藤原伊織のレビュー一覧
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「てのひらの闇」藤原伊織
現代ハードボイルドの旗手ですね。イメージカラーはライトブルー。
主人公は有名飲料会社の課長、と見せかけて例のごとく過去のある中年の男。
今回も藤原伊織ワールド全開。主人公かっこよすぎです。
現実にはこんな渋いオジサンはいないだろうなぁ、って思うくらいのキャラクタライズがいいんだよなあ。
まぁ都合良く事が運ぶのは目をつぶるとして・・・。
題名の通り、都会の裏で暗躍する登場人物達、暗く密やかなトーンが第一印象ではあるんですが。
クライマックスの首都高での夜明けが映像的というかなんというか。一番綺麗なシーンだと思ったのでライトブルーです。
安定感と完成度で文句なく星4つでした。 -
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ある夜、パチンコからの帰り道、達夫は頭の中で、奇妙な羽音を聴いた。はじめは空耳と思った主人公だったが、とつぜん自分の意に反して指が動き、くすねてきたパチンコ玉を、弾丸のような勢いで弾き飛ばした。
自分の頭のなかに寄生しているという、シラヒゲと名乗った蚊トンボとの、奇妙な共同生活は、そんなふうに始まった。
シラヒゲがもたらしたその能力をつかって、暴力沙汰にまきこまれた知人を助けたことをきっかけに、達夫はやがて、裏社会のとある事件に巻き込まれ、暴力団と本格的に対決する事態になっていくが……
ストイックで男気のある主人公、ハードボイルドな展開、暴力、やくざ等々、藤原さんのほかの作品群と共通するポイントも多いのですが、大きく違う点はふたつ。主人公が20歳の青年と、ほかの作品に比べてぐっと若いこと。それから、蚊トンボが脳内に寄生して話しかけてくるようになる……というファンタジーな設定。
藤原さんが描かれる主人公は、ストイックで無鉄砲で、保身とは縁のないようなイメージがありますが、主人公が若いと、無鉄砲さのニュアンスが、またちょっと違いますね。ほかの作品の主人公たちの渋い魅力もいいですが、こういうのもいいなあ。
上下巻だったのですが、派手で勢いのある展開に飲み込まれ、一気に読みきりました。シラヒゲをはじめ、敵味方それぞれのキャラクターが魅力たっぷり。劇画的といっていいかどうか、リアリティよりも娯楽性を求めるならば文句なしに最高。解説にて藤原伊織さんご自身の評が紹介されていたとおり、まさにハードボイルド・ファンタジー。
私はすでにファン補正がはいっているかもしれませんし、奇抜な設定やいかにもフィクション的な展開が苦手という方には、強くはオススメできませんが、さておき、すごく面白かったです。
ところで、どうやら藤原伊織さんの既刊で私が未読だったのは、こちらが最後のようです。私は藤原さんがお亡くなりになったあとではまったファンなので、最初からこのときが来るのは分かっていたはずなのですが、なんていうか、すごく寂しいです。ファンに惜しまれながら去るというのは、作家さんの人生の幕としては一種、最高のかたちかもしれませんが、それにしても惜しまれます。 -
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主人公の本間は、ビリヤードのネットゲームで知り合った二十歳の女性・朝川みのりと、不思議な縁があって、直接会って話をし、仕事を紹介することになる。
すこし世間知らずなところのあるみのりは、しかし聡明で、落ち着いた不思議な魅力があった。本間はそれまで誰にも話したことのなかった、幼い頃に父親から受けた巧妙で陰湿な虐待を、みのりに打ち明ける。
それからしばらくの間は、特別に会うこともなく、ときどきみのりから近況報告のメールが来るだけの関係だった二人だが、やがて二人ともが奇妙なストーカーに付けねらわれ始めて……
藤原伊織さんの遺作です。闘病生活の中でつづられた連作短編集。完結を待たずして、藤原さんが喉頭癌で亡くなられたことが惜しまれます。このあと、どういう結末が待っていたんだろう。
