池澤春菜のレビュー一覧
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ほんタメ文学賞あかりん部門大賞受賞という事で久々に読んだSF。
小説集という事で一つ一つのお話は短くて、たくさんの世界を楽しめる素敵な物語ばかりだった。
ハラハラしたり、ゾワゾワしたり、キュンとしたり、さまざまな感情を楽しめた。
2つだけ繋がっている話があったけど全7本の物語はどれも味わったことのない未来や近未来や、違う国や世界の話もあったけも、時々今の現実に繋がるキーワードもあったりして、近くて遠い距離感だった。
コメディタッチのものや、ディストピアものもある中で、最後の表題作は世界や文化、人がどんなに変容しても、普遍的な想いを描いていて、最後の2ページで胸がギュンッと掴まれてしまった。
ぜひ読んでたくさんの人に体感して欲しい。 -
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池澤春菜「SFのSは、ステキのS+」に続く2冊目。初の小説集という。先に出典(初出一覧)を見たら、幾つかは既に読んでいる。最近偶然ではあるが、2回読むことでその作品の真価を再認識できることが判ったのでしっかりと読んでいきたい。久々に、作品を個別に語りたい。
「糸は赤い、糸は白い」
ステキS+で既に読んでいる。本作品で池澤春菜の素晴らしさに感動し、次の作品を読みたくなった訳だからこの本を買うことは自然な事。今回読むのは2回目なのだが、当然のごとくこの作品の評価は最上級に推したい。所謂、GLSF作品なのだが、GLとSF(マイコパシー)のバランスが良い。最近GL作品を読む機会が多くなってきたので目が肥えてきたかも。この作品を冒頭に持ってきたことで、本書を手に取った読者は池澤春菜の推しになること間違いなし。
「祖母の揺籠」
本作品は2084年のSF(ハヤカワJA)で読んだはずなのだが、読んだ記憶が無い。たぶん2084年で私の心に刺さらなかったのかもしれない。同じジャンルである上田早夕里の「オーシャンクロニクル」シリーズと比べるとどうしても見劣りしてしまうからだ。私が上田作品を知らなければもう少し評価が上がったかもしれない。
「あるいは脂肪でいっぱいの宇宙」
とても面白い作品、宇宙に行くまでは。宇宙以降はSFで最近多くなっているドタバタへSFへと向かう。実に惜しい。最後を何とか打開して作品を締めることができれば良かったのだが。
「いつか土漠に雨の降る」
本作品はなかなかの秀逸な一品となった。基本的なファーストコンタクトものなのだが、視点・発想が優れている。とてもサイエンスな作品なので、とても作品にのめり込むことができた。ビスカチャの(美化した)イラストがあればいいのになぁと思った。読者に将来の方向性を考えさせる手法はなかなか心地良い。
「Yours is the Earth and everything that's in it」
これもWIREDで既に読んでいた作品。よくある同時並行ストーリーもの。2067年、2040年、2038年の三元建て。AIに関しては批判的な作品が多い中、本作品は数少ないハッピーエンド。終り良ければ全て良し。AIと人間との融和性に新たな一面を投げかけた作品と言える。
「宇宙の中心でIを叫んだワタシ」
「あるいは脂肪」の続編という立ち位置。「声俑」という新しい要素を加えてみたものの、基本路線が「脂肪」を引き継いでいるので、どうも作品にのめり込めない。実に面白い作品であることは間違いないのだが。惜しいな。
最後に、表題作である「わたしは孤独な星のように」
さすが表題作に位置するだけのことはある。池澤春菜がエクセレントなSF作家であることをものの見事に証明した作品だ。もうちょっと長ければ、より作品の良さが顕れてくると思うのだが。個人的にはなかなか上品なSF作品と言いたい。
今回の作品は、ゲンロン大森望SF創作講座がらみのものが多いが、もうちょっと様々な媒体に作品を投稿して武者修行をすれば、または思い切ってシリーズものに手を広げるか、積極的に御自分の作品を売り込めば大化けするのではと予想する。まあ、お忙しい方なのであれこれ多くを求めることは避けるが、少なくとも大森望から卒業して作品に磨きをかけて欲しい。 -
