藤原伊織のレビュー一覧

  • てのひらの闇
    いろいろとできる人間ではある。喧嘩もできるし、人を庇う嘘も咄嗟でついたし、アナログとデジタルの一瞬の違いも見分けられた。
    だが、それらを「できる」と思うか「できてしまった」と思うかは人それぞれで、いつの場合でも、本人がどう思っているのかがすべてだと思う。

    だから、てのひらに闇があったってあなたはで...続きを読む
  • 名残り火
    大事に思う人が死んでしまったから、その原因を調べる。それは「てのひらの闇」と同じだが、今回はさらにもう1人が続いてしまった。

    「もう1人」と思うのは、私の感想の書き方のせいであり、実際は他にもいる。こういった考え方の違い、誰をどのくらい大事だと思うかの違いから犯罪が起こったりするのかもしれないと気...続きを読む
  • テロリストのパラソル
    無駄は1文字たりともない。

    人生の半分の逃亡生活は無駄ではなかったし、ここに書かれていること以上に読者が知らなければならないこともないのだと思う。なのに、「私も年をとったのだ」だけが2回繰り返されたのは、決して菊池の生活が無駄だったからではなく、それでも繰り返さざるを得ないほどに長すぎたのだと訴え...続きを読む
  • テロリストのパラソル
    全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。

    東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットド...続きを読む
  • 雪が降る
    前回読んだ表題作がかなり好みだったのでその作品も入った短編を読んだのだが、他の短編もめちゃくちゃ良かった。頭がしびれる作品が多く、特に「台風」と「紅の樹」が最高だった。前者は淡々と語られるモノローグとラストの余韻が素晴らしい。後者は純粋なヤクザものハードボイルド。これが傑作で、ありがちなプロットなが...続きを読む
  • テロリストのパラソル
    冷静で勘が冴えているが機械やテクノロジーに疎いバーテンの島村、頼りになる奇妙なやくざの浅井、若くして知性と行動力(それから魅力)を兼ね備えた塔子、ほかにも個性的で生き生きとしたキャラクターが、ハイテンポで展開していく物語を鮮やかに味付けしている。

    展開もハイテンポで目まぐるしく進み、線と線がつなが...続きを読む
  • テロリストのパラソル
    【2023年22冊目】
    読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!

    江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。

    のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複...続きを読む
  • テロリストのパラソル
    授賞式当時に読んだ本を再読。年月を感じさせないですね。
    主人公がとても魅力的。それが故に起こった悲劇。インテリヤクザさんも好印象でした。
  • テロリストのパラソル
    疾走感が心地よく一気読み。
    点と点がどんどん繋がっていく、後半の伏線回収は圧巻。
    登場人物が魅力的でした。
  • テロリストのパラソル
     '95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作! 
    評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。

     本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
     中年でくたびれたアル...続きを読む
  • テロリストのパラソル
    昔いつだったか一度手に取ったがほとんど読み進められなかった。
    身だしなみを整える為の場所として、
    主人公が「タツ」から
    デパートのトイレを勧められるシーンだけが何故か印象に残っていた。
    時代を経て自分も歳を重ねて味わえるようになっていた。
    90年代初めの空気が蘇る。
    文体がとにかくかっこいい。
  • テロリストのパラソル
    この『テロリストのパラソル』の冒頭数ページを読んだだけで「ああ、これは好きな小説だ」となりました。

    アル中の中年バーテンダーの島村は朝起きると、いつも通り公園に行きウイスキーをいれたカップを傾ける。そんな島村を見つめる一人の女の子。会話の流れから、女の子がバイオリニストを目指していることが分かり「...続きを読む
  • シリウスの道(下)
    最高のビジネス書。
    ブレない強い人たちと卑怯なクズたちの物語。
    それぞれの登場人物がこの後どうなるんだろう?と考えてしまう、余韻がすごくいい作品。
    その後をもっと書いて欲しい、と思うところで終わっているのがいいんだろうな。
  • 名残り火
    ー 承っております、 こちらへ。そういって案内されたテーブルは表面が磨きあげられた黒い大理石で、そこから間接照明でほの明るい周囲に目をやると、一種の感慨が訪れた。

    この国のてっペんにある階層の富を吸収するシステム。それはいかなるかたちでいかに存在すべきか、しかるべき立場の人間の探究心を満足させるに...続きを読む
  • てのひらの闇
    ー そうだ。考えるのはさきでいい。二十年、サラリーマンをやってきた。いつだって、考えるのがさきだった。考えなければ、生きていけなかった。そうでないときは、身体が動いていた。息つく暇がなかったのだ。疲労のすこしずつ溜まっていく生活が、この環状線みたいにずっとつづいた。沼の底の泥みたいに知らないうちに溜...続きを読む
  • 雪が降る
    「書店グループNET21」の今年の文庫フェア『まちの本屋
    のお客さんに聞いた 俺の一冊・私の一冊』の中で、40代
    の読者がオススメに挙げていたので読んでみた一冊。

    ハードボイルド、ユーモア、恋愛、ハートウォーミングなど
    ジャンルの異なる短編が6つ収められていて、本当に同じ
    作家が書いたの...続きを読む
  • 雪が降る
    台風
    切ないなぁ こういう話。
    兵藤さん どうしてるのかなぁ。
    ピアノは無理でも ビリヤードは出来てるかなぁ。
    生きててくれと願うのは酷かなぁ。
    卓也は明子と結婚したんだね。驚いた。
    戻って見たら 5歳くらいしか違わないんだもんね。
    それもアリか。
    どうしても学生時代って ひとつ歳が違うだけでも す...続きを読む
  • 蚊トンボ白鬚の冒険(上)
    ものすごく不自然な設定なのに 読み出すとすんなりこの世界に入れる。不思議。
    題名が 違ったら もっと早く読んでただろうなぁ。残念。
    達夫 めちゃカッコいい。
    親方もめちゃカッコいい。
    あと瀬川もめちゃカッコいい。
    みんな ハードボイルドだなぁ。
  • 名残り火
    シリーズ化するつもりだったのだろうと思えるラスト。まさかのナミちゃん、登場人物たちのその後が気になります
  • 遊戯
    これでほんとに最後なんだね。全部読んでたつもりでいたけど これを見つけた時のうれしさ。ちょっと勿体無い気がして 眠らせてたけど ついに読んじゃった。
    面白かった。勿体無いと思いつつ 引き込まれ一気に読んじゃった。やっぱりこのひとの書くものすきだなぁ。優しくて。
    たまたまテロリストのパラソルを読んで ...続きを読む