池澤春菜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
台湾が好きで、台湾関連の本をよく読んでいたが、最近は世の中にあふれる台湾情報に勝手に食傷気味になっていた。この本を見かけたときも、あまり期待せずに台湾本だからと義務感のようなもので読み始めたのだけど、とても面白かった。
かわいらしい表紙とお菓子という主題にだまされた。歴史や文化、地理まで広がる甘いお話はとても興味深くひきこまれる。池澤春奈さんてかわいらしいのですが、骨太なオタク気質があるようでこれまでもなかなかの情報量の台湾本を書かれている。池澤さんの台湾本の中でこれが一番好き。自分の好きにまっすぐ猪突猛進(?)なお姿を拝見していると、羨ましいと思うと同時に元気がもらえる。いろいろなことにものに、興味がおありのようで忙しいと思うけど、ずっと台湾を追っていてほしい。私はそんな池澤さんを追っていきたい。故宮博物館は当分お預けとおっしゃっているので、まだまだ大丈夫かな?
北投市場で調達した材料で池澤さんが作ったパフェ美味しそうだったなぁ。
コラム「わたしの旅支度」で池澤さんの台湾旅の様子をのぞくことができる。とても参考になった。次回のたびにいかしたい!と台湾への興味が復活してきた。
20260726 -
Posted by ブクログ
3代にわたり作家という家族のお話です。小説とかではなく、リアルにその設定なのです。ギネス記録?とかにもなりそうな気がします。
父親と娘の本にまつわるあれやこれやが語られています。とても楽しく拝見しました。巻末には、本書で語られた書籍がリストになっており、読書ガイドにもなっています。春菜さんの中学生時代の友達の家にいったら、同じ作家の本がたくさんあり、実はその子の父親が半村良さんだったという逸話には驚きました。
親子で本を話題に、途切れることなく話が続くのは、すごいなぁと思うわけです。
そんな境遇に生まれたこと、幸か不幸か、複雑な思いもあったようで、そんな話も伺えます。楽しいひと時を過ごすことができました。 -
Posted by ブクログ
雨の日にも、
光を信じる人へ。
・・・と最初にある。
『光雨往来』というタイトルもとても良い。
雨粒に光が当たって、キラキラと輝いている様子が見えるようだ。その後ではきっと虹も出るのだろう。
漢字って、素晴らしいと思う。
たった一文字で意味がある。中にはいくつも意味を持つものもある。
中国から頂いたもので、その後日本で作られた漢字もあるけれど、文字を共有できているのはうれしいことだ。
しかし、「日本人は中国語を話そうとすると、日本語の読みに引きずられてしまう」というのが、登場人物たちの共通した悩みでもある。
身体的に、精神的に大変なことがあったり、仕事がうまく行かなかったりで、心に穴が空いてしまった人、疲れてしまった人たちは、光を求めて台湾へ行く。
そこで人と出会い、一杯のお茶と出会い、癒されていく。
体が癒されると、大切なことに気づく力がよみがえってくる。
最初の【光を飲む】は、水原凪(みずはら なぎ)と台湾のお茶屋さんの娘・ノノの友情のお話で、最後の【光をほどく】につながって、一冊の短編集を大きくまとめている。
【神様のお粥】の、小さい神様・メイメイと、いつもお参りに来てくれる女の子・小莉(シアオリー)のお話がとても可愛くていい。
【猫猫馬馬虎虎(マオマオマーマーフーフー)】は、人間関係に疲れてしまって適応障害で休職した・長谷川眞朱(はせがわ ましゅ)が、猫のお世話係りとして泊めてもらった部屋で、猫のお世話をしながら語学学校に通うお話。猫の冰友(びんよう)が眞朱を観察しているモノローグが不思議で、猫の目を通して部屋の中を見ている気分になる。
一番好きなお話は【ペトリコール】、雨の日にしかたどり着けない郵便局のお話。実は、台湾と日本の過去においてのつらい真実もからんでいるのだけれど、台湾が大好きで何冊も本を出しているという池澤さんは、光だけでなく影の部分もしっかりと読者に示していく。この、小説家と青鳥さんのお話は、シリーズになったらいいなあ、などと思う。
初読みでしたが、池澤春菜さん、とても良かった。 -
Posted by ブクログ
精錬されたタイトルと興味深い表紙のデザインにひかれて手に持ったものの、良い意味で裏切られてしまった。コミカルに、時に情緒的に作られたSF短編集。緩急がよいスパイスになってすらすらと読んでしまった。表題作『わたしは孤独な星のように』と『いつか土漠に雨の降る』がお気に入り。
『わたしは孤独な星のように』
祖母が星になった。少女はその祖母の最後の願いを叶えるために祖母の旧友と旅に出る。人が一人いなくなるということ。その喪失の表し方が印象的だった。その喪失に気付いた時、そばにいてくれる人がいることがどれだけのものをもたらすのか。世界観も相まってお気に入りの一作。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私がかなり筒井作品を読んできたとはいえ、学生時代の集中した読書がメインで、その後は一気にペースダウン。さらには、私の読み方といえばほとんどエンターテインメント軸なので、各人のどの評を読んでも感心してしまう。
本書全体の掲載記事にはとても丁寧な語彙の注釈・解説が全ページの下1/4の欄外に掲載されている。文学用語や作家名・作品名(私は極めて無知で助かる)だけでなく、常識ではないかと思うような昔の事件まで注釈になっている、と驚いたが、よく考えれば、私が年寄りだから知っていることが多いのだと気づいた。若い人は大阪万博や三島事件だって知らないのも無理はない。
1. 中条省平(フランス文学者)
テーマは「革命と内宇宙のリズム - 脱走と追跡のサンバ」。私は読んだはずだが覚えていない...
