藤原伊織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ー 承っております、 こちらへ。そういって案内されたテーブルは表面が磨きあげられた黒い大理石で、そこから間接照明でほの明るい周囲に目をやると、一種の感慨が訪れた。
この国のてっペんにある階層の富を吸収するシステム。それはいかなるかたちでいかに存在すべきか、しかるべき立場の人間の探究心を満足させるに足る材料を、周りの内装が完壁なかたちで提供していたからである。べつの言い方をするなら、私にとっては居心地がさほどいいとはいえなかったということだ。 ー
藤原伊織の遺作。
このシリーズは続いて欲しかった。ここで終わりだなんて悲しすぎる。まだまだ物語るべきものがあったはずなのに…。
しかも、なんとも -
Posted by ブクログ
ー そうだ。考えるのはさきでいい。二十年、サラリーマンをやってきた。いつだって、考えるのがさきだった。考えなければ、生きていけなかった。そうでないときは、身体が動いていた。息つく暇がなかったのだ。疲労のすこしずつ溜まっていく生活が、この環状線みたいにずっとつづいた。沼の底の泥みたいに知らないうちに溜まっていった。それがこの国の企業社会だった。最後に一度くらい、例外があってもいいだろう。この奇妙な状況ではじめて、そのことに気づいたのだった。 ー
訳ありサラリーマンが巻き込まれるハードボイルド!
藤原伊織の作品はどれも面白い。
今回もハラハラしたなぁ〜。 -
Posted by ブクログ
「書店グループNET21」の今年の文庫フェア『まちの本屋
のお客さんに聞いた 俺の一冊・私の一冊』の中で、40代
の読者がオススメに挙げていたので読んでみた一冊。
ハードボイルド、ユーモア、恋愛、ハートウォーミングなど
ジャンルの異なる短編が6つ収められていて、本当に同じ
作家が書いたのかな、と思ってしまった。
特によかったのは企業小説と言える表題作『雪が降る』。
これにはしびれた。読み終えてしばらく動けなかった。
過去の痛みを引きずって、不器用ながらも通すべきスジは
通す。そんな魅力ある男達が奏でる物語は、痛い、切ない。
でも、ただ切ないだけではなくて、明日への希望 -
Posted by ブクログ
台風
切ないなぁ こういう話。
兵藤さん どうしてるのかなぁ。
ピアノは無理でも ビリヤードは出来てるかなぁ。
生きててくれと願うのは酷かなぁ。
卓也は明子と結婚したんだね。驚いた。
戻って見たら 5歳くらいしか違わないんだもんね。
それもアリか。
どうしても学生時代って ひとつ歳が違うだけでも すごく違うから もっと離れてるのかと思った。
オトナになれば 5歳くらい なんてことないもんね。
雪が降る
志村さんも高橋さんもカッコいいなぁ。藤原伊織が描くオトコは いつもカッコいい。
とばされるヒトがこんなにカッコよくていいの? 笑
紅の樹
これも切ないよなぁ。
遠山さん いいオトコだなぁ。 -
Posted by ブクログ
これでほんとに最後なんだね。全部読んでたつもりでいたけど これを見つけた時のうれしさ。ちょっと勿体無い気がして 眠らせてたけど ついに読んじゃった。
面白かった。勿体無いと思いつつ 引き込まれ一気に読んじゃった。やっぱりこのひとの書くものすきだなぁ。優しくて。
たまたまテロリストのパラソルを読んで 衝撃的に出会って それからずっと読んできたけど もう読めないなんて ほんと悲しい。なんでわたしの好きな作家さんって 早く亡くなる人多いんだろ。もともと次々書くタイプの人じゃなかったから もっともっと読みたい。もっと書いてーと思ってたけど ポツポツでもよかった。ポツポツ長く書き続けて欲しかった。
遊戯 -
Posted by ブクログ
「もし、それが事実なら世界の美術界が震撼する。伝説が修正される。 神話がもうひとつ誕生することになる。 」
天才画家ゴッホが残した「ひまわり」。数十億円は下らないだろうと言われている作品は隠された「もう1枚」があった。その「ひまわり」をめぐって争いを起こす者、巻き込まれる者、知らず関わっている者。
「ひまわりをめぐる争い」というとハードボイルドっぽいけど、実は本格ミステリーだった作品。伏線もどんでん返しもあります。
この作者の作品はストーリーは当然の事ながら、出てくるキャラクターが素敵。主人公格の冴えない中年男にバイリンガルの女の子以外にも、脇役までが魅力的。とにかくかっこいい原田に新 -
圧巻の文章力
今までいろーんな作家を読んできたけれど、藤原伊織さんは本当ずば抜けて文章が上手い。
この作品にただよう静けさ、哀しさ、その中にあるひとひらの情熱のようなモノトーンの世界に僕はあっさりはまってしまった。
これを読んだあとの数日のあいだに、藤原伊織さんの作品を全部買いそろえたのは良い思い出。もう新作が読めないのが残念で仕方ない。