藤原伊織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者の乱歩賞&直木賞ダブル受賞の代表作「テロリストのパラソル」を読んだのは10数年前のことです、当時は志水辰夫、原寮、船戸与一などハードボイルド&冒険&アクションを好んで読んでました。その中でもテロリスト~はキャラクター、ストーリー、ミステリ要素全てが一体となって、正に白眉の出来と認識してました。残念ながら2007年に逝かれており著作もそれほど多くはないものの、日本のハードボイルドに大きな足跡を残されておりファンも多いのではないかと思います。
ずいぶん時間が経ってから今作を読むこととなりました、荒筋としては…
愛する妻が妊娠を隠したまま自殺を遂げた後、仕事を捨て無為な日々を過ごしていた主人公秋山秋二。ある夜かつての上司から奇妙な依頼を受ける、「カジノで500万を負けてくれ」渋々了承したものの地下カジノで死んだ妻英子とそっくりな女と出会ったことにより彼の周囲が突然騒がしくなってきて…
こんなカンジです。まず自殺した妻の妊娠という謎があり、主人公の現在過去が語られていくことにより、自殺のなぜ?が大きく提示されます。そうこうしてるうちにゴッホの幻の名画「ひまわり」に妻が関わっていたことが明らかになり、妻の秘密とゴッホの「ひまわり」をめぐって物語は加速していきます。
ジャンルでいえばハードボイルドなので主人公秋山の一人称で語られていき、読者は明らかになる真実を主人公と共有しつつ終盤へ向かいます。ただ妻の死後無為な日々を過ごすだけの彼が、高校時代は油彩に天才的才能があったりとか、ギャンブルにおいて天才的なカンの冴えがあったりとか、妻の死という現実から逃げた先のアメリカで射撃の技術を得ていたとか…都合よすぎるんじゃない?とも思えるものの、描き方が巧みですんなり入り込んでいけます。亡き妻そっくりな女と出会ったことから始まる記憶のフラッシュバックという手法で、秋山の人物像を知ると同時に、妻との思い出が「ひまわり」の出自にまつわるヒントになっていき、さらに彼の無為な日常、無気力が、徐々にアクティブに真相を求めていく姿に変化していくところが小気味よいです。
幻の「ひまわり」に関しては、よく日本の作家さんが海外の名画をここまで物語に組み込んだな!と驚きです。古今東西美術工芸品が物語の中核を担うアイテムとして登場する傑作は多いと思いますが、西洋美術に関してはやはり海外モノに及ばず、という既成概念を完全に払拭したのではないかと思います。自分自身美術に詳しい訳ではありませんが、物語の中で完全に成立していました。事実はどうあれ相当な勉強をされて書き上げたのだろうと思います。
ラストには切ないエンディングが待ってました、やはりこれがハードボイルドなんだなぁ…感慨ひとしおでした。 -
Posted by ブクログ
大好きな作家です。
本当に惜しいことに、2007年に既にお亡くなりになられております。
この作品は、亡くなられる直前に出版された短編(中編)集です。
解説を、これも好きな小池真理子氏が書かれております。
この解説もまた良い。
これだけで一編の小説というか、弔辞というか、そんなかんじになっております。
なにかと縁のあるお二方で、伊織氏が亡くなる前に、『デート』と称して二人で飲みに行っていたということです。
なんだかあまりにも美しすぎて泣けてきてしまいました。
で、肝心の作品。
なんとなく静かな語り口のなかで、大人のオトコの激情が、かなり抑えた文体で描かれております。
どうしようもない状況を、それでもグッと我慢して、だけどそれぞれの行動で自分の哲学を語る。
う~~~ん、渋い!
ハードボイルドの原点ですね。
成功した画家が個展に展示した絵を目茶目茶にされ、さらにまた脅迫が…。
それを何故か画家は軽く受け止め、更に何か考えがあるようだが、画家には何があったのか…?
『ダナエ』という聞きなれない言葉は一体何なのか?
複雑な関係の姉と弟と、彼らに付きまとう影。
『まぼろしの虹』とは、何なのか?
母親の不倫相手のオトコの別のオンナの背景とは…??
『水母』。昔のオンナの展示会に立ち寄った元敏腕CDの選択とは何か?
それぞれ、渾身の作品群です。
この短編集と同じ系統では稲見一良っていう、やはりお亡くなりになられた方の作品があります。
この人たちみたいな足跡を遺したいものです。
合掌。 -
Posted by ブクログ
第41回江戸川乱歩賞、第114回直木賞を受賞した『テロリストのパラソル』の著者・藤原伊織の受賞後初作品。
かつては優秀なデザイナーだった秋山は、妻を亡くして以降仕事もせず変化の乏しい「つるつるのプラスチックみたいに平板な生活」を送っていた。そこへ現れるかつての上司。彼は500万円を一晩で捨てる手助けを依頼してきてーー
ゴッホがアルル時代に描いた幻の8枚目の「ひまわり」を巡る、ハードボイルドミステリ。
文章が上手いし、面白さにも安定感がある。夢中になって読める作品だった。
テロパラの時もそうだったけれど、伊織ちゃんの活写する脇役はずいぶん魅力的。本作でいうなら武道の達人で同性愛者のマネージャー・原田が良い味出してる。
本当に早逝が惜しまれる作家。他の作品も読んでみようかな。