あらすじ
著者の新たな到達点を示す長篇ハードボイルド
20年前に起きたテレビCMの事故が、二人の男の運命を変えた。男は、もう一人の男の死の謎を解くべく孤独な戦いに身を投じる……
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Posted by ブクログ
いろいろとできる人間ではある。喧嘩もできるし、人を庇う嘘も咄嗟でついたし、アナログとデジタルの一瞬の違いも見分けられた。
だが、それらを「できる」と思うか「できてしまった」と思うかは人それぞれで、いつの場合でも、本人がどう思っているのかがすべてだと思う。
だから、てのひらに闇があったってあなたはできることがいろいろあってすごいねなどと他人を評価してはいけないのだろうと思う。
本人は、いろいろできるかもしれないが自分のてのひらには闇があるのだと思っているかもしれず、そのどちらなのかは簡単に知れないと思うからである。
そういう探りを入れず、興味もなく、自分がしたいからこうすると行動するのは、関わる人間からすれば邪魔だったり、好ましかったりするが、それもやはり人それぞれだろうと思う。たまたまこの主人公堀江は、少しの人間から気に入られたし、多くの人間から嫌われたようだった。
自分のしたいことが、相手にとっても歓迎されることだといいなと思いながら行動する。人間は思うことばかりだなと思うが、何も思わないなら人間ではないとも思う。
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ー そうだ。考えるのはさきでいい。二十年、サラリーマンをやってきた。いつだって、考えるのがさきだった。考えなければ、生きていけなかった。そうでないときは、身体が動いていた。息つく暇がなかったのだ。疲労のすこしずつ溜まっていく生活が、この環状線みたいにずっとつづいた。沼の底の泥みたいに知らないうちに溜まっていった。それがこの国の企業社会だった。最後に一度くらい、例外があってもいいだろう。この奇妙な状況ではじめて、そのことに気づいたのだった。 ー
訳ありサラリーマンが巻き込まれるハードボイルド!
藤原伊織の作品はどれも面白い。
今回もハラハラしたなぁ〜。
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主人公の堀江ははくたびれたアウトローっぽいおっちゃん・・・
しかし、うだうだしているのに知的でカッコイイ。また、堀江の部下の大原や
友人の柿島、バーの姉弟、やくざの親分など堀江の周りの人達も魅力的な人ばかりでほれぼれしちゃいます。
堀江の育った特殊な環境や
会長の自殺など非現実ぽいんですがストーリーと展開が面白く
あっという間に読んでしまいました。
Posted by ブクログ
「好きな作家」のところに『藤原伊織はもう出ないよね』と書いていたけど、文春文庫から「名残り火」が出ててこれに“てのひらの闇2”ってあったので、まずは未読の前作からと、新刊は平積みに戻してこちらを棚から引っ張り出して買って帰る。
知悉の広告の世界を舞台に、いつもの如く何かを背負いながら生きたいように生きる堀江、そしてまた周りには気の利いた美しい女性の部下と同期で出世競走の先を行きながらそれを笠に着ぬ上司。
登場人物の類型は変わらねれど、堀江の素性や自殺した会長との過去を小出しにしながら事件の輪郭をたどっていく展開は予想もつかせず、そして見事に収束する。
借り着の生活の中で過去に封印した筈のものに突き動かされる堀江はちょっと格好良すぎだけど、リストラの嵐吹き荒れるサラリーマン社会の悲哀が荒唐無稽な物語に現実感を与える。
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購入詳細不明。
2016/1/19〜1/26
13年ものの積読本にして、4年ぶりの藤原作品。
久しぶりに藤原流のハードボイルドを堪能した。そういえば最近ハードボイルドから遠ざかっていたが、やっぱり良いなあ。どうしても亡くなった作家さんの本は読むペースが落ちてしまうが、藤原作品もあと残りわずか。続編をこの間買ったが、早く読みたいような読みたくないような。
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面白かった。テロリストのパラソル以来に藤原伊織を読んだ。政治家の佐藤の処遇とCGの理由だけが自分にしっくりこなかった。カッコいい男といい女達が際立つ話だった。