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病気の恋人を治すため、サシャは火守の元へ赴く。
なんとあの「三体」の劉慈欣の児童書・絵物語です。日本版では西村ツチカさんが絵を描いているので、原書ではどのような雰囲気なのかちょっと興味がありますね。
ストーリーは月や星を行くとてもメルヘンな仕上がりで最後はふっと切なくて、他の作品で読み慣れた劉の印象はあまり感じられません。それでもところどころSF作家だなあ、と思わせる描写があったりして面白かったです。
この世界観を支えるのはなんと言っても西村ツチカさんの絵で、静謐な世界観を美しい、独特のタッチで描き出しています。西村さんといえば映画化もされた「極北百貨店のコンシェルジュさん」などの著作がありますが、その独特ながら図抜けた画力と画風は唯一無二といえます。
そんな西村さんと劉慈欣のコラボした本なんて見逃せるはずはないのです。劉のやさしい世界観と西村さんの圧倒的画力をぜひご堪能ください。 -
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劉慈欣氏初の童話。物語はサシャという青年が東の孤島に立っている場面からはじまる。淡々と描かれる情景描写。火守が持つ能力。サシャの願いが叶った後に描かれる火守の仕事に圧倒された。劉慈欣らしいラスト。私は少しだけ怖い。→
童話を読まずに大人になったので、深読みしすぎなのかもしれないが、火守の仕事があまりにも過酷で驚いた。若き火守となったサシャはこれからずーっと火守なんだろうし、背の高い老人はずーっと火守だったんだ。
誰かがやらなければならない仕事だし、でもそれを1人の火守にやらせるのはどうなんだろう
好きな描写は40ページ。三日月の船が星々の間を通る場面。星がぶつかるときに「夏の風になる風鈴のような音を奏でる」らしい。すごく綺麗。
あと、蟻が出てきた瞬間テンション上がった(笑) -
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ネタバレ父と娘の本に関する対談。
羨ましい。
私も、読んだ本について思う存分語り、読んでない本について存分に語られているつもりで、つまり第3の話者のつもりで読みました。
もう本を読みながら心の中で語る、語る。
だって児童文学、少年文学、SF、ミステリ、好きなジャンルの本ばかりなんですもの。
比較的少年文学は読んでいないけれど。
私はイギリスの文化(小説、音楽、映画)が好きなのですが、児童文学というのは圧倒的にイギリスが多いのだそうです。
なるほど、子どもの頃イギリスの児童文学を読みふけった結果、すり込まれたんやな。
物心ついた時から周りには本が当たり前にある環境で育った娘は、留学していた時、段ボール箱1箱分の本を持って行った。
それっぽっちの本、すぐに読み終わってしまう。
そうしたら、そのあと読む者もなく、どうしたらいいのだろうと恐怖だったと。
(実際には体調不良で途中で帰国したようですが)
私は、家に本がふんだんにはなかったので、何度も何度も同じ本を読んで育ちましたから、多分一通り読み終わったら最初から読みなおすね。
何の恐怖もなく。
最強の読書人親子だと思いますが、実は彼らは翻訳物の児童小説で育ったので、日本の者をあまり読んでいない。
それは私もわかる気がする。
昔風の言い回しが今も残る近代の日本文学より、今の言葉で訳してくれている翻訳物の方が断然読みやすかったし、遠い世界の風物を想像する楽しみもあったり、何より日本の小説は(児童文学も)辛気臭くて説教臭くて貧乏ったらしいものが多かったので。
でも、池澤夏樹は「何が面白いの?」と切って捨てた『次郎物語』は、私すごく面白く読めたんだよねえ。
それに出て来る無計画の計画は、今も私の行動指針だ。
だから感想なんてものは人それぞれなんだよね。
読みながら心の中で大いに語っていたので、多分私の血液はふつふつと煮えたぎっていたと思います。
そのくらいエキサイティングな読書でした。
ああ、楽しかった。
でも本当はリアルでこういう話をしたいんだよねえ。
だれか誘ってくれないかなあ。←自分からは出て行けない小心者 -
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池澤夏樹さん、春菜さんの、本が大好きな親子だから実現した濃厚な対談です。対話形式だから読みやすい。
