あらすじ
惜しまれつつ逝った著者、最後の長篇
堀江の無二の友人・柿島が殺された。謎に満ちた死に疑問を持った堀江は調査に乗り出す。病床の著者が最後までこだわった傑作長篇
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大事に思う人が死んでしまったから、その原因を調べる。それは「てのひらの闇」と同じだが、今回はさらにもう1人が続いてしまった。
「もう1人」と思うのは、私の感想の書き方のせいであり、実際は他にもいる。こういった考え方の違い、誰をどのくらい大事だと思うかの違いから犯罪が起こったりするのかもしれないと気づいた。
気をつけたい、とは思うが、誰をどのくらい大事だと思うかは、気をつけるという問題ではないので困る。
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ー 承っております、 こちらへ。そういって案内されたテーブルは表面が磨きあげられた黒い大理石で、そこから間接照明でほの明るい周囲に目をやると、一種の感慨が訪れた。
この国のてっペんにある階層の富を吸収するシステム。それはいかなるかたちでいかに存在すべきか、しかるべき立場の人間の探究心を満足させるに足る材料を、周りの内装が完壁なかたちで提供していたからである。べつの言い方をするなら、私にとっては居心地がさほどいいとはいえなかったということだ。 ー
藤原伊織の遺作。
このシリーズは続いて欲しかった。ここで終わりだなんて悲しすぎる。まだまだ物語るべきものがあったはずなのに…。
しかも、なんとも悲しい終わり方。途中までしか加筆・改稿できなかったようだから、本当はもっと終わり方も工夫したかったのではないかと思われる。
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親友の柿島が死んだ――。とおりすがりの若者たちと思わしき連中からの暴行が行き過ぎた結果、意識不明となって入院していた柿島は、一度は助かると思われたにもかかわらず、容態が急変。あっけなく逝ってしまった。その報を受けた主人公・堀江は、警察に煙たがられるのも一向にかまわず、独力で犯人を捜し始める。はじめはただのオヤジ狩りだと思われていた事件は、調べるにつれて妙な点が目立ち始めて……
やっぱり藤原さんの小説はいい……!
エンターテイメント色の強い作品にもいろいろありますし、大衆向けのスナック菓子のような、軽い娯楽として楽しめるチープな美味しさの小説も、それはそれで大好きなんですけども、藤原さんの小説はそういうのとちがうよさ……なんだろう、上質な娯楽、贅沢品。日常の嗜好品というよりも、お気に入りの喫茶店で美味しいコーヒーを飲む贅沢な時間っていう感じ。(へんなたとえでごめんなさい……)
ハードボイルド! アクションや暴力シーンもあるんだけど、全編を通して流れている、親しい友人を悼む思いが、物語を引き締めています。
藤原さんの描く男性主人公は、ストイックで頭が切れて、仕事ができて腕っ節が強くて女と酒に弱いです。そしてそこがいい……!
今回、脇役もとっても魅力的。てのひらの闇で出てきた素敵な女性陣に加えて、新登場の三上社長というオジサンが、すっごくチャーミング。
いままで読んだ藤原さんの著作の中で、一、二を競うくらいに好きです。
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帯に「藤原伊織、最後の長編小説」とあって、ああ本当に亡くなってしまったのだなと改めて思いました。もっとたくさん書いてほしかった。「人は二度死ぬ、二度目の死は人に忘れられたとき」といいますが、作家は作品が読まれ続ける限り二度目の死を迎えることはないのですね。
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藤原伊織氏の作品は主人公が本当にかっこいい。この作品の校正の途中で亡くなったらしく、途中から文章が藤原氏にしては粗い印象を実際に受けた。でも、キャラもストーリーも魅力的で読み始めたら続きが気になって止まらん。大きなトリックがある訳でもないけど、サスペンスとしてオススメです。
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ああ、そうか、もう、去る5月17日で3周忌なんだわ、と、平積みにしてある本書を手にとって、しみじみ感慨深げにつぶやいてしまいました。
巻末のエッセイで、我が逢坂剛が、「いおりんは・・・」「いおりんが・・・」と、共に直木三十五賞をとった同じ大手広告会社繋がりもあって、親しみを込めた愛称で呼んで懐古しているのを読んで、もうダメ、一気にドッと涙があふれてきてしまいました。
書店の中で、周りの人も怪訝そうな顔をして遠ざかる気配がします、もう、格好悪いったらありません。
確かに、これが最期の小説でした。何度読んだかわかりません。
『てのひらの闇』と本書を、これからも何度も何度も読む自分の姿を想像しながら、それはそれで至福の時に違いありませんが、でも、どうにもならないことながら、今さらながら59歳の死は無念でなりません。
あっ、突然ですが、ここで唐突に思い浮かびました。
ご本人にはとんでもないとばっちりですが、原寮さまにおかれましては、沢崎シリーズの第2作を、確か2008年頃に出されるご予定でしたが、いかがされましたのでしょうか!
