藤原伊織のレビュー一覧

  • ダナエ

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    読み直し。
    本文は言うまでもなく小池真理子さんの解説も秀逸で読み終わって心が満たされるような、空っぽになるような不思議な感覚になる。言葉に表せない静かに燃えている登場人物の感情が文字から溢れ出ている感じがして、本を読んでいると言うよりむしろ人物と対話している気持ちになれる何回読んでも飽きない作品。

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    2025年10月19日
  • 雪が降る

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    短編集ですが、質の良いハードボイルド作品が複数話収録されて、読み応えがありました。
    他の書籍と関連があったり、これまでとは違う一面のものもあったりと、ある意味、非常に贅沢な一作だと思いました。
    読んでいる時に未読の書籍を読みたくなるだけでなく、読み終えてからも既読の書籍も読み返したくなりました。

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    2025年10月19日
  • 雪が降る

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    ネタバレ

    表題作『雪が降る』
    男同士でネクタイを結ぶシーンは本当に作者の粋なユーモアを感じさせる。
    かなり凝っていて丁寧な作品。よく短編でまとめあげられるなと思う。
    雪が降ることの意味について。
    まず、アダモの楽曲名であり、歌詞の意味はおそらく雪の日に待ち合わせで相手が来ないことを嘆く歌だろう。
    陽子のメールのタイトルであり、息子の高橋道夫から主人公志村へと向けたメールのタイトルでもある。
    雪が降ったことで志村と陽子は一緒のホテルに泊まることになる。
    そこで、陽子は何を思ったか? 「人はいっぺんにおとなになることもある。」
    少しずつではなく、とある出来事がきっかけで、大きく気持ちに変化がついてしまうとい

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    2025年09月11日
  • テロリストのパラソル

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    ネタバレ

    他の人も書かれていますが、ほんの数頁で引き込まれました。
    物語の重要なカギにもなる公園でのやり取り(本文より引用)
    「神様についてお話ししませんか」と彼はいった。「申しわけないが、いま仕事中なんでね」「仕事? なんの」「これだよ」酒瓶をふった。「プロの酔っ払いでね」

    ・・・もう、これだけで面白いの確定です。

    結末での主人公の「私たちは世代で生きてきたんじゃない。個人で生きてきたんだ」、この台詞が全てです。
    出版当時に「乱歩賞と直木賞、初のダブル受賞作は?」とアタック25で児玉清さんが出題されていて、とりあえず読んでみた記憶が有ります。
    当時、自分にはそこまで響かなかった物語が今回の再読では

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    2025年09月10日
  • テロリストのパラソル

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    1995年の大ベストセラー小説。当時の日本で、こんなに凄いハードボイルド小説が書かれていたとは知らなかった。主人公やヒロインのキャラクタ造詣といい、脇を固めるヤクザやホームレスの物語といい、隙がない。大胆に心の内をブチまける短歌という詩型をプロットに組み込んだのもユニークで再読に耐える傑作。

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    2025年07月19日
  • テロリストのパラソル

    購入済み

    30年以上前に文庫本で読んだけど、先日「シリウスの道」を読んでいて(浅井)が出てきたので、彼がどんな人物だったか思い出したくて再度購入。
    藤原伊織さんの作品に出てくる人物はどれも個性的で魅力的で大好きです。
    そういえば、この本読んだあと真似してホットドッグ作って食べたのが良い想い出です(笑)

    #カッコいい

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    2025年02月28日
  • テロリストのパラソル

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    一気読みしてしまった。
    言葉遣いといい表現といい行動といい、全く関わったことない人種だらけなのに、想像できてしまった。それにしても割とハイコンテキストな会話が多くてみんな頭良い。
    ストーリーは読めそうで読めない展開が続きウズウズしてるとラスト十数ページで全ての伏線を回収してきた。すっきりした。

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    2025年01月18日
  • シリウスの道(下)

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    知らない広告業界を舞台にしたハードボイルド作品。
    人が描かれていて面白かった。
    『テロリストのパラソル』との繋がりも良かったんじゃないかな。

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    2024年11月13日
  • テロリストのパラソル

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    この小説の重要なキーワードは「偶然」である様に思った。新宿で起きた爆破テロの背景には様々な「偶然」が絡まっていて、それらをパズルのように組み合わせていくことによって犯人へと辿り着く構図がとても面白かった。

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    2024年07月30日
  • 名残り火

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    大事に思う人が死んでしまったから、その原因を調べる。それは「てのひらの闇」と同じだが、今回はさらにもう1人が続いてしまった。

    「もう1人」と思うのは、私の感想の書き方のせいであり、実際は他にもいる。こういった考え方の違い、誰をどのくらい大事だと思うかの違いから犯罪が起こったりするのかもしれないと気づいた。

    気をつけたい、とは思うが、誰をどのくらい大事だと思うかは、気をつけるという問題ではないので困る。

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    2024年02月05日
  • てのひらの闇

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    いろいろとできる人間ではある。喧嘩もできるし、人を庇う嘘も咄嗟でついたし、アナログとデジタルの一瞬の違いも見分けられた。
    だが、それらを「できる」と思うか「できてしまった」と思うかは人それぞれで、いつの場合でも、本人がどう思っているのかがすべてだと思う。