色んな謎が、遺されたままになっているのだけれども、ひとつひとつの短編としても秀逸。クールな語りと、悲しくも美しいストーリーが、不思議な清涼感を読後に残します。 -
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七年前、妻が自殺した。自分以外の男の子どもを身ごもったまま。
妻を失って以来、それまでの事業からいっさい手を引き、めったに外出することもなく、ただひっそりと平板な毎日を生きていた主人公。そこに突然、昔の上司が奇妙な依頼を持ち込む。ある事情から五百万円のカネを処分してしまいたい、手を貸してくれ――
その奇妙な依頼に付き合った夜から、突然、主人公の周りに奇妙な連中が顔を出し始める。亡くした妻によく似た顔をした女性、経済界の裏の顔らしい老人、暴力団関係者。周到な、あるいは直接的な方法で、彼らは心当たりのない主人公から、あるものの所在を探り出そうとする。それは、ゴッホの知られざる遺作、もう一枚の「ひまわり」だった。
いや、よかったです。ハードボイルドものが好きな人には、かなりオススメ。リアリティがあるかというと、小説的すぎるというか格好良すぎるかもしれないけれども、そこがいいです。いかにも男の人が書く小説だなあという感じ。男の美学というか……
主人公は幼稚だ、性格が子どもだと、色んな人から度々言われています。たしかにそういう部分があって、大人げはないし、社会性が欠如しているのだけれども、その分男気や、皮肉な性格と頭の良さに見合わないような純粋さがあって、すごく魅力的。
悲哀と皮肉、一途な愛。『ダナエ』『テロリストのパラソル』のときも思ったけれど、小説世界にどっぷり漬かれる、濃密な空気があります。 -
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藤原伊織のこの短篇集には「驚き」があった。どの一篇にも、読み終える寸前のところに「驚き」が待っていた。六篇それぞれに異なる驚きが仕込まれていたのである。読み終わった直後、軽い眩暈のような虚無感に包まれ、物語を振り返った。会社組織の冷血さ、恋の儚さ二つ、むごたらしく悲惨なこと、やくざの帰結、夏のアルバイトで得たもの、が語られていた。いずれも人生の真実というべきものかもしれない。不思議だったのは、よい作品だと感じながらも小説の中に感情移入しなかったこと。スクリーンに映し出されたよくできたフィクションを自分は観ているのだという気分で読んでいた。しかし、それは悪い意味でいっているのではない。作為がみえる作品でありながらも、それが不快ではなく、むしろ作者の巧緻な創作力に深い感動を覚えていたのである。短篇小説は文字通り短いのだから、登場人物の内面外面を詳細に描写できない。舞台となる場所の雰囲気も綿密に描写する余裕はない。だから、短篇小説は長編小説より、作家の巧拙が明確に出やすいといえるかもしれない。そうだとすると、この六篇はいずれも藤原伊織の卓越した筆力を充分に湛えた、上質な短篇だといえる。情景が一瞬で頭の中に浮かび上がったのだから。
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ハードボイルドーって感じ.
登場人物が皆カッコイイ!ってのが一番の感想.
辰村は頑固で強気で切れ者.
立花は美人で仕事もできる女部長.
平野はデイトレーダーのアマプロ.
浅井は裏世界に精通する元やくざ.
そして戸塚.
政治家の息子でコネ入社でありながら,実は素直でまじめでグングン成長してる.
広告代理店での競合プレゼンを中心にしたお話で,
業界の細部が詳細に描かれている.
広告代理店ってもっと華やかな職場っていうイメージがあったけど,
そのイメージが完全に覆された.
残念だったのは競合プレゼンが一番大きなテーマなのに,
最後があっさりしすぎていること.
ミステリっぽい最後の最後のどんでん返しみたいなのを期待しちゃってただけに残念だった..
でも,グイグイ引き込まれる内容で,不自然な流れもなかったのでスッキリ読めた.
「テロリストのパラソル」が有名作らしいので,それも読んでみよう.