大好きな作家です。
本当に惜しいことに、2007年に既にお亡くなりになられております。
この作品は、亡くなられる直前に出版された短編(中編)集です。
解説を、これも好きな小池真理子氏が書かれております。
この解説もまた良い。
これだけで一編の小説というか、弔辞というか、そんなかんじになっております。
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なにかと縁のあるお二方で、伊織氏が亡くなる前に、『デート』と称して二人で飲みに行っていたということです。
なんだかあまりにも美しすぎて泣けてきてしまいました。
で、肝心の作品。
なんとなく静かな語り口のなかで、大人のオトコの激情が、かなり抑えた文体で描かれております。
どうしようもない状況を、それでもグッと我慢して、だけどそれぞれの行動で自分の哲学を語る。
う~~~ん、渋い!
ハードボイルドの原点ですね。
成功した画家が個展に展示した絵を目茶目茶にされ、さらにまた脅迫が…。
それを何故か画家は軽く受け止め、更に何か考えがあるようだが、画家には何があったのか…?
『ダナエ』という聞きなれない言葉は一体何なのか?
複雑な関係の姉と弟と、彼らに付きまとう影。
『まぼろしの虹』とは、何なのか?
母親の不倫相手のオトコの別のオンナの背景とは…??
『水母』。昔のオンナの展示会に立ち寄った元敏腕CDの選択とは何か?
それぞれ、渾身の作品群です。
この短編集と同じ系統では稲見一良っていう、やはりお亡くなりになられた方の作品があります。
この人たちみたいな足跡を遺したいものです。
合掌。