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主人公が中年男性でサラリーマンであること、そしてその目線での物語の進行であること が、私が藤原伊織氏を好む大きな理由ですが、本書もまたサラリーマン社会での事件を主人公の目線や思考を丁寧に描きつつ解決へと進めて行く過程がとてもスリリングで引き込まれました。主人公の生い立ちは特異なものですが、そこに起因する思考も丁寧に書いてあるので、その点も含め私のお気に入りの作品です。
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夫の友人からお借りしました。
事件があって謎があって、それを追う展開なのですが、どんな方向性なのかが途中まで全然読めなくて、ワクワクが2割増しでした。。
主人公はくたびれた中年男性。アウトローっぽい雰囲気でいざとなると超強い。剣道の達人です。
こんなお決まりの人物像なのに、ニセモノっぽくなくてカッコイイんです。
他にも、主人公を影で見守る暴力団組長が登場したり、そもそも事件のキーマンである大企業の会長さんは経営手腕はイマイチだけど男気のある人物だったりで、とにかくいかにも、な人ばっかりが登場するんですけど、その世界観に馴染み不自然さがありません。
上質なハードボイルド小説っていいね、カッコイイ!と素直に思える作品でした。
Posted by ブクログ
タフで知的で大胆な主人公の企業サスペンス。
警察があまり絡まず、一介のしかし胆力のありそうなサラリーマンが曖昧な興味から謎を解明していく筋が他の小説の型から微妙に違い新鮮です。VTRをCMに起用してほしいとの会長の無茶な話に違和感をいだきながら読み進めて後半納得しつつ更に深い人間の絡みが顕になり、ヤクザとの大立ち回り等見所があり見所も多い。
登場人物それぞれの利害が上手くはまり練られたストーリーで一度読んだだけでは全て理解出来なそうです。
あとがきによると作者は電通の社員だったんですね。広告業界に精通した作者の知識が少し活かされています。
最終23章の爽やかなエンディングも好み。
Posted by ブクログ
まさかのハードボイルド路線。中盤から特命係長っぽくなってきた。できればそっちじゃない方で読みたかった。そっちいっちゃうとご都合主義が通っちゃうんだよね。
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直木賞作家、藤原伊織氏のミステリー。元電通社員だった頃に作家デビューしたそうで、広告代理店での経歴が活かされている。
主人公は飲料メーカーを自主退職することに決めた、中年の会社員。仕事はでき人望もあるが、奥さんに逃げられ、私生活はイマイチ。ある日、会社の会長に呼ばれ、彼が撮影したテープを社のCMにしたいと言われるが、次の日にその会長は自殺する。彼の死の真相を探る。
緻密で複雑な構成、ミステリーとしての完成度は非常に高い。読みやすく、内容と長さのバランスもちょうどいい。ちゃんと読者の裏をかくポイントもある。彼の本は「テロリストのパラソル」を読んだことがあるが、安定の面白さが期待できる。著者が早く亡くなってしまったのが残念である。
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この人の各小説はハードボイルドなのかな?
主人公がアウトローなのが多い気がする。
今回は元ヤクザ組長の息子、現大企業の課長(リストラ間近)が主人公で、入社するきっかけにもなった勤め先の会長の自殺を、退職までの個人的興味。で調べ始める。
という話。40すぎのオジサンなのにめっぽう強い。ヤクザ数人とやりあって勝てるくらい強い。
この人の文章は、話の内容に関係なく、読むのが楽。
Posted by ブクログ
昔でいうと硬派な主人公というセッティングが多い伊織氏の作品。文学小説とハードボイルドという両極端な性質を合わせ持つ作品。社会派のノンフィクション風でもある。
美しい作品だな、と思いましたが、解説の逢坂さんの言葉にある「高潔」に納得。高潔な作品でした。
任侠の世界、ビジネス的組織やサラリーマンの悲哀がリアルに描かれ、息を呑む転回でした。
どうやら続編があるようで、読むのが楽しみw
Posted by ブクログ
時間さえ潤沢にあれば、多分一気読みしていたであろうくらいストーリーに引き込まれる。
主人公の堀江が飲んだくれて、雨のなか路上で寝ているところから始まる物語。
というわけで、作中ほとんどずっと堀江は風邪をひき、高熱で朦朧としたまま謎を解き、大立ち回りをやってのけるのである。
なんで解熱剤を呑まないんだろう?
