あらすじ
山形十九万石を治める最上義光の愛娘で東国一の美少女と称される駒姫は、弱冠十五歳にして関白秀次のもとへ嫁ぐこととなった。が、秀次は太閤秀吉に謀反を疑われて自死。遺された妻子には非情極まる「三十九人全員斬殺」が宣告された。危機迫る中でも己を律し義を失わない駒姫と、幼き姫に寄り添う侍女おこちゃ。最上の男衆は狂気の天下人から愛する者を奪還できるか。手に汗握る歴史小説!(解説・縄田一男)
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Posted by ブクログ
三条河原異聞というタイトル。であるならば、駒姫とおこちゃの運命が変わるのであろう、と思い読み進めていきました。
豊臣秀次に連座して刑死した39人。その悲劇から、少しでも悲しみを救おうという物語であるはずと思っていました。
救いはなかった。
歴史上の事実を知っている自分と、それを覆してくれるであろうという希望を持ってしまった自分。悲劇を知っているからこその覚悟と、それゆえに希望の先にあるであろう歓喜を待ち望んでしまう。この二つの感情に振り回され、最終盤まで悲劇も奇跡も、どちらかが待ち構えているという見通せない展開にページをめくる手が止まらない。
異聞とつけたのであれば、悲劇から解放してあげて欲しかった、という思いはまだ残っています。美勇兼備という駒姫であれば、刑場から一騎当千の活躍で抜け出し、秀吉へのレジスタンス活劇みたいな伝奇でも楽しめたでしょうし。
権力に執着する秀吉の醜悪さが顕になり始めた秀次謀反事件。秀吉の闇の部分というか、煮詰められた黒い部分は物語の登場人物として好きなキャラクターなのですが、それをぶつけられる側の視点から見た時の、恐怖と恨みと嫌悪がとてつもない大きさで心に刻まれます。
希望を持ってしまったことが、叶わなかった時の絶望を大きくさせる。その苦しみから逃れられないまま、読み終えてしまいました。駒姫やおこちゃのように、状況を受け入れる精神にはなれませんでした。
悔いが残り恨みも残る読後。彼女たちを救えなかった最上の男たちの生き様死に様が、その暗さ黒さを多少なりとも雪いでくれるのが、清らかなラストにつながっているのか。
残酷な物語でありました。その中に一筋の清廉な流れがあることが、残酷さを強調します。ただ、小さいけども強い流れは、失われることはなく、未来まで続いてゆく。その力強さを書きたかったのかな、と思います。
最後の専称寺の描写が、それなのでしょう。
Posted by ブクログ
三条河原異聞という副題なのと、このラストの怒濤の展開に、もしかしたら新説があり、駒姫たちは助かったのかなんて期待しちゃったりするのですが、やはり事実は曲げられない。やはり、悲劇は悲劇のまま、これで、おこちゃだけ助かるとか、姫様が助かるでは、話しの趣旨が違ってしまいます。戦国悲劇の物語の中でも、悲惨極まる出来事ですので、ハンカチを用意してお読みください。秀吉の理不尽に、むかつくこと確実です。とにかく凄かった。おすすめの時代小説なのであります。
Posted by ブクログ
結末を知っているのですが、もしかして…と思いつつ、早く続きが読みたくて一気に読めました。
というわけで、今は秀吉嫌いになってます。
いつもは、大阪在住なので秀吉びいきですが。
Posted by ブクログ
豊臣秀次の処刑と共に実行された妻子主従の三十九人斬殺事件。その中にいた嫁いだばかりの最上家の娘を救い出そうとするエンターテインメント時代小説。
秀吉側を擁護するわけではないが、秀次に会ってないからと言って駒姫のみを処刑の対象外にするという理屈は少し違うのではと思い、中盤まであまり没入できなかった。
しかし、堀喜吽の「(この世は)理非なき地獄。地獄では理非を閻王が見る…。その閻王不在の地獄」という言葉から妻女の辞世の句までそれぞれの言葉が重く響いて感涙に誘われた。特に、浦山筑後の最後の騒動が印象的だった。子や孫に近い歳の駒姫からの言葉を大切にする戦国の強者である筑後、その駒姫の亡骸すら引き取れない悔しさ。その熱い涙に感動するとともに、まさに秀吉の世の「地獄」を象徴していると感じた。
人にとって最も生きにくい世とは、理が通らず、意見も言えない、恐怖社会・言論統制社会であると思う。