池澤春菜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
色んなSFが楽しめる短編集。
SFといっても化学や宇宙の難しい用語が並ぶようなタイプのものではなく、世界観は掴みやすい方かと思いました。
最初の2篇は入り込むのにちょっと時間がかかったけど、3つめの「あるいは脂肪でいっぱいの宇宙」で急に、
久しぶりに女子会をするからダイエットをしなきゃとSNSのアカウント(アカウント名もえたま)を開設して励む32歳の女性、
という、ものすごく現実感のある話が始まって、
そこでわたしはなんとなくこの本好きかも、思って一気に読みました。
結局、このお話もとんでもない方向へ向かうわけだけど。笑
AIddyの話は近未来の世界を1番リアルに描いている気がして、他人事じゃないなあという感じだった。
AIddyって、ありそうなんだけど、ないのかな。20年もしたらもしかして、と思わなくもない。
ほっこりいい話で感動してたら次のお話でまたもえたまがとんでもないことになって出てきて笑ってしまった。
そして最後に表題作。わたしはこれが1番好きでした。
出てくる人物の人間味とかあたたかさをしっかり感じるけど、暮らしている世界はコロニーで、死に対する捉え方も少し違っている。
“遠い昔に聞いた歌のように、聞いたことは憶えていても確かには思い出せない、そんな存在でいいよ。“
大切な人には、わたしを失った悲しみなんて忘れて欲しい。
遺書に書きたい1文です。
今にもこうなりそう、って思うような近未来の話からぶっ飛び展開まで色々あったけど、無機質に見えるような世界でも、AIとより近くなった世界でも、人のあたたかさや優しい繋がりはいつもそこにあって感動したし、嬉しかった。
SF読みなれてない方にもおすすめです。
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Posted by ブクログ
同じ作者によるとは思えない多彩なSF短編集。「糸は赤い、糸は白い」はキノコを植菌する近未来、二人の女子高生の恋愛感情。体温と甘酸っぱい湿り気に満ちていていい。
一転、「あるいは脂肪でいっぱいの宇宙」は宇宙スケールに絶対痩せなくなったもえたまの独り言とオタクのスミスや脂肪ちゃんとの会話が疾走していて思えず笑ってしまう。
「Yours is the Earth and everything that's in it」2038年のAiddyの独り語りで語られるサクランボ農場に生まれた青年の人生は、AIがまだぴんと来ていない自分にとって、なるほどAIによるユートピアってこういうことなのか、とやたらに腹落ちした。表題作は「流れた」孤高の叔母からの遺言で一つだけ頼まれごとをした姪がそれを果たす旅に出る。心を打つ。
P102 この宇宙にいる意識あるものみんな、似たようなこと考えてるんだよ。多いとか少ないとか尖ってるとか丸いとかスカスカとか密密とか、自分の今に不満があるんだよ。【中略】でもいつかみんながその足りない部分や余っている部分を交換できるようになったら、みんな満ち足りて幸せになれるかもしれない。あ、そうか、古事記でやった「成り合はざるところ」「成り余れるところ」ってそういうことなのかも
P180 「文章ってやつを、わたしたちはリボンとして見ている。でもあなた(ディスクレシアの姪)には紙吹雪に見えている。元はおんなじもんなんだけど、見え方が違うだけだね。【中略】叔母は、わたしが紙吹雪をどうやったら捕まえられるか、いろいろ考えてくれた。 -
Posted by ブクログ
今回のアンソロジーは読みやすい作品が多かったように思える。あくまでも個人の感想であるが、世界観をぱっと理解できる短編揃いなのだろう。個人的に印象に残った作品は2つ。「メタモルフォシスの龍」(空木春宵)は個人的にはあまり好きではないジャンルなのだが、恋に破れると蛇化する女性と蛙化する男性、特に蛇化する女性の描写が生々しくも切ないのが良い。「されど星は流れる」は系外流星を流星同時観測の手法で探索する物語。科学を一生懸命やる話は私の好物である。遠くにある流星の母星と少し離れた観測者の男女の物語が接触しそうでしなさそうな、流星が地球をかすめていくような感じでよい。
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Posted by ブクログ
中華SFの大作『三体』の劉慈欣による、今のところ唯一の童話、だそうです。
挿絵たっぷり、余白たっぷりの絵本の体裁で70ページほど、短ければ数十分もあれば簡単に読み終わってしまう1冊ですが、余韻も感じる素敵な1冊でした。
こういう「夢(夜見る方です)」のような展開を、綺麗にして世に出す、というのは物語としてとってもプリミティブな営みで、短い読書体験ながら、普段と違う脳の部分が刺激されるようで、心が洗われるような気持ちになりました。
1日の色々が全部落ち着いた夜に、ウイスキーかブランデーか赤ワインでも飲みながら、ゆったり読んでいくと、その日の寝付きが良くなりそうな気がします(笑
ただ本著、どう見ても大人向けのパッケージングではあるのですが、ストーリー的には子ども向けでも良いのでは?とも思いました。もちろん、本著は本著のままで、大人向けの1冊として素敵だと思うのですが。
言い回しも平易に直す必要が出てきちゃうとは思いますが、こういうストーリーに子どもの頃から触れるコトで、何らかの化学反応を引き起こせるような気がします。
ただ、それで若年層に売れるの?と言われると急に自信が無くなるので、KADOKAWAさんの判断はきっと正しいんだろうな...。
あらためて翻訳も、絵も装丁も素晴らしい1冊でした。