あらすじ
ある土曜の朝、アル中のバーテン・島村は、新宿の公園で一日の最初のウイスキーを口にしていた。その時、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロ事件が発生。死傷者五十人以上。島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキー瓶を残してしまう。テロの犠牲者の中には、二十二年も音信不通の大学時代の友人が含まれていた。島村は容疑者として追われながらも、事件の真相に迫ろうとする――。小説史上に燦然と輝く、唯一の乱歩賞&直木賞ダブル受賞作!
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圧巻の文章力
今までいろーんな作家を読んできたけれど、藤原伊織さんは本当ずば抜けて文章が上手い。
この作品にただよう静けさ、哀しさ、その中にあるひとひらの情熱のようなモノトーンの世界に僕はあっさりはまってしまった。
これを読んだあとの数日のあいだに、藤原伊織さんの作品を全部買いそろえたのは良い思い出。もう新作が読めないのが残念で仕方ない。
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他の人も書かれていますが、ほんの数頁で引き込まれました。
物語の重要なカギにもなる公園でのやり取り(本文より引用)
「神様についてお話ししませんか」と彼はいった。「申しわけないが、いま仕事中なんでね」「仕事? なんの」「これだよ」酒瓶をふった。「プロの酔っ払いでね」
・・・もう、これだけで面白いの確定です。
結末での主人公の「私たちは世代で生きてきたんじゃない。個人で生きてきたんだ」、この台詞が全てです。
出版当時に「乱歩賞と直木賞、初のダブル受賞作は?」とアタック25で児玉清さんが出題されていて、とりあえず読んでみた記憶が有ります。
当時、自分にはそこまで響かなかった物語が今回の再読では全く違うモノになっていました。
小説には読むべき時期があるのだと再認識しました。読めて本当に良かった。
Posted by ブクログ
1995年の大ベストセラー小説。当時の日本で、こんなに凄いハードボイルド小説が書かれていたとは知らなかった。主人公やヒロインのキャラクタ造詣といい、脇を固めるヤクザやホームレスの物語といい、隙がない。大胆に心の内をブチまける短歌という詩型をプロットに組み込んだのもユニークで再読に耐える傑作。
30年以上前に文庫本で読んだけど、先日「シリウスの道」を読んでいて(浅井)が出てきたので、彼がどんな人物だったか思い出したくて再度購入。
藤原伊織さんの作品に出てくる人物はどれも個性的で魅力的で大好きです。
そういえば、この本読んだあと真似してホットドッグ作って食べたのが良い想い出です(笑)
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一気読みしてしまった。
言葉遣いといい表現といい行動といい、全く関わったことない人種だらけなのに、想像できてしまった。それにしても割とハイコンテキストな会話が多くてみんな頭良い。
ストーリーは読めそうで読めない展開が続きウズウズしてるとラスト十数ページで全ての伏線を回収してきた。すっきりした。
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この小説の重要なキーワードは「偶然」である様に思った。新宿で起きた爆破テロの背景には様々な「偶然」が絡まっていて、それらをパズルのように組み合わせていくことによって犯人へと辿り着く構図がとても面白かった。
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無駄は1文字たりともない。
人生の半分の逃亡生活は無駄ではなかったし、ここに書かれていること以上に読者が知らなければならないこともないのだと思う。なのに、「私も年をとったのだ」だけが2回繰り返されたのは、決して菊池の生活が無駄だったからではなく、それでも繰り返さざるを得ないほどに長すぎたのだと訴えているからだと思う。
それほどに長い「習慣」は知りたくはない。だが、読者は知るべきだった。だからこそ繰り返された言葉なのだろうと思う。
そして、「私はあやまりを口にした」のあやまりとは、と考える。謝りであり、誤りでもあると書かれているように思った。繰り返しとは逆に、一度で2つを伝えたのだと思う。
2度と繰り返されるかわからない貴重な出会いで知り合えた人間に言いたくはない言葉だ。だがそう思える人間と出会ってみたい。
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全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。
東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットドッグしか出さないという主人公。
脇を固める登場人物たちもかっこいい。
乱歩賞新刊、数ヶ月後に受賞する直木賞は発表前という段階で読んで以来ずっと、本棚のお気に入りスペースに鎮座ましましている名作です。
昭和と平成初期のハードボイルドを感じてみたい方は是非。
Posted by ブクログ
冷静で勘が冴えているが機械やテクノロジーに疎いバーテンの島村、頼りになる奇妙なやくざの浅井、若くして知性と行動力(それから魅力)を兼ね備えた塔子、ほかにも個性的で生き生きとしたキャラクターが、ハイテンポで展開していく物語を鮮やかに味付けしている。
展開もハイテンポで目まぐるしく進み、線と線がつながって新たな線が浮かんでくる。島村と共に新宿を駆け回って謎を解いていくような感覚で読めた。
クライマックスで島村と桑井が出会う場面。それまで物語のキーパーソンとして舞台装置的な印象であった優子が、桑井との会話によって一気に人間味を帯びてくる。島村との関係、桑井の絶望、優子の涙のわけ、NYでのふたり、ひとつひとつ語られていく真相が優子の輪郭を深めていく。切なく、諦念を帯びた人間像が悲しい。それを無二の親友だった桑井から聞かされる島村の心中たるや。
桑井の動機も、横恋慕の行き着く先と言ってしまえば簡単だが、優子に拘っていたというより島村への複雑な感情と全共闘の異様な雰囲気が綯い交ぜになって醸成されてしまったものではないかと思える。
自分は全共闘世代が持っているらしいそうした雰囲気、熱気がどんなものだったのかわからない。作中で塔子が言及しているように、オジサンたちの懐古的な口調ばかりが耳につくという印象だ。しかし読後それについて想像するに、瞬間的な熱にうかされた若者たちが、闘争を終えて皆すぐ社会に適合していくとは考えづらい。中には抑えきれない感情を抱えたまま社会とのズレにさらされる者もいたのでは。そうしたある種の屈折が桑井の源流にもあるのだろうか。
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【2023年22冊目】
読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!
