくることがある。
【茶太郎】毛玉堂の犬。
【てろ助】焼いた餅のような柄の大きな犬。主人は文。カラスに襲われていたところを助けた。ちんの垂丸を食い殺そうとしたと訴えられた。まったく躾ができていないアホ犬だがもちろん飼い主の文に原因がある。
【伝右衛門】賢犬堂の主人。犬に優しいはずなのだが、一方で厳しすぎる躾をしているよくわからない人。《お江戸で私ほど犬を大事にしている者はいないさ》第二巻p.271
【トラジ】船宿の「沢屋」の、六歳になる大きな雄猫。主の宗兵衛の娘、琴に甘やかされて育ったわがままもの。最近急に宗兵衛の妻を襲いだした。《トラジは獣のくせに、あんたの勝手でここにいるんだ。ここにいてくれてるんだ。トラジに余計な負担を掛けようなんて考えずに、少しでも楽しく穏やかに暮らせるように、あんたが心を配ってやってはどうだ?》p.146
【仲蔵】鳥屋の主人。根っからの鳥好き。猫よけのために右之助、左之助という人懐っこい犬を飼っている。
【マネキ】毛玉堂の猫。キジトラ。
【ミケ】仙ちゃんちの飼い猫。
【美津】凌雲の妻。生家は八百屋。筋金入りの動物好き。夫婦にはなったがいまだ手をつないだこともない。家事力は高いが火付けだけは苦手。
【耳麻呂】春信の飼い兎。三歳。
【吉田凌雲】→凌雲
【凌雲】吉田凌雲。けもの医、今で言う獣医。美津の夫。元は人間の医師で、小石川療養所の名医だった。治療費をちゃんと受け取らないので家計はいつもカツカツ。《動物のやることには必ず理由があるはずだ》(第一巻p.41)。《動物が腹で考えていることなんて、決してわかりゃしないさ。ぜんぶ、人の思い込みだ》(第一巻p.56)