浦賀和宏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者初読み。
この作品も、他の作品の後ろで紹介されていたので、あらすじが気になって読んでみた。
作家の冴子は高校時代の友人・亜美に久しぶりに連絡をもらい、定期的に食事などを重ねる仲に。
ある時、亜美から恋人である「タケル」と言う男性を紹介される。この「タケル」が冴子の周囲で様々な行動を起こす。
ある時は恋人を自殺に追い込み、ある時は従兄弟の妊娠中の妻を突き飛ばし、流産される。そして、冴子のところにも姿を現すようになり、冴子は独自で「タケル」とその関係者と思われるノンフィクション作家の泉堂莉菜にも疑惑の目を向ける。
しかし、冴子が「タケル」の存在を確証した時に「タケル」が殺害され、その犯人として冴子は逮捕される。
その後、書き手の視点は冴子から泉堂莉菜に移り、同じ事件がまた別の視点で描かれる。
そして、それもラストにはまた視点が変わり…
と何が真実か分からないミステリーの局地にある作品だと思うが、登場人物がみんな自分勝手で、自己的過ぎるのが、読んでて不快。読後感も悪かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ○ 総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★☆☆☆
〇 読後感 ★★★☆☆
〇 希少価値 ★☆☆☆☆
「犯行直後に目撃者を殺した場合」と「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の二つの設定に分けて「パラレルワールドを描いた作品」だと思わせることがミスディレクションになっている。
プロローグで,「犯行直後に目撃者を殺した場合」の視点人物である花田欣也(加納豪)と編集者の間で「パラレルワールドをテーマにした小説を書きたいんです。」という会話をさせることで,自然と、この作品がパラレルワールドを書いた小説だと思わせている。
実際は,パラレルワールドを描いているわけではなく,「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」は「犯行直後に目撃者を殺した場合」の30年後を描いている。そして,読者にパラレルワールドを描いていると誤信させるような仕掛けが随所に仕掛けられている。
まず,プロローグの花田欣也(加納豪)と編集者の会話で「会話が重複する部分は省略するんです。」と言わせているところがポイント。これにより重複した会話が省略されていると思わせる。実際は,時代の違いが分かってしまうような読者を誤信させるために不都合な会話を省略している。登場人物の名前も誤解を生じさせるように設定。視点人物は「犯行直後に目撃者を殺した場合」では「花田欣也(加納豪)」。「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」では「加納卓也」。いずれも「加納さん」と呼ばせることで読者を誤解させる。また,加納卓也が花田欣也のマネージャーをしているという設定なので,「花田欣也の印税で生活している」など,「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」も「花田欣也(加納豪)」が視点人物だと誤信させようとしている。加納彩という名前も花田欣也(加納豪)の妹と娘の二人の名前として登場している。
こういった仕掛けでパラレルワールドを描いていると思わせるが,話が進むにつれて違和感が出てくる。少しずつ,「犯行直後に目撃者を殺して場合」と「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の視点人物や登場人物の描写にズレが出てくる。これをパラレルワールド特有のズレと読者に誤解させようとしているのだろう。実際,読んでいるときはそのような読み方をし,「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」のラストで混乱してしまった。
それでは,この作品を読んで大きなサプライズを感じたかというと…それほどでもないのである。「混乱した」というのが素直な感情。何が起こっているのか分からなかったのである。この作品を読んでサプライズを感じようとすると,かなり注意深く読む必要がある。あまり注意深く読むと真相を見抜いてしまうので,適度に注意深く読まなければならない。そうすれば驚けるだろう。多くの人はさらっと読んで最後に混乱するのではないか。そういう作品である。
混乱する原因は「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」4のラストで一気に聞いたことがない人物が登場する点にあると思う。エピローグでいろいろと明かされるがエピローグで初めて分かる情報もある。短い作品だから仕方がないのだが,短い描写で多数の情報を与えられると混乱する。「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」のラストは「加納卓也」の名前を出す程度にしておき,エピローグでもっと丁寧に説明すれば印象が変わったかもしれない。この場合は,冒頭で,さりげなく,奥津行彦と加納彩などの会話で,子どもができたら,「卓也」という名前にしたい…とか奥津行彦の子どもが「卓也」であるという伏線があれば,「あっ」と思って驚ける作品になっていたと思う。
泡坂妻夫的というか,折原一的というか,その手の作者のような技巧の限りを尽くした作品。このような作風は好みなのだが,やや不満があるのは見せ方。一流のマジシャンは手品を知らない人でも驚けるような現象を起こすと思う。この作品は手品に詳しい人を驚かすような分かりにくい現象を起こしている手品のような作品。手品に詳しいマニアの評価が高くなりそうな作品だ。泡坂妻夫はこのような作品は書かなかったと思う。そういった意味では折原一の方に近い。★3かな。
○ 仕掛け
パラレルワールドを描いた作品。パラレルワールドの描写において「会話が重複する部分は省略する」という点が叙述トリックに使われている。プロローグの花田欣也のセリフにより,パラレルワールドが描かれているように誤信させている。しかし,実際は時代が異なる。
〇 「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」
視点人物:花田欣也(加納豪)
被害者1:加納彩(花田欣也(加納豪)の妹)
被害者2:奥津行彦
被害者3:猪澤五郎
被害者1を殺害した犯人:羽賀琴菜
被害者2を殺害した犯人:花田欣也(加納豪)