退職勧告に従いあと2週間で退社する予定の主人公堀江が、会長から直接呼び出され、偶然撮影した人命救助のビデオを自社CMとして使えないかと打診される。
宣伝部とはいえ、実際に広告を制作しているわけではないのでノウハウを知っているものがほとんどいない中、堀江は制作会社に勤務していたこともあり、プロの目でそのテープを見ることができる数少ない人間だった。
テープに係わる謎。
堀江と会長の中にある、過去の因縁とは?
そして、CMとしては使えないことを指摘した直後の会長の自殺。
生い立ちに秘密のある人物。
偶然のアクシデント。
過去の出来事が複雑に絡み合い、物語は大きく広がりを見せることもできるのだが、堀江の興味はただ1点。
なぜ会長は自殺しなければならなかったのか。
会長を自殺に追い込んだものを見つけるため、高熱でくらくらする身体で堀江は動き回る。
そうまでしなければならないどんな恩義があるのだろうか。
畳んだ風呂敷を拡げてみれば意外なつながりが次々と明かされて、途中で本を閉じるのが惜しいほど先が気になる。
だがしかし、決定的にキャラクターが都合よすぎ。
察しがよくて口の悪い、超絶技巧のバイクテクニックを持つ、たまたま入った六本木のバーのオーナー。20代(?)の女性。
その弟の、マイク・タイソンのようにガタイがよく、経済学、経営学の知識が抜群の17歳。
堀江の部下の大原。30代の既婚女性。
公私ともに堀江の面倒をみ、サポートをする。多少の恋愛感情あり。
大原の夫。
やり手のジャーナリスト。
同期の出世頭で事情通が、個人的な親しい友人。
読んでいて、彼らのでき過ぎっぷりに辟易する。
これがなければなあ。
日本のハードボイルドってなかなかにウェットで、男の美学というよりは義理人情が行動原理だったりするけど、そういうのって嫌いじゃない。
2週間の死闘を、一気読みで感じたかった。
Posted by ブクログ
面白かった。ハードボイルドという類の小説。主人公もその周辺の人もみんな共感できるいい感じ。ひとりぼっちのようで、実はみんなから愛されてる。
続編の名残り火もいつか読みたい。
Posted by ブクログ
・会社を辞める事にして、ほぼ有給消化のような期間での話で、辞める前に話が終る
・話の始めに風邪を引き、話が終る前にようやく快方
と言うまぁ変わったシュチエーションが面白い。しかも話もしっかり面白い。ハードボイルド系サスペンスかな。
今はサラリーマン、元ヤクザの息子という主人公が、会長に最後に頼まれた仕事を引き受け、そのプロジェクトを進めない方が良い良い提言、その後会長が自殺、理由を追う話。
リストラにあい、酔っぱらって地べたを這っているところから物語は始まるが、ハードボイルドも入りまた回りのキャラもよく、楽しく読める。
Posted by ブクログ
今回呼んだのは二回目。
あらためて感じたこと。
文章に無駄が無く綺麗。よみやすい。
キャラクターがみんな魅力的。
続編も続けて読んでみよう。
伊織さんの純文学系の作品が大好きですが、硬派なこの手の作品もやっぱり素敵。一人の作家とは思えないバラエティーさがすごい。
もう新作がでないことだけが残念。
Posted by ブクログ
「てのひらの闇」藤原伊織
現代ハードボイルドの旗手ですね。イメージカラーはライトブルー。
主人公は有名飲料会社の課長、と見せかけて例のごとく過去のある中年の男。
今回も藤原伊織ワールド全開。主人公かっこよすぎです。
現実にはこんな渋いオジサンはいないだろうなぁ、って思うくらいのキャラクタライズがいいんだよなあ。
まぁ都合良く事が運ぶのは目をつぶるとして・・・。
題名の通り、都会の裏で暗躍する登場人物達、暗く密やかなトーンが第一印象ではあるんですが。
クライマックスの首都高での夜明けが映像的というかなんというか。一番綺麗なシーンだと思ったのでライトブルーです。
安定感と完成度で文句なく星4つでした。