江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。
のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複雑化していき、途中で相関図書いて整理しつつ、結末がどうなるか全然わからなかったので、最後までドキドキしながら読み切りました。
「私」の受け答えがいちいちかっこよすぎる、あと頭が切れるのと同じくらいダメっぷりが光る人間味が良すぎました。
あと、あの、浅井ー!浅井かっこよすぎるでしょー!途中から浅井が出てくるたびに「浅井!!」って思いながら拍手してました。
学生闘争の頃とかについて、少し前知識入れておくとより楽しめると思いますが、やー本当面白かったです。
Posted by ブクログ
'95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作!
評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。
本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
中年でくたびれたアル中のバーテンの主人公を始め、他の登場人物も個性が際立っていて、その設定にも感心します。
ストーリーも、客観的で簡潔な描写が淡々と展開され、どんどん引き込まれます。ミステリーを超越し、他のハードボイルドからも一線を画している気がします。
最後は怒涛の驚愕の連続でしたが、破滅の道へ進んだ友人と主人公の想いを中心に、多くの登場人物へ感情移入しながら、哀愁漂う主人公のカッコよさに酔いしれました。
素晴らしい読後感で、しばらく余韻を引きずりそうです。
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昔いつだったか一度手に取ったがほとんど読み進められなかった。
身だしなみを整える為の場所として、
主人公が「タツ」から
デパートのトイレを勧められるシーンだけが何故か印象に残っていた。
時代を経て自分も歳を重ねて味わえるようになっていた。
90年代初めの空気が蘇る。
文体がとにかくかっこいい。
Posted by ブクログ
直木賞と江戸川乱歩賞を受賞とのカバーを見て、購入しました。
ハードボイルド小説は読み慣れないので大丈夫かなと思いましたが、まったく問題なかったです。
ストーリーのテンポがよく、最初冴えない主人公が真相に迫る様子がおもしろいので、後半は一気に読み進めてしまいました。
1995年に発売された作品ですが、今読んでも古臭いという感じにはならないと思います。
Posted by ブクログ
アル中のバーテンがテロに巻き込まれて……安保闘争を青春時代に持つ世代のハードボイルド。
よくこんな物語書けるなぁという感じ。
読みやすくて面白かった。
世界が繋がっている別作もあるらしいので読んでみるつもり。
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主人公の先読みすぎる洞察力の鋭さと、それに反して事件が起きる前の冴えない生活を送るギャップさが読者を飽きさせなかったと思います
周りの登場人物も勘の鋭い人がいて、地頭の良い人ってこういう事を言うのかと感じました
飲み過ぎて事件を起こした失敗のシーンも、人間臭さがにじみ出ていて良かったです
Posted by ブクログ
1995年第41回江戸川乱歩賞
1996年第114回直木賞 受賞作
テレビドラマでは、主人公を萩原健一が演じていたらしい
うん、ぴったり
そして、ギャンブル借金返済の為の作品だったらしい
うん、ぴったり
新宿のバーテンの男、ほぼアル中
ほぼアル中だけど、頭はキレる
新宿公園でいつものように飲んでいると 爆弾テロに遭遇する
偶然かと思われた爆弾テロが自分に関わりが深いものだと気がつく
そして 気がついてからの行動が小気味良いほど悪賢い
この男が 連なっていくトラブルにどう動いていくかと 事件に繋がっていく人達
最後まで緊張感が切れずに楽しめました
東大の学生運動時代に発端があり、その時代を引きずってしまった強さであり弱さ
すべてが繋がっていくストーリーに驚きもありました
ただ繋がりすぎたかなー、そこまで繋がると計算が過ぎるかなーというところなんです
Posted by ブクログ
新宿を舞台にアル中バーテンダーが爆弾事件の真相に迫って行く話。
登場人物の魅力と各場面でのヒリヒリ感が素晴らしかったです。
少しずつ真相に迫る流れがページを次へ次へと捲らせました。
Posted by ブクログ
だいぶ前に読んだことがあることに冒頭で気がついたけど、詳しい内容を思い出せず。
再読完了した時思ったのは、こんなにインパクトがある話を人は忘れられるものなんだ…と。
だいぶ昔の話しではあるけれども伏線がはられまくっていて面白い。
少し頭がついていかないところがあったが…
嫉妬心は人を突き動かす負の力となるし、その力はかなり膨大。
しかも桑野の20年間を思うとこんなことをしてしまうまで人格が曲がってもしかないない気もする…
してしまったことはどんな理由があっても決してダメなことだけど。
Posted by ブクログ
一気読み
久しぶりの活字だったけど先が気になってするする読めた!