時代の世相と近未来を見通す先見性をたたえる筒井作品を評する。「脱走と追跡のサンバ」では1970年台の不安定な世界での「革命の夢」が潰えていく現実の閉塞感。さらに論は情報による呪縛、時間による束縛、空間による圧迫を軸に「48億の妄想」、「虚人たち」にも言及する。主人公「おれ」があらゆる現実、虚構、幻想を疑い、拒否し、破壊してシュルレアリスム的無意識をも拒否する究極のニヒリズムを世界の本質としつつ、断筆宣言後にはこのニヒリズムを相対化できる言葉の力を信じて執筆を再開し、読者はそこに勇気を見つける、と評者は解く。
私にはそこまで深い考察はできませんが(ぼんやりと)同意したい気分です。
2. 池澤春菜(声優、作家、エッセイスト)
表題は「拡張と回帰の物語 - 『家族八景』『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』」。おそらく...3本とも読んでいるが忘れています...
「家族/家庭」、「母」「愛」「神」を主要テーマとして描き続ける作家として評する。自分にはないこの視点が、最近読んだ作品に当てはまることが驚きでした。そしてこれらのテーマはいずれもアンビバレントなものとして描かれている。ニヒリズムも感じます。嘘くさい二元論の対極にありますね。
3. 菊地成孔(音楽家、文筆家)
「夢と虚構の純文学へ ー エロチック街道」。
評者は筒井をいきなり「筒井先生」と呼んで作品ベタ褒め状態で評が始まる。私はジャズ好きもあって結構筒井をフォローしていたのだけど、エンタメ、ドタバタ、リズム、実験(わかりやすい)的作品のシンプルな驚き、といったような表層的な読者。純文学については無知。評者は中南米文学を吸収した上で筒井作品を評していて、まさに脱帽。ジャズマンたるものハッタリや虚飾は大好きと思うけど、ここでは至って真面目。
文芸誌「海」編集者の塙嘉彦、筒井にとって中南米文学への扉を開いたグールー(guru、昨今の日本語ではグルと言うことが多い)という存在は今まで知らなかった。私はすでにこの時期には筒井作品にあまり接していなかったこともあり、これも驚き。
『エロチック街道」は短編集で、本論では「超虚構」を軸にした各短編での様々な文芸的技術が解説されます。
4. 大森 望(書評家、翻訳家、SFアンソロジスト)
「超虚構の到達点 - 虚構船団」。
「虚構船団」は私も比較的最近読んだ長編。文房具軍団vs鼬(イタチ)軍団の戦争物語。まず最初の文房具の登場からして、なかなかのショックで、さらに抜群のエンタメ性が印象に残っています。
第1章は戦争に突き進んででいく文房具たちにより現代人を風刺し、第2章では鼬族(ゆうぞく)の、戦争と暴力の歴史。筒井の言によれば「世界史を残虐性の側面から眺めたというていのものになっている」。第3章は文房具たちと鼬族の戦争。そこに、(遂に)いきなり作者筒井康隆が登場する。評者は、この逸脱は、読者に対して虚構を現実に繋ぐための手法になっていると解する。結局は核爆弾により破滅に至るが、起こりうる現実を映したと考えると、背筋が凍り、いたたまれない。現時点で、プーチンやルカシェンコは核を脅しに使っている。
5. 巻末・銀幕に躍る奇想天外 筒井康隆劇場
映画の原作となった九つの筒井作品を2ページで簡単に紹介。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ父と娘、祖父も入れれば三代で作家であり、今なお本の世界に魅了されている二人がただただ延々とこれまで読んできた本のことや作家になるまでの人生を語り合うという内容。
全編を通して特に海外文学の翻訳書への造詣が深い様子が描かれ、児童文学からSF、果てはミステリーまで数多くの本について語られている。
私はこの本を読んだことでほしいものリストに20冊以上の本が増えた。うーん商売上手。
これまでいくつか海外文学に手を付けたことはあるが、そのほとんどは途中で投げ出してしまい、苦手意識を持っていた。
しかし、よくよく考えてみれば子どものころに読んだことのある有名な絵本は海外のものが非常に多く、それには原作の翻訳書も必ず存在する。
まずはそこから始めてみればこの苦手意識を払拭できるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら私は今日もほしいものリストに本を放り込むのである。
でも身近に同じ趣味を持っている人がいて、ここまで深く語り合えるというのは非常に稀なことに思う。
羨ましいと言えば羨ましいが、それが実の家族だとちょっと照れくさいのでこんなふうに話すことなんてないだろう。
だけどやっぱり羨ましいなぁ。 -
Posted by ブクログ
著者のお二人を「理想的な親子」と言ったら、言い過ぎでしょうか?
もちろん、見えないだけで、家族にはいろんな側面があると思います。
でも、この本で本について語り合うふたりのやりとりには、
まさに “同志” としての絆を感じる、信頼に満ちた空気が流れていました。
私も父とはあまり多くを語りませんが、本のことだけは、なぜか少しわかり合えている気がします。
父は、本を読む私を、どこかで信じてくれているような気がするんです。
そして今は、幼い娘とも、いつかそんな関係が築けたら、と願ってしまいます。
もしかすると私は、娘のために、少しずつ本を集めているのかもしれません。
いつか彼女が困ったとき、つらいときに、この本棚に並ぶどれかが力になってくれたら、うれしい。
さらに、本好きの “同志” として、おすすめの本について語り合える日が来たらいいな、と。
そんな夢のような親子像を描きながら、今日も私は本を読みます。
ちなみにこの本、プレゼント選びのヒントにもぴったりです。
私自身、甥っ子へのプレゼントを、この中で紹介されていた本から選びました