藤原伊織のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大好きな作家です。
本当に惜しいことに、2007年に既にお亡くなりになられております。
この作品は、亡くなられる直前に出版された短編(中編)集です。
解説を、これも好きな小池真理子氏が書かれております。
この解説もまた良い。
これだけで一編の小説というか、弔辞というか、そんなかんじになっております。
なにかと縁のあるお二方で、伊織氏が亡くなる前に、『デート』と称して二人で飲みに行っていたということです。
なんだかあまりにも美しすぎて泣けてきてしまいました。
で、肝心の作品。
なんとなく静かな語り口のなかで、大人のオトコの激情が、かなり抑えた文体で描かれております。
どうしようもない状況を、そ -
Posted by ブクログ
第41回江戸川乱歩賞、第114回直木賞を受賞した『テロリストのパラソル』の著者・藤原伊織の受賞後初作品。
かつては優秀なデザイナーだった秋山は、妻を亡くして以降仕事もせず変化の乏しい「つるつるのプラスチックみたいに平板な生活」を送っていた。そこへ現れるかつての上司。彼は500万円を一晩で捨てる手助けを依頼してきてーー
ゴッホがアルル時代に描いた幻の8枚目の「ひまわり」を巡る、ハードボイルドミステリ。
文章が上手いし、面白さにも安定感がある。夢中になって読める作品だった。
テロパラの時もそうだったけれど、伊織ちゃんの活写する脇役はずいぶん魅力的。本作でいうなら武道の達人で同性愛者のマネージャー -
Posted by ブクログ
「てのひらの闇」藤原伊織
現代ハードボイルドの旗手ですね。イメージカラーはライトブルー。
主人公は有名飲料会社の課長、と見せかけて例のごとく過去のある中年の男。
今回も藤原伊織ワールド全開。主人公かっこよすぎです。
現実にはこんな渋いオジサンはいないだろうなぁ、って思うくらいのキャラクタライズがいいんだよなあ。
まぁ都合良く事が運ぶのは目をつぶるとして・・・。
題名の通り、都会の裏で暗躍する登場人物達、暗く密やかなトーンが第一印象ではあるんですが。
クライマックスの首都高での夜明けが映像的というかなんというか。一番綺麗なシーンだと思ったのでライトブルーです。
安定感と完成 -
Posted by ブクログ
ある夜、パチンコからの帰り道、達夫は頭の中で、奇妙な羽音を聴いた。はじめは空耳と思った主人公だったが、とつぜん自分の意に反して指が動き、くすねてきたパチンコ玉を、弾丸のような勢いで弾き飛ばした。
自分の頭のなかに寄生しているという、シラヒゲと名乗った蚊トンボとの、奇妙な共同生活は、そんなふうに始まった。
シラヒゲがもたらしたその能力をつかって、暴力沙汰にまきこまれた知人を助けたことをきっかけに、達夫はやがて、裏社会のとある事件に巻き込まれ、暴力団と本格的に対決する事態になっていくが……
ストイックで男気のある主人公、ハードボイルドな展開、暴力、やくざ等々、藤原さんのほかの作品群と共通 -
Posted by ブクログ
主人公の本間は、ビリヤードのネットゲームで知り合った二十歳の女性・朝川みのりと、不思議な縁があって、直接会って話をし、仕事を紹介することになる。
すこし世間知らずなところのあるみのりは、しかし聡明で、落ち着いた不思議な魅力があった。本間はそれまで誰にも話したことのなかった、幼い頃に父親から受けた巧妙で陰湿な虐待を、みのりに打ち明ける。
それからしばらくの間は、特別に会うこともなく、ときどきみのりから近況報告のメールが来るだけの関係だった二人だが、やがて二人ともが奇妙なストーカーに付けねらわれ始めて……
藤原伊織さんの遺作です。闘病生活の中でつづられた連作短編集。完結を待たずして、藤原