ちょっと難しい
完全には理解して無さそう
おもしろい
登場人物がみんな魅力的!
頭が良いから会話がおもしろい
Posted by ブクログ
20世紀末の新宿中央公園、オープニング早々から爆発事件が起こり多数の死傷者がでる。アル中の島村の目線で話が展開していくが、島村とヤクザの浅井のキャラクターがいい。
二人とも見た目によらず頭がキレて、殴りあいも強い。
うまそうなホットドッグと電気箱の描写が印象的。
Posted by ブクログ
偶然がおきすぎのような気がする。
読みやすいハードボイルド。
あの動機であそこまでやるか?というのは「八つ墓村」みたいだなーと思ったけど、作中にも出てきたね。
Posted by ブクログ
日本人でもこんなハードでビターなそして、センスのいい雰囲気をかもせる作家がいた。
私はこんな乾いたシンプルな文章も好きだ。
ゆくりなくもハードボイルド風味をおいしく味わった。
江戸川乱歩賞で直木賞。絶対話題になったはずなのに知らなかった…。
そりゃわたしの不勉強だわさ。
ストーリーもシンプルかつスピーディー。おもしろい。
主人公は全共闘時代の爆弾疑惑事件ですねに傷持つ身、しがないバーテンのアル中。
ある朝公園で飲酒中にそれこそ爆弾テロに遭遇、やばいと逃げだしたのだが。
ことがことだけに安閑としている場合じゃないのに、入り込める展開。
フィクションなのにリアル、会話の多い文体、それがしゃれているのだ。
軽いユーモア、不思議なことに含蓄がある言葉。
もう終盤に近いところのこの言葉
「私たちは世代で生きたんじゃない。個人で生きたんだ。」
うおおお、かっこいい!
これはもうわたしの座右の銘にしたい。
Posted by ブクログ
情景が目に浮かんだ
テロリストの考えはよくわかりません、、、
学生運動のくだりとかよく分かんなかったら時間空けてもう一回読んでもいいかも
Posted by ブクログ
前半は読ませるスピード感があるが、後半になるにつれ都合が良すぎる展開でリアリティに欠ける。さすがに無理あるでしょ、みたいな描写が頻発するため集中が途切れた。
匿名
テロリスト。もっと激しい物語かと思ったが、主人公の淡々とした喋り方や行動で、激しさはより淡々と進んでゆく感じに思えた。すごくしんどい人生のはずなのに、何もかもを受け入れ最後まで後悔を見せない不思議な男だった。
Posted by ブクログ
本屋さんの「今更だけどおすすめです」 と言うコーナーにあって 気になったのでよんでみました。
アル中のホームレスのようなバーテンダーが爆弾テロに巻き込まれていく話
読んでるうちにどんどん かっこよく思えてくる ハードボイルドだね~
優子さん塔子さん親子には キュンですね
Posted by ブクログ
江戸川乱歩賞受賞作と聞いてかなり期待して読んだが、そうでもなかったかな...。
読むのに時間がかかってしまったので、それが良くなかったのかもしれない。一気読みしたらもっと楽しめたかも。
塔子のキャラクターはとっても良かった!ラブな方向に話が逸れるのも見てみたかったかな〜。
真相はかなりエグかった....。
Posted by ブクログ
江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞作ということで期待して読んだ一冊。
ある土曜日の朝、アルコール中毒のバーテンダー・島村は、新宿の公園で爆弾テロ事件に遭遇。
現場から逃げ出した島村は、公園に自分の指紋がついたウイスキーの瓶を残してしまう。
テロ事件の犠牲者に、22年前共に学生運動を行った、音信不通の友人の名前を見付け、偶然ではないと感じた島村は、過去、自らが起こした事件故、テロ事件の容疑者として疑われながらも事件の真相に迫っていく―。
テロ事件が起きた現代と、学生運動があった時代が交互に描かれる形で物語は展開していきます。
過去に島村と友人が起こした事件、島村が愛した女性、そして明らかになる事件の真相。
学生運動があった時代を知らないからか、些か理解できない心理や感情はあるものの、興味深く、また早く先を知りたい、という気持ちで読み進めることができました。
島村と関わるヤクザの浅井が非常に魅力的で、その魅力の理由も後半明かされてみると納得。
藤原氏の作品は初めて読みましたが、他にも読んでみたくなりました。
☆が3つの理由は犯行の理由が、軽すぎたというか、幼稚すぎたため。
ここまでしっかり書き上げられるなら、もうちょっと何かが欲しかったです。
それとも人間って、詰まるところは幼稚で短絡的な生き物だということを著者は描きたかったのでしょうか。