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主人公・堀江や坂崎の人物造詣は短編集「雪が降る」に収録された「紅の樹」がベースになっているのは明白だろう。コマーシャルビジネスの世界を舞台に様々な思惑が入り乱れ、主人公を取り巻く周囲の人間模様も多種多様。突っ込みどころもそれなりに多い作品ではあるが、海外作品ではお目に掛かれないジャパニーズ・ハードボイルドならではの人情劇やそれに伴う叙情感はやはり魅力的。ラストシーンの清々しさも特出すべき点だが、登場する女性陣が揃いも揃って男性陣にとって都合の良い人物設定で、時代性を考慮しても流石に違和感を禁じ得なかった。
Posted by ブクログ
任侠のかっこ良さとミステリが融合した作品だった。
人間の高潔さとは何か、少し理解出来た気がする。
加賀美母娘にはびっくりした。
確かに父のように接してくるとは言ってたけども本当に義父のつもりだったのか……!と思った。
そしてどれだけモテるんだ会長。
おもしろかった。
Posted by ブクログ
飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!!堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが…。
Posted by ブクログ
石崎会長の自殺とCGで作られたビデオテープをCMに起用しようとした訳をリストラ寸前の草臥れたサラリーマン・堀江が調べていくうちに、様々な人間関係と堀江の過去が明らかになるというストーリーは奥深くて面白いです。
ただ、『テロリストのパラソル』ほど疾走感がないのと、ハードボイルドにしてはややライトなところが残念です。
Posted by ブクログ
会長に呼び出されたその夜、会長が自殺した。CMビデオの謎。宣伝部課長堀江が死の理由を探る。非現実的だが主人公の設定がかっこいい。そして、周りの人もかっこいい。ただ、現実にいたらひくと思う 笑。高熱があるのに、数日間、薬も飲まず、歩き回り、酒を飲むし、暴力的だし。それインフルじゃね?みんな伝染るよ。と思いながら読んだ。坂崎がかっこよかった。
「頬に一滴、冷たいしずくの感触があった。」
Posted by ブクログ
さくっと読めるプチハードボイルド小説。始めの雰囲気からは想像付かない展開に進んでいき、ページを捲る手が止まらない。誰も彼もが結局はいい人過ぎるというか、魅力ある人物=理解力ある優しい人物になっている部分と、主人公のキャラが時折ぶれるところが若干気にはなったが、人物相関と展開が面白いので満足。
Posted by ブクログ
ハードボイルドミステリー。主人公の得体の知れなさに読み進めるうちに惹かれていきます。
前半がもたついているので挫けそうになるのがマイナスかな。
Posted by ブクログ
会社の会長の謎の死を追うサラリーマンの生い立ちは実はヤクザで…という話。孤立無援の普通のおっさんなのに、複数人をのすほどの腕力とテクニックで、職業とはいえ映像を少し調べるだけでどうやって撮ったのかがわかったり、行政に詳しかったりと博識なあたりは「テロリストのパラソル」と非常に似たキャラクター。
謎解きが主ではないものの、少しずつ少しずつ情報がもたらされ、その間をアクションがつなぐ形になっており、どんどん先を読み進めたくなる辺りは流石である。ただ、本作に関しては、情報が足りないまま押し切っている感がある。
ただし、最後がヤクザの社会の人のつながりや常識がどうのという話と、会社の経営がどうのという、どっちも結構読みにくい専門用語の基礎知識が必要な話で幕が切れ、エンディングも「あれ?」と思うものなので、その辺星を減らす。まあ、「テロリストのパラソル」みたいなハリウッドテキ終わり方よりは好きですが。
この人の文章は面白いと思うのだけど、次はもうちょっと違うパターンの主人公が見たい。
Posted by ブクログ
毎度毎度、若者の描写がおかしい気がするのですが、作者は元電通社員(当時はまだ在籍中で兼業作家)ということを考えると、その辺も計算づくなのかと思わされます。