池澤春菜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
お二人の尋常ならぬ多読っぷりにたじたじ。
少年小説もSFもミステリーもあまり読んでいないわたしには知らない本が多かった。
唯一興味が重なりそうな児童文学でさえ読んでいないものが多く、さらにわたしの好きな少女小説はちょっと苦手、とのことで…時々知っている本が登場する程度だったけど(ケストナーとかサンテクジュペリとか)、やっぱり本について語られるのを読むのは楽しい。
p40 宮沢賢治の「貝の火」や「土神と狐」jは今はわからないけど、いずれわかるだろうって思いながら読んでた、とか、わかるなあ、と。
春菜:『銀河鉄道の夜』でいえば、河原のサンタクルスの火を見て、「みんなあそこへ行くんだ」ってつぶやく箇所。印象的なのに、何が描いてあるのかわからない。とても美しいものが描かれている気がするのだけど、それが何かはっきりとは理解できない。
夏樹:「すごいらしいけど、よくわからない。また来よう」。で、いったん去る。それを繰り返す。
春菜:じつは『星の王子さま』もそう。(略)読み終えるたびに「また三年後くらいに戻ってこよう」と思う。
(略)
春菜:奥のほうに何かがあるのに、「ここから先にはまだ行けない」という感覚がいつもあって、まるで、一見さんお断わりの「注文の多い料理店」みたい。「次に来たときは扉が開くかな」と思いながら読み続ける。そんな作品。
日本はSF翻訳大国だそうで、「ウィンターミュート」という作品について、春菜さんが「あれを英語で読まなきゃいけない人は損しているとすら思う」と言っていたのが面白いなと。さらに父親の夏樹さんが「シェイクスピアと一緒だ。イギリス人は原文でしか読めない」と。翻訳が原文を凌ぐほど素晴らしいとは!(わからないでもないけど、何てこと!)
夏樹さんが父親の福永武彦について語るp160以降はとても興味深く貴重。
◎池澤夏樹が選ぶ福永武彦の三冊
『深淵』(『池澤夏樹=個人編集 日本文学全勝17』河出書房新社収録)
『世界の終わり』(同)
『廃市』(同)
「今は父の一族のことを書くべく準備を重ねている。九州北部から得て多くの実績を上げた聖公会の信徒たち。」とのことで、出版されたら読みたいな。 -
Posted by ブクログ
本好きな池澤父娘の仲の良さが伝わってきて、楽しげで微笑ましい。
児童文学から始まり、SFやミステリへと話が広がって行って、私の好みのジャンルであったこともあり、これは読んだことがある、それはまだ読んでいないという感じで二人の話に入り込み易かったのも良かった。
翻訳本にはあまり食指が動かない私だが、「翻訳物は確実に面白い。訳者が翻訳して日本で出版する時点で、すでに高いハードルをクリアしているわけで、よほどでない限り外れはない」という発言を読み、読んでみようかなと心動かされる。
子どもの頃の私の愛読書だった坪田譲二が「今ひとつ切れ味が悪い」と評価が低かったのには苦笑した。
「人間そのものに対する関心が薄い」という夏樹氏の発言がったが、だから氏の作品が好きなのかなと思った。 -
Posted by ブクログ
書店で必ずあるのがNHKテキストのコーナー。そこに「筒井康隆」と大きく書かれた薄い本が山積みで置かれていた。なぜ筒井康隆の本がNHKテキストなのか?と混乱しながら本を手に取ってみたら、別冊NHK100分de名著のシリーズ関連図書とのこと。他にも、有名人の本がいくつも置かれていた。この本は、今年のお正月にNHKで放送された内容を基に纏められたもの。筒井康隆大好き人間4人とカズレーザーが出演していたとのこと。4人それぞれが自分のスタイルで筒井康隆作品を解説する。そう言えば、昨年もNHK-BSで筒井康隆の特集番組が組まれていた。一時期、「残像に口紅を」がSNSで話題になり、どの書店でも文庫本がこれも山積みされ、飛ぶように売れたとのこと。一体、どの様な経緯があってSNSでバズるのか理由を知りたい。
中条省平(フランス文学者)は流石に学者らしく、お題目の「脱走と追跡のサンバ」に関連する様々な外部作品や世界情勢を基に持論を展開し、見事に本作品を説明しきっていた。そこまで広げるか?という点は否めないが、この作品に対する深い愛を否が応でも感じてしまう。
池澤春菜(声優・作家・エッセイスト)の担当は「七瀬三部作(家族八景・七瀬ふたたび・エディプスの恋人)」。NHKでドラマ化(NHK少年ドラマシリーズ)されており、主演の七瀬には当時好きだった多岐川裕美が演じていた。この半年前に「東芝日曜劇場」で「芝生は緑」という題名で家族八景を放送していたとは全く知らなかった。こちらも主演が多岐川裕美だったらしく、見逃してちょっと悔しかった。池澤春菜は中条の様に外部の作品をあまり引用することなく、三作品の文章自体を引用して自分の七瀬愛を深掘りしていた。
