飛鳥井千砂のレビュー一覧
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ネタバレintroduction───
「はっくしょん!」
大きなくしゃみが出た。鼻水がずるっと垂れてきそうになり、慌てて紗耶加は手で鼻と口を覆う。
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中盤、共依存寸前(というかもうそのもの)の恋人を断ち切ってからの解放感と躍動感が心地よくて一気に読み終えた。
紗耶加をだめな恋愛から救いだしてくれるのが、恋人以外の男性ではなくて女友達の言葉であるところ、すぐに次の恋愛が始まって今度こそ恋も仕事もうまくいく…という展開にはならないところもいい。
シンデレラストーリーではあるけれど、東京で自分の足で立とうと奮闘する女の子が女性に成長していく過程が丁寧に描かれている。
2018 -
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飛鳥井さん 久々の文庫新刊。
ずっと待ってました。
構成が効果的でした。
誰の言葉か明示されたパートと
どちらの言葉かは最後の方まで
わからないパート。
得体の知れない不穏な感じが
常につきまとう展開は
裏表のような彼女たちの背負う
業…呪縛によるものでしょうか。
2人は真逆なのに同じ。
第三者である読者にはわかる。
溶け合えない存在だけれども
互いにとって
互いは必要欠くべからざる存在だった。
悲しい結末のようでしたが
爽快さを胸に残してくれました。
それから。
男の私は化粧を全否定していましたが
その見方の一方的過ぎることを
悟らせていただきました。
女性が美 -
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浅川梨花の高校時代の彼氏、由比謙治と高校時代の親友町田沙紀の結婚招待状が届きショックを受ける現在の梨花と、高校時代の過去の話が代わる代わる出てくる書き方が切なくて、はがゆかった
。些細なことですれ違って別れただけで喧嘩別れなわけではなかったからこそ、過去を思い出して悲しくなったり虚しくなる梨花の気持ちがわかったし、疎遠になってたのは自分だけなのかと思い詰めるのもわかるなぁ。
最後の、高校時代のリレーのシーンがみんなが一生懸命で、みんなが応援して、みんなで頑張って、みんなで笑って、、、青春っていいなとうるっときた。
飛鳥井さんの描写はいつも綺麗で繊細で優しくて、思いやる気持ちが暖かかくて好き。 -
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最近ハマっている飛鳥井千砂さん。美人で何事にも妥協しない完璧主義の姉・園と、冷静で大人っぽくて普通な高校生の弟・行を中心としたお話。題名の『はるがいったら』の『はる』は春に2人が拾った犬、ハルのことだった。
起承転結があるお話ではない、ごくごく普通な日常のお話なのにすごく好きな空気感だった。特に、行のような真っ直ぐで優しい青年の考え方が好きなんだよなぁ。真面目だけど、決してつまんないやつではない、魅力的な青年。老犬のハルを介護するとことか、自分の犬だから当たり前っていうその当たり前のことを当たり前に出来ることが凄いいいんだよね。好きだなぁ。
姉の園は綺麗だしさっぱりしていて好きだったから、変な -
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久しぶりの飛鳥井さん。
こちらは第18回小説すばる新人賞受賞作なんですね。
毎回感じる「わかるよわかる」というこの感じ。わかるからこそチクッと胸が痛いところもあれば、なんだか懐かしく思えるところもあって、改めて好きだなあと思いました。
物語の中心は、完璧主義な姉と病弱な弟、そして老犬ハル。
描かれているのは何気ない日常なんですが、飛鳥井さんの瑞々しい感性でもって切り取られた世界は、何だかかけがえのない大切な日々に映ります。
写真を見ても、小説を読んでも感じることですが、「ああ、この人には世界がこんな風に見えているんだな」という感動がこみ上げてきます。
登場人物でいえば、私は園が好きです。