被害者3を殺害した犯人:花田欣也(加納豪)
時代:1986年
奥津と書かれている人物→奥津行彦
〇 「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」
視点人物:加納卓也
被害者1:奥津進也
被害者2:鈴木太郎
被害者3:花田欣也(加納豪)
被害者1を殺害した人物:奥津卓也
被害者2を殺害した人物:自殺
被害者3を殺害した人物:奥津卓也
時代:2016年
奥津と書かれている人物→奥津新進也
○ 登場人物
花田欽也(加納豪)
ライトノベル作家。奥津行彦を殺害
加納彩
主人公の妹。主人公と近親相関をしていた。投身により死亡。警察は自殺として処理
奥津行彦
近親相関で生まれた子であり,奥津家に養子に出された。
春子
加納彩(妹)の会社の同僚
羽賀琴菜
奥津行彦の元恋人。羽賀琴菜の両親が興信所を使って奥津行彦を調べ,近親相関であることを知り,結婚を反対される。加納彩を殺害した犯人。琴菜は獄中で双子を出産する。この双子が「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の主人公と殺害された奥津
牧村
興信所の調査員
リン
奥津育彦の母。近親相関を憎み奥津卓也と奥津進也に花田欣也(加納豪)殺害を進める。花田欣也(加納豪)殺害の事件の黒幕的存在
西岡
刑事。「犯行直後に目撃者を殺した場合」では中年
和泉
刑事。「犯行直後に目撃者を殺した場合」では若い方。「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」ではベテラン刑事として登場
猪澤五郎
「犯行直後に目撃者を殺した場合」で主人公が車でひき殺した人物。恐喝をしており,恐喝をするときは「鈴木某」と名乗る。
蒼井
Mというバーのバーテンダー
秋津桃子
Mというバーの常連。花田欣也(加納豪)と結婚する。
加納卓也
「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の視点人物。最後に名前が明かされる。奥津行彦の子ども。双子の弟である奥津達也と花田欣也(加納豪)を殺害する。
桑原銀次郎
「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」に出てくるフリーランスのライター
猪澤光蔵
「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」に出てくる。週刊標榜にネタを持って行った人物
○ 犯行直後に目撃者を殺さなかった場合の仕掛け
○ 「ベテランと若手」の刑事が来ており,「和泉」という名前が出てくる。しかしベテランの方が「和泉」と分かるように描いていない。若手の方が「和泉」と誤信するように描いている。
○ 一人称は花田欣也(加納)ではなく,「奥津」として描かれている人物は奥津行彦の子ども。 -
Posted by ブクログ
あまり感心しない出来栄えと言いますか…特に最終章を読んでも驚くようなことはありませんでした…。
ヽ(・ω・)/ズコー
なんかやたらと会話文が続いて、登場人物がしっちゃかめっちゃかに交錯するものですから、印象の薄い登場人物とか忘れちゃいますよ!? きちんと頭ん中で整理して読んでいかないと混乱しますねぇ…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、それにしてもパラレルワールド?的な構成も組み込みつつ、きちんとミステリ作品に仕上げるんですから浦賀氏も変わったというか…初期の、思春期特有の鬱屈したアレとかはもう無くなった感がありますねぇ…。
「記憶の果て」とか、自分は青春小説として読んでいたきらいがありますから…さようなら。
ヽ(・ω・)/ズコー -
Posted by ブクログ
ストーリーよりもトリックを重視する類のミステリである。帯に「絶対に騙される!」とあるように、一部のトリックに感づいても、人物の関係や殺人の動機等、大半の内容は推測できなかった。そのような意味で、本格ミステリとして見れば良作といえるのだろう。ただ、ストーリーやキャラクタをそれぞれ見た場合はどうか。
論理的で話の筋は通っているが、現実的とは感じなかった。もちろん、創作物、特に本格ミステリにおいては現実性どうのでの批判はお門違いの部類に入ることはわかっている。しかし、現実性度外視のミステリは少なくとも私の好みではない。また設定上、キャラクタを深く掘り下げることはできないため、登場人物の魅力は必然的に低いものになっている。純粋にトリックを楽しむ読者諸氏にはお勧めであるが、起伏のあるストーリーとキャラクタとを求めている層には紹介しないタイプの作品である。
私は読みやすく、起伏のある作品が好きなのだ。ストーリーあってのトリックなのだ。本作は"ifの世界"を交互に描く特殊なフォーマットであったことや、掘り下げられない複数のキャラクタの名前を覚えるのも困難であったことから、尋常でない混乱を伴う読書体験であった。一言でいえば、くたびれた。著者は私の苦手なパズルのような作品を執筆するタイプなのだろうという印象は抱いたが、一作で判断するのも早計である。今後、著者の通常のフォーマットで書かれた作品もチェックしてみようと思う。 -
Posted by ブクログ
銀次郎は元妻・聡美が巻き込まれた医療ミス裁判の取材を引き受ける。
いい加減なところもあり、意気地のないところもあるけれど、それでも無様な姿を晒したくないというほどにはプライドも持っている。
行動力もあり、一見記者に向いているようにも見える。
だが、思考回路は単純でご都合主義なところもあり、何よりも取材対象に対して妙にバカ正直な一面があって、けっして記者向きではないことがわかる。
自分が後味の悪い思いをしたくないから公正に振る舞おうとする。
そこに銀次郎が抱えている弱さが透けてみえるような気がしてしまう。
人はどこまで自分勝手なのだろう。
愛するということも、守るということも、相手の立場にたって考えられなければ意味がない。
「愛」という免罪符をかかげて強要する行為は、どんなにそれが相手にとって有意義なものだとしても意味がない。
同じように、「愛」を理由に自分を犠牲にする行為もまた意味がないもののような気がする。
ただひとり、何者にも囚われない自由な精神で生きているミカの存在が救いだった。
だから余計に最後に銀次郎がしようとしていることが、銀次郎の自己満足にしか思えなかった。
この物語で一番身勝手だったのは、故意に人を陥れた人間であることは間違いない。
けれど、それと同じくらいに身勝手だったのは銀次郎ではないだろうか。
何となく釈然としないまま物語は終わってしまった。