菊池成孔(音楽家・文筆家)は18作品の短編集「エロチック街道」の個々の作品について解説をしている。まず、本作品が中南米文学から大きく影響を受けていることは知らなかった。私は単に面白い作品だなと楽しんで読んでいた訳だが、その様な深い背景があったとはね。そしてこの時期、筒井は中央公論社の編集者である塙嘉彦氏にかなり影響を受けていたようだ。実は編集者という仕事がそれほど重要とは思ってはいなかったが、編集という仕事は松岡正剛の様に哲学者の如く文学作品に影響を与えることを知った。実際に、筒井康隆をSFから純文学に舵を切らせたのは塙嘉彦氏とのこと。この本は短編集なのだが18作品の個性がかなりバラバラなので、本全体として評価するのではなく、気に入った作品を集中的に、これも深掘りしていた。
そして最後は、SFだったら何でも首を突っ込んで来る大森望(書評家・翻訳家・アンソロジスト)による「虚構船団」の解説。この解説を読んでいると、本当にこれは純文学なのだろうかと首をひねってしまう。大森望が言う通り、この作品が新潮社から叢書風に箱入りで出すような作品なのか?安部公房「砂の女」や大江健三郎の「同時代ゲーム」と同列の純文学なのか?でも実際にこれら3冊を並べてみると、意外としっくりくる。実に不思議で謎だ。正直に言うと、購入当時は擬人化した文房具の説明に辟易して積読コーナーへ。でも大森望の解説を読んだら俄然読む気が出て来た。でもページ数が多いから、また途中で中止するかもとグダグダ悩み中。
今回の参考に使われた筒井作品をリスト化してみたら、意外と抜け落ちているものがあった。DVDは「日本以外全部沈没」、「ウィークエンド・シャッフル」、それと芦名星の映画版「七瀬ふたたび」の3つを持っていた。買った時点で安心して、なんとどれも見ていなかった、ショック! -
Posted by ブクログ
ほんタメ文学賞あかりん部門を受賞された時に池澤春菜先生を知りましたが、声優さんとしての活動の内容を知ったらまさかのあの声も!あの声も!と大感動。YouTubeのオススメ動画でたまたま本屋さんで一万円分買い物をする企画のものに出演されているのを発見しまして、あ、知っている方だ〜と思い開いてみるとその圧倒的な知識量とSFへの熱量に大好きになりました!
ほんタメ文学賞の時からずっと積読していたものを引っ張り出して読んでみたところ
めちゃくちゃ面白い!!読みやすい!!!
SFへのちょっとしたハードルの高さは、小さい時に挑戦したスター・ウォーズの小説を読み切れなかったところにありまして。海外の方の名前が覚えにくいという世界史苦手マンのせいだったんですけれども。それでもほんタメで紹介をされていた「ゆきあってしあさって」「まず牛を球とします」であったり、お友だちがオススメしてくれた「プロジェクト・ヘイル・メアリー」でSFが大好きになりました。もしもの世界を妄想するのもガンダムSEEDも大好きな自分がSF嫌いなわけないんです。でも余りにも宇宙戦争は難しい用語のオンパレード、宇宙人の設定の複雑さについていけなかったのは自分とかけ離れすぎているからだったと気づきました。
池澤春菜先生のこの作品は、自分の日常にちょっとしたifを混ぜてくれる、そんなSFです。今の生活がちょっと良くなること、逆に宇宙人が来て今の生活が一変しちゃうこと、そんなもしもが散りばめられて(もしも自分がこうなったら…)なんて妄想も出来ちゃう。そんなに遠くない世界を覗き込んでみる、そんなワクワクと不安が入り混じったようなお話がたくさんですぐに読み終わっちゃいました! -
Posted by ブクログ
SF短編集。ちょっと新井素子的「女のコ感」を感じつつも、こちらの方が新井素子よりもちょっと年齢が上かな?って印象。全体的に結論が明確に出ないことで、ふわっとした余韻が残る。
祖母の揺籠、が一番気になる話だった。最初読み始めた時は「なんだ、これは?」という感じだったけど、何度か読み直すと希望があるような悲しいような印象。このまま気候変動を放置していると、陸の生活はこうなっていくよね(海のほうが流石にこうはならん気がするが)。
糸は赤い、糸は白い、も「それでどうなったんだろう、気になるな」という話だった。どのような形になってもコミュニケーションというのは悩ましいなぁ。
しかしSF作家ってアイディアが豊富だなぁ。
あと、1984を読んでるとクスッとする表現があったりする。SFってハイコンテキストだなぁ(というほどでもないが。知っていた方が楽しめるという意味で) -
Posted by ブクログ
読みやす面白い!!
時間がゆったり流れる作品もあれば、コミカルにどんどん話が進んでく作品もあって、ジェットコースターで振り回されている小説集。
Yours is the Earth and everything that's in itが好き。
空気感が良い。
もったりした感じの中にちょっと花が咲く時があって、それがすごく良かった。
糸は赤い、糸は白いも良かった。
恐ろしい結末になるんじゃないかとドキドキしながら読んで、終わりは終わりで息が止まった。
若い子のエネルギーに振り回された。
高校生くらいの子に読んでほしい作品。
この本を読むことでSFに興味を持ってほしい。
読んで大正解の本でした。