あらすじ
「皆さん。こんなおかしな小説はありはしません。信じて下さい」2036年の日本。「練られた筋書きだの、生活の機微を活写した虚構だの、人間のありようを深く追求するだの、そんなことの一切が嘘八百だということを、わたしは平易な随筆でもってあきらかに示したい。それが敗戦国の人間の、当然の責務だと考えるからであります」獄中で書いた随筆は、政府が発布した「小説禁止令」を礼讃する内容になるはずだった。しかし、当局がそこに見つけたのは、あるはずのない作品名だった……。
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Posted by ブクログ
小説として、個人の内部から排出されたものを他者性として捉えると、「あいだ」を想定した対人関係論との接点に行き着く。
p54にある「あれ、まだあるでしょう綺麗ね」と、蜻蛉玉について言及するシーンなどがそうだ。人間とは、地続きである。精神とは、究極のレベルで孤立していない。ただ、それを実感するための能力、リテラシーが、近代以降に加速度的に減退しただけのような気もする。
p48 編物のくだり。織物ほどギリギリではないつながり、隙間や空間の存在が「あいだ」の範囲を広げるのか?
p188 「書けば書くほど現実は遠のいていく…私はこれを書きようがない」のくだり。ビオンのOについての表現と重なるか?
妥当性係数は便宜上、相関係数によってなされているにすぎない。1になることはない。言葉にするとはそもそもそういうことなのだろう。