武川佑のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
悪党のシラウキが助けた蠣崎家の姫、稲は和人によるアイヌへの圧倒的な暴力を見せつけられ、「とこしえの和睦」を結ぶために母から託された「力」を携えて出羽へと向かう。
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武川さんの作品、初です。エンタメ時代劇ですね。正直いうと、エンタメとしては筋に無理があったり登場人物の掘り下げがもうひとつだったりします。
しかしながら読み応えは抜群で、エンタメの両輪として設定されているメッセージはとても重くて、歴史上のアイヌの苦難はもちろんのこと、アイヌとシサムが同じ人として対等であることや、暴力に頼らない、弱きものたちが使う「力」についてなど、人としてとても大切なことを存分に訴えかけてきます。
アイヌとシサムは共に「人間」であること。歴史上、おそらく今に至ってさえ認識の齟齬があり、差別が残るそのことを、歴史のわずかな隙間に成立させたこのストーリーは著者としての祈りにも似たプロットであろうかと思います。それだけでもう胸がいっぱいになったので、ちょっとおまけの星5つです。
ちなみにこのテーマはクナシリ・メナシの乱を描いた前川康男さんの「魔神の海」を思い起こさせます。最近、ツイッター(X)がAI翻訳によって日本人のつぶやきが海外に知れ渡ることになり、恐るべき日本人の排外差別主義が露呈され、海外のユーザーが戦慄しているという残念なニュースが飛び交いました。特にこうした民族性の強い日本人が、いつか「円かなる大地」に辿り着くことを願ってやみません。 -
Posted by ブクログ
イメージは中世版ゴールデンカムイ。
日本の歴史では戦国時代に当たる北海道。道南一帯を支配していた蠣崎家と以前から居住していたアイヌは互いに緊張した関係にあった。主人公は謎多き屈強なアイヌの壮年シラウキと領主蠣崎の次女「稲姫」。
ヒグマに襲われた稲姫を助けたシラウキ。稲姫は礼を尽くすが行き違いから和人とアイヌの抗争に発展、
シラウキは稲姫を人質に逃走する。コタンでアイヌの優しさに触れた稲姫は自分が何もしらなかったことを恥じる。前面抗争を避けるためコタンの長と和睦の道を探る。蠣崎家の主君、出羽国の安東氏に仲介を依頼。稲姫とシラウキは海峡を超え苦難の旅に出た。道南と北東北を舞台に数々の困難を駆け抜けていく本格的歴史エンタテインメント。
金カムとは反対で少女が和人、バディはアイヌの壮年。13歳の箱入り娘だった「稲姫」の生長譚と言ってもいいストーリー。少女から脱却しアイヌと和人の和睦を図る成長ぶりが目を見張る。シラウキは悪党(ウェンナイヌ)と呼ばれながらも稲姫を守り未来を託す。デカくて渋くて強い。圧倒的な強さは悲しみの過去の上に築かれたもの。金カムと比べるとシリアスな展開。カギになるのが「ウェンカムイ」人食いクマだ。要所要所で重用な意味を持つ。冒頭から8歳のアイヌの少女が餌食になる。かなりショッキングな表現がきつい。戦闘シーンもかなりエグい。だが期待が高まるドキドキ感がそれを上回る。最終章はいろんな勢力が入り乱れ戦いがクライマックスに向かう。展開が早くて何度も読み返した。エンディングは大同団結で和人とアイヌの和睦が図られた。だがアイヌの苦難がまた始まることを知る現代の自分にとっては辛い読後感が残った。だが作品は一級品だ。ぜひ、映画化を希望したい。シラウキを阿部寛、稲姫を山田杏奈。