    だから、てのひらに闇があったってあなたはできることがいろいろあってすごいねなどと他人を評価してはいけないのだろうと思う。
    本人は、いろいろできるかもしれないが自分のてのひらには闇があるのだと思っているかもしれず、そのどちらなのかは簡単に知れないと思うからである。

    そういう探りを入れず、興味もなく、自分がしたいからこうすると行動するのは、関

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    2024年02月05日
  • テロリストのパラソル

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    無駄は1文字たりともない。

    人生の半分の逃亡生活は無駄ではなかったし、ここに書かれていること以上に読者が知らなければならないこともないのだと思う。なのに、「私も年をとったのだ」だけが2回繰り返されたのは、決して菊池の生活が無駄だったからではなく、それでも繰り返さざるを得ないほどに長すぎたのだと訴えているからだと思う。

    それほどに長い「習慣」は知りたくはない。だが、読者は知るべきだった。だからこそ繰り返された言葉なのだろうと思う。

    そして、「私はあやまりを口にした」のあやまりとは、と考える。謝りであり、誤りでもあると書かれているように思った。繰り返しとは逆に、一度で2つを伝えたのだと思う。

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    2024年02月01日
  • テロリストのパラソル

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    全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。

    東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットドッグしか出さないという主人公。
    脇を固める登場人物たちもかっこいい。

    乱歩賞新刊、数ヶ月後に受賞する直木賞は発表前という段階で読んで以来ずっと、本棚のお気に入りスペースに鎮座ましましている名作です。

    昭和と平成初期のハードボイルドを感じてみたい方は是非。

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    2023年09月24日
  • 雪が降る

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    前回読んだ表題作がかなり好みだったのでその作品も入った短編を読んだのだが、他の短編もめちゃくちゃ良かった。頭がしびれる作品が多く、特に「台風」と「紅の樹」が最高だった。前者は淡々と語られるモノローグとラストの余韻が素晴らしい。後者は純粋なヤクザものハードボイルド。これが傑作で、ありがちなプロットながら台詞まわしがとことんに粋。それがうすら寒くならずグッとくるのは藤原さんの余計なことを書かない文章に見事にマッチしているからだと思う。まだ半年あるが今年のベスト短編集はこれで決まりだ。

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    2023年07月04日
  • テロリストのパラソル

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    ネタバレ

    冷静で勘が冴えているが機械やテクノロジーに疎いバーテンの島村、頼りになる奇妙なやくざの浅井、若くして知性と行動力(それから魅力)を兼ね備えた塔子、ほかにも個性的で生き生きとしたキャラクターが、ハイテンポで展開していく物語を鮮やかに味付けしている。

    展開もハイテンポで目まぐるしく進み、線と線がつながって新たな線が浮かんでくる。島村と共に新宿を駆け回って謎を解いていくような感覚で読めた。

    クライマックスで島村と桑井が出会う場面。それまで物語のキーパーソンとして舞台装置的な印象であった優子が、桑井との会話によって一気に人間味を帯びてくる。島村との関係、桑井の絶望、優子の涙のわけ、NYでのふたり、

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    2023年06月15日
  • テロリストのパラソル

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    【2023年22冊目】
    読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!

    江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。

    のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複雑化していき、途中で相関図書いて整理しつつ、結末がどうなるか全然わからなかったので、最後までドキドキしながら読み切りました。

    「私」の受け答えがいちいちかっこよすぎる、あと頭が切れるのと同じくらいダメっぷりが光る人間味が良すぎました。

    あと、あの、浅井ー!浅井かっこよすぎるでしょー!途中から浅井

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    2023年02月05日
  • テロリストのパラソル

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    授賞式当時に読んだ本を再読。年月を感じさせないですね。
    主人公がとても魅力的。それが故に起こった悲劇。インテリヤクザさんも好印象でした。

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    2022年10月07日
  • テロリストのパラソル

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    疾走感が心地よく一気読み。
    点と点がどんどん繋がっていく、後半の伏線回収は圧巻。
    登場人物が魅力的でした。

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    2022年10月02日
  • テロリストのパラソル

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     '95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作! 
    評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。

     本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
     中年でくたびれたアル中のバーテンの主人公を始め、他の登場人物も個性が際立っていて、その設定にも感心します。
     ストーリーも、客観的で簡潔な描写が淡々と展開され、どんどん引き込まれます。ミステリーを超越し、他のハードボイルドからも一線を画している気がします。
     最後は怒涛の驚愕の連続でしたが、

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    2022年08月07日
  • 雪が降る

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    藤原伊織『雪が降る』角川文庫。

    最早、絶滅危惧種とっなった男らしい男の生き様を描いた6編を収録した短編集。男女平等だとかLGBTだとかまるで権利を勝ち取ることが正義というような輩ばかりの時代にはそぐわない作品である。昔はこれが当たり前ということがどんどん否定されていく生き難い世の中にこそ読むべき短編集だと思う。

    『台風』。深みのある短編。人生は後悔と苦しみの連続なのかも知れない。幸せな思い出はいつの間にか霞んでしまう。台風のある日、会社でかつての部下が起こした傷害事件を切っ掛けに吉井卓也は苦い過去を思い出す。★★★★★

    『雪が降る』。表題作。人生で外れ籤ばかりを引いて来た男の再生の物語。

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    2022年01月03日