いとうせいこうのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
山東京伝による吉原および深川の遊郭での通な会話や所作の江戸時代のルポ。
後半の仕懸文庫は、蔦屋重三郎による出版らしい。そして2人が処罰された。
現代語訳は過去にも何人かが行っているようだが読み比べていない。いとうせいこうによる現代語訳では、注が多く(見開き2ページの3分の1になることも)、それも今風に解説してある。でも多すぎて、注は飛ばして本文を読み進めた。ときおり注を見るくらいだった。
吉原と深川では、金に余裕のあるものが「尻をふりふり」通い、通な言葉のやりとり、流行やならわし、当時の着物や食べ物などが詳細に解説。本気なのか浮気なのか、二者に分けられないのか、臨機応変な会話などが描かれる -
Posted by ブクログ
小説として、個人の内部から排出されたものを他者性として捉えると、「あいだ」を想定した対人関係論との接点に行き着く。
p54にある「あれ、まだあるでしょう綺麗ね」と、蜻蛉玉について言及するシーンなどがそうだ。人間とは、地続きである。精神とは、究極のレベルで孤立していない。ただ、それを実感するための能力、リテラシーが、近代以降に加速度的に減退しただけのような気もする。
p48 編物のくだり。織物ほどギリギリではないつながり、隙間や空間の存在が「あいだ」の範囲を広げるのか?
p188 「書けば書くほど現実は遠のいていく…私はこれを書きようがない」のくだり。ビオンのOについての表現と重なるか?