藤原伊織のレビュー一覧
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七年前、妻が自殺した。自分以外の男の子どもを身ごもったまま。
妻を失って以来、それまでの事業からいっさい手を引き、めったに外出することもなく、ただひっそりと平板な毎日を生きていた主人公。そこに突然、昔の上司が奇妙な依頼を持ち込む。ある事情から五百万円のカネを処分してしまいたい、手を貸してくれ――
その奇妙な依頼に付き合った夜から、突然、主人公の周りに奇妙な連中が顔を出し始める。亡くした妻によく似た顔をした女性、経済界の裏の顔らしい老人、暴力団関係者。周到な、あるいは直接的な方法で、彼らは心当たりのない主人公から、あるものの所在を探り出そうとする。それは、ゴッホの知られざる遺作、もう一枚の -
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藤原伊織のこの短篇集には「驚き」があった。どの一篇にも、読み終える寸前のところに「驚き」が待っていた。六篇それぞれに異なる驚きが仕込まれていたのである。読み終わった直後、軽い眩暈のような虚無感に包まれ、物語を振り返った。会社組織の冷血さ、恋の儚さ二つ、むごたらしく悲惨なこと、やくざの帰結、夏のアルバイトで得たもの、が語られていた。いずれも人生の真実というべきものかもしれない。不思議だったのは、よい作品だと感じながらも小説の中に感情移入しなかったこと。スクリーンに映し出されたよくできたフィクションを自分は観ているのだという気分で読んでいた。しかし、それは悪い意味でいっているのではない。作為がみ
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ハードボイルドーって感じ.
登場人物が皆カッコイイ!ってのが一番の感想.
辰村は頑固で強気で切れ者.
立花は美人で仕事もできる女部長.
平野はデイトレーダーのアマプロ.
浅井は裏世界に精通する元やくざ.
そして戸塚.
政治家の息子でコネ入社でありながら,実は素直でまじめでグングン成長してる.
広告代理店での競合プレゼンを中心にしたお話で,
業界の細部が詳細に描かれている.
広告代理店ってもっと華やかな職場っていうイメージがあったけど,
そのイメージが完全に覆された.
残念だったのは競合プレゼンが一番大きなテーマなのに,
最後があっさりしすぎていること.
ミステリっぽい最後の最後のどんでん返 -
Posted by ブクログ
以前より気になっていた作家、藤原伊織。
ただ、なんとなく手にすることがなかったが、先月の訃報を聞き、読んでみることにした次第。
ハードボイルドという言葉の先入観が大きかったが読み始めると、会社という組織の話ということもあってか、意外に読みやすく、今まで読まなかったことが、悔やまれる。
主人公はもちろんのこと、登場人物の描写がわかりやすく、そして魅力的。
ただ、主人公の幼なじみが元アイドルで今は重役夫人とか、上野で似顔絵書きをしているとか、やや大層な気もしたが。。
個人的に、東京と大阪のそれぞれの舞台になる地域に縁があるので、それだけで親近感を持ちながら読めたように思う。
代