武内涼のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
三条河原異聞というタイトル。であるならば、駒姫とおこちゃの運命が変わるのであろう、と思い読み進めていきました。
豊臣秀次に連座して刑死した39人。その悲劇から、少しでも悲しみを救おうという物語であるはずと思っていました。
救いはなかった。
歴史上の事実を知っている自分と、それを覆してくれるであろうという希望を持ってしまった自分。悲劇を知っているからこその覚悟と、それゆえに希望の先にあるであろう歓喜を待ち望んでしまう。この二つの感情に振り回され、最終盤まで悲劇も奇跡も、どちらかが待ち構えているという見通せない展開にページをめくる手が止まらない。
異聞とつけたのであれば、悲劇から解放してあげ -
Posted by ブクログ
戦国時代と言えば、織田信長、武田信玄、そして今回の大河ドラマの主人公徳川家康など数多くの著名な武将がしのぎを削った時代である。
この物語の主人公である尼子経久は歴史マニアなら間違いなく知っている全国区の人物であり、武将として、また領主として評価も大変高い傑物とも言える人物であるが、一般的にはマイナーな部類に入るかも知れない。
この物語ではその尼子経久の人物像が温もりを感じさせるほどに生き生きと描かれており、歴史好きでなくても楽しめるかもしれない。登場する人物にもそれぞれ個性があり、物語に彩りを与えている。人物を追いながらもストーリーの随所に表されている山陰地方の風物や暮らしぶりにも興味をもった -
ネタバレ 購入済み
地方の戦国武将でありながら月山富田城という名山城を持っていることに違和感を感じ続いていた。しかし、この大作を読み切って合点した。しかも、中国地方での領土争いだけでなく、室町幕府内の確執にまで関与していたとは。
波瀾万丈の人生を不屈の精神で生き抜き、世の中を改革し、多くの人材を育成しながらも、次世代への橋渡しは思うようにいかない。非常な戦国時代にあってカリスマが率いる組織はなおさらで、切なく歯がゆい。
数多くの人物は登場するが、分かりやすい文章で続巻が出るたびにほぼ一気読み。最終巻は物語の内容が濃すぎて事実の羅列に傾くように感じるのは私のわがままか。それでも経久の死後についてまで筆を進 -
購入済み
尼子氏を知る入門書
播磨、備前あたりの山城跡を訪れると何度も尼子氏の足跡を見て、かっての偉大な影響力を感じていた。また、月山富田城を見てものすごい城だと実感した。しかし、なかなか尼子氏の体系的な情報を得られずにいたところで本書にめぐり合った。
簡潔な文章で関連する史実も丁寧に書き込まれているようで尼子氏を知る入門書として最適ではなかろうか。また、時に登場人物の心のひだまで迫っていて、まるで大河ドラマを見ているような感すらある。続編が楽しみ。
なお、引用した当時の資料を随所に書きはさんでいるのは、作者の創作と史実をにおわせているようでありがたい。 -
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレつい先日読み終えた、和田竜さんの「忍びの国」の記憶も新しい中、同じ天正伊賀の乱を背景にした本作を読んで、全く異なるこの二作が実は繋がっているような錯覚を覚えた。
というのは、全くの私見かつ余談。
本作の話をすると、荒れ寺での精鋭の忍び達と妖達との凄絶な戦いは、確かに凄まじく、どうなるのかとドキドキしながらページをめくる手が止まらなかった。
しかし、ラストまで読み終えたとき、その死闘すら、伊賀忍びたちにとって、真の使命を果たすまでに立ちはだかった障害の一つに過ぎなかったんだと実感した。
かと言って、妖との死闘がつまらないという意味ではない。
忍びたちの己の使命への思いの強烈さが、そう感じさせたと -
Posted by ブクログ
1508年から1541年、経久84歳で死ぬまでを描く。
1508年、経久は大内につくことにして、京都へ攻め上る。この時代、すぐに合従連衡が変わる。凄まじい変化だ。
尼子の最盛期は経久の死ぬ直前から、孫の晴久が受け継いだすぐまで。
経久の教えを無視して、大内攻めを敢行しようとするも、その前の毛利に敗戦。一気に月山富田城まで攻められる。この辺りの国人たちの寝返りの凄まじさ。最大11カ国遠納めたと言っても心からの服属ではない。
経久の内政によって人々は尼子への忠誠を持つと言っても、それは出雲を中心とした数カ国に過ぎないのだ。
それにしても84歳まで生きた。しかし残せたのは名前だけか。