読書を趣味にしたいけど、どうせなら良いものを手に取りたいという方にオススメ。決して本を読む事は偉いとか、沢山読んだ奴が勝ち、なんて事はなく、出てきた本の中から自分の心にささったものを手に取ってみる。合わないと思ったら本を閉じてOK。そんな、ゆるーい感じで未知の本とのマッチングをしてくれる本です。
お二人とも知識量が半端なく、賢い方同士の会話って、聞いていて興味深いし、得られるものが多々ありました。
また、自分の好きな本が取り上げられていると嬉しいですね。 -
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SFアンソロジー7作品短編集。
Genesisも3冊目となり、人の想いの数だけSFの世界があることを、あらためて知る構成。
SFは日常のそこかしこに息づき、私たちの人生に奥行きと彩りを添えてくれます。
『エレファントな宇宙』
アクションSF。ミリタリー好きな方に超オススメ。
宇宙から高次元生命体が飛来した。
その生命体とコンタクトした人間は、憑依され、未知数の破壊力を持つに至った。
最新鋭米陸軍部隊と特殊作戦に挑む3作目。
…前作を読んでいた方が、より楽しいかもしれない。
『メタモルフォシスの龍』
近似未来SF。
恋をしてはいけない世界で恋をしたひとたちの悲哀を描いた作品。
独特な文で綴られる物語は、1シーン毎に絵画を観るように美しく、そして切なく心に響きます。
やや重の話。…ハ虫類がニガテな方は気をつけてください。
『循環』
ノスタルジーSF。
主人公が、廃工場の棚で見つけた手のひら大の不思議な形の部品。調べても、いつ何処で作られたのか、何に使うものかも分からない。
それは、歴史を遡り過去に高次の存在から託された落し物だった…
就職からの軌跡を日本の経済成長期、大阪淀川付近を舞台にしっとりとした文章で綴った作品。
とても癒されました。
『されど星は流れる』
SFの原点。
高校生天文部員が、自宅待機で学校の観測機器が使えなくても、なんとか自分たちの流星を見つけたいと努力と工夫を重ねる物語。
星好きに悪い人はいない。
宇宙の遥かなる深淵へのロマンを思い出させてくれる、心を揺さぶる作品。
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お父様が最高の本読み仲間であるという池澤春菜さん。
羨ましいです。
私の父も本が大変好きでしたが、もうこの世にいないので、話ができません。(50代で早逝しました)
私事で恐縮ですが、高校のときビクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』をどちらが早く全巻読めるか、競争したことを思い出しました。父は完読したけれど、私は遂に完読できずじまいでした。
そして、皆さんご存知かと思いますが、春奈さんのおじい様は福永武彦さんです。
でも、春奈さんは、読むこと、書くことは血でなくて、環境だとおっしゃっています。
私は目下、SFが読んでみたいけど、何を読んだらわからないジャンルなので、春奈さんの「SFはパパの書庫があった」というのも羨ましいと思いました。
この本で一番読みごたえがあったと思うのは、児童文学の章です。
『星の王子様』の基本にある世界観は農業というのは初めて知ったし、『ムーミン』のアニメは楽しいけれど原作はかなり鬱々とした暗い話だというのも知りませんでした。
少年小説はイギリスだという結論も興味深かったです。
SFの章では、日本はSF・ファンタジーに関して、翻訳大国であるということ。
これはやっぱり読まないと損なジャンルかもしれないと思い、挙げられた書名をメモしましたが、お薦めの、『サンリオSF文庫総解説』を買うのもいいかも(私には少し高度な気もしますが)しれません。
春奈さんの書評やエッセイは拝読したことがありますが、脚本家でもあられたことは、マルチな方だと驚きました。小説を書きたいとも思っていらっしゃるそうです。
そして、私は池澤夏樹さんの評論は拝読したことがあるのですが、小説は『スティル・ライフ』を積読していますが、なんとまだ1冊も読んでいないことに気づきました。
春奈さんお薦めの『マシアス・ギリの失脚』と小説ではないけれど、『いつだって読むのは目の前の一冊なのだ』は前から読みたかったのですが、読んでいないので是非、読まないとと思いました。