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先々月に『てのひらの闇』を再読し、続編があると知り大型書店へ。10年前の刊行本だが、無事get。
話は前作の3年後。主人公堀江の親友柿島が、集団暴行で死んだ。犯人を探すべく、堀江は行動を起こす。
彼を助力するのは前作と同じく、かつての彼の部下大原真理。
さらに今作は、三上という「ファンキーなジジイ」が強力な助っ人に。この三上、上場企業の社長でありながら、頭はスキンヘッド。1450㏄のハーレーを乗り回す逸者、何と魅力的なキャラだろう。
事件の背景の一因に、流通業界ーコンビニとFC本部との関係などーの闇を絡ませ、時代を見据えた鋭い観察眼が生んだ質の高い作品となっている。
本作が、藤原伊織氏の最後の作品だというのはあまりにも惜しまれる。ご冥福を祈るとともに、第3弾を企画していたかもしれないと思うと、その作品が読めないことが残念至極。
現存作家の作品には稀ともいえるほどの見識と妙味に溢れ、重厚で読み応えのある藤原伊織氏の小説。
再読を含め、他の作品もこの機会に読んでみようかと思う。
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手のひらの闇の続編。
また癖のある魅力的な登場人物が登場。
大入道みたない三上。なみさんとねー・・・。
大原さんは、報われるのか報われないのか。何だかやきもきします。
まだまだシリーズとして読んでみたい作品だったのですが。合掌。
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これが最後の長編になるなんて。
こんなに早く亡くなるなんて思いもしなかった。好きな作家さんの1人で だいたいの作品を読んできたけど どれも良かった。
ほんとに残念です。
合掌。
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内容(「BOOK」データベースより)
飲料メーカーの宣伝部課長だった堀江の元同僚で親友の柿島が、夜の街中で集団暴行を受け死んだ。柿島の死に納得がいかない堀江は詳細を調べるうち、事件そのものに疑問を覚える。これは単なる“オヤジ狩り”ではなく、背景には柿島が最後に在籍した流通業界が絡んでいるのではないか―。著者最後の長篇。
敬愛する藤原伊織の遺作で、てのひらの闇の続編です。やはりアル中気味の主人公と彼をそれとなく慕う切れる元部下の美女。そして友の死の謎。伊織ハードボイルドに必要な物が過不足なく盛り込まれており、一層早い死が惜しまれる出来となっています。
今回は重厚な大企業の海坊主のような社長が、漢気溢れる登場をしてとても重要な役どころだったので、恐らくこの本は3を出す予定ではなかったかと推察されます。読みたかった、本当に読みたかったです。
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「人気出ちゃったから」の続編じゃないの?前回よりは期待できないなーと思いながら手に取るが、ストーリー性もさることなら、このハードボイルドな文章がいいんだよなと、話に引き込まれる。
前作から数年後の主人公、一人で会社を立ち上げ過ごしていたが、友人の死を知り背景を独自調査する。
フランチャイズの経営の裏側にも触れられていて、興味深い。
特に事件が終わってからの、バーでのラストが良い。
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本書も再読ですが、警察もの以外でしっかりとしたハードボイルド系作品を書く人は日本人ではな珍しいので、やっぱり貴重な作家だったと改めて実感しました。他に挙げるなら打海文三氏、東直己氏でしょうか。
打海氏もそうですが、夭逝してしまったのが残念でなりません。
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途中で本を閉じるのをためらいたくなる面白さでした。魅力的な登場人物、主人公の丁寧な言葉遣いと行動のギャップなどなど。読みおわったとき、堪能からくるため息がでました。最初の『手のひらの闇』の方が好みではありますが、こちらも大満足でした!
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てのひらの闇のその後の物語。親友を失った堀江が真実を求めて動き出す。相変わらずの主人公の痛快な行動が読んでいてワクワクする。なによりキャラの良さが目立つ。展開としては意外性は少ないしラストはちょっと残念な感じ。でも一番残念なのは作者がすでに他界している事だろう。
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てのひらの闇を読んでから読んだほうが良い作品。
犯人の犯罪に至る心境の描写が少ないので、なんで?と首をかしげてしまう。
アル中ハードボイルドの作品をもっと読みたかったのに、残念。
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「てのひらの闇」の続編です。
前作は続編が出るような話だと思えなかったのですが、こうなると主人公はすでに元サラリーマンっていう肩書ではなくなってます。
相変わらず魅力的な人がどんどん出てくるのですが、このシリーズもここで終わり。とても残念です。大原との仲が中途半端で終わってしまうのも残念。
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物語の奥深さやストーリーの繋がりは相変わらず秀逸で、ラストまで一気に引き込まれましたが、最後真犯人の動機だけが少々物足りなさを感じました。もちろん動機としてはあり得ますし、むしろ特異でなかったことがこの物語には合っているかのかもしれませんが、何となくもう少し違う動機を期待してしまっていました。
でも、私はやはり藤原伊織氏の描く男性社会が大好きです。
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最終的には救われない。この結果で殺された友人は浮かばれるのだろうか。
知らなくても良いこともあったのではなかろうかと。
業界の特殊事情なども絡めて話が進んでいくのはおもしろいが、本筋のほうがイマイチに感じてしまうのは、やっぱり登場人物の設定が気に入らないせいかも。
Posted by ブクログ
前作よりややトーンダウンしたかなあ。
ナミちゃんの結婚エピソードも唐突な感じだし、
大原女子がちょいと半端な感じだし…。
主人公のまとう、前作では魅力的だった虚脱感も今回は今ひとつな気が…