藤原伊織のレビュー一覧

  • てのひらの闇

    Posted by ブクログ

    いろいろとできる人間ではある。喧嘩もできるし、人を庇う嘘も咄嗟でついたし、アナログとデジタルの一瞬の違いも見分けられた。
    だが、それらを「できる」と思うか「できてしまった」と思うかは人それぞれで、いつの場合でも、本人がどう思っているのかがすべてだと思う。

    だから、てのひらに闇があったってあなたはできることがいろいろあってすごいねなどと他人を評価してはいけないのだろうと思う。
    本人は、いろいろできるかもしれないが自分のてのひらには闇があるのだと思っているかもしれず、そのどちらなのかは簡単に知れないと思うからである。

    そういう探りを入れず、興味もなく、自分がしたいからこうすると行動するのは、関

    0
    2024年02月05日
  • 名残り火

    Posted by ブクログ

    大事に思う人が死んでしまったから、その原因を調べる。それは「てのひらの闇」と同じだが、今回はさらにもう1人が続いてしまった。

    「もう1人」と思うのは、私の感想の書き方のせいであり、実際は他にもいる。こういった考え方の違い、誰をどのくらい大事だと思うかの違いから犯罪が起こったりするのかもしれないと気づいた。

    気をつけたい、とは思うが、誰をどのくらい大事だと思うかは、気をつけるという問題ではないので困る。

    0
    2024年02月05日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    無駄は1文字たりともない。

    人生の半分の逃亡生活は無駄ではなかったし、ここに書かれていること以上に読者が知らなければならないこともないのだと思う。なのに、「私も年をとったのだ」だけが2回繰り返されたのは、決して菊池の生活が無駄だったからではなく、それでも繰り返さざるを得ないほどに長すぎたのだと訴えているからだと思う。

    それほどに長い「習慣」は知りたくはない。だが、読者は知るべきだった。だからこそ繰り返された言葉なのだろうと思う。

    そして、「私はあやまりを口にした」のあやまりとは、と考える。謝りであり、誤りでもあると書かれているように思った。繰り返しとは逆に、一度で2つを伝えたのだと思う。

    0
    2024年02月01日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。

    東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットドッグしか出さないという主人公。
    脇を固める登場人物たちもかっこいい。

    乱歩賞新刊、数ヶ月後に受賞する直木賞は発表前という段階で読んで以来ずっと、本棚のお気に入りスペースに鎮座ましましている名作です。

    昭和と平成初期のハードボイルドを感じてみたい方は是非。

    0
    2023年09月24日
  • 雪が降る

    Posted by ブクログ

    前回読んだ表題作がかなり好みだったのでその作品も入った短編を読んだのだが、他の短編もめちゃくちゃ良かった。頭がしびれる作品が多く、特に「台風」と「紅の樹」が最高だった。前者は淡々と語られるモノローグとラストの余韻が素晴らしい。後者は純粋なヤクザものハードボイルド。これが傑作で、ありがちなプロットながら台詞まわしがとことんに粋。それがうすら寒くならずグッとくるのは藤原さんの余計なことを書かない文章に見事にマッチしているからだと思う。まだ半年あるが今年のベスト短編集はこれで決まりだ。

    0
    2023年07月04日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    冷静で勘が冴えているが機械やテクノロジーに疎いバーテンの島村、頼りになる奇妙なやくざの浅井、若くして知性と行動力(それから魅力)を兼ね備えた塔子、ほかにも個性的で生き生きとしたキャラクターが、ハイテンポで展開していく物語を鮮やかに味付けしている。

    展開もハイテンポで目まぐるしく進み、線と線がつながって新たな線が浮かんでくる。島村と共に新宿を駆け回って謎を解いていくような感覚で読めた。

    クライマックスで島村と桑井が出会う場面。それまで物語のキーパーソンとして舞台装置的な印象であった優子が、桑井との会話によって一気に人間味を帯びてくる。島村との関係、桑井の絶望、優子の涙のわけ、NYでのふたり、

    0
    2023年06月15日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    【2023年22冊目】
    読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!

    江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。

    のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複雑化していき、途中で相関図書いて整理しつつ、結末がどうなるか全然わからなかったので、最後までドキドキしながら読み切りました。

    「私」の受け答えがいちいちかっこよすぎる、あと頭が切れるのと同じくらいダメっぷりが光る人間味が良すぎました。

    あと、あの、浅井ー!浅井かっこよすぎるでしょー!途中から浅井

    0
    2023年02月05日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    授賞式当時に読んだ本を再読。年月を感じさせないですね。
    主人公がとても魅力的。それが故に起こった悲劇。インテリヤクザさんも好印象でした。

    0
    2022年10月07日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    疾走感が心地よく一気読み。
    点と点がどんどん繋がっていく、後半の伏線回収は圧巻。
    登場人物が魅力的でした。

    0
    2022年10月02日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

     '95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作! 
    評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。

     本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
     中年でくたびれたアル中のバーテンの主人公を始め、他の登場人物も個性が際立っていて、その設定にも感心します。
     ストーリーも、客観的で簡潔な描写が淡々と展開され、どんどん引き込まれます。ミステリーを超越し、他のハードボイルドからも一線を画している気がします。
     最後は怒涛の驚愕の連続でしたが、

    0
    2022年08月07日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    昔いつだったか一度手に取ったがほとんど読み進められなかった。
    身だしなみを整える為の場所として、
    主人公が「タツ」から
    デパートのトイレを勧められるシーンだけが何故か印象に残っていた。
    時代を経て自分も歳を重ねて味わえるようになっていた。
    90年代初めの空気が蘇る。
    文体がとにかくかっこいい。

    0
    2021年08月21日
  • テロリストのパラソル

    Posted by ブクログ

    この『テロリストのパラソル』の冒頭数ページを読んだだけで「ああ、これは好きな小説だ」となりました。

    アル中の中年バーテンダーの島村は朝起きると、いつも通り公園に行きウイスキーをいれたカップを傾ける。そんな島村を見つめる一人の女の子。会話の流れから、女の子がバイオリニストを目指していることが分かり「わたし、バイオリニストになれると思う?」とその子は問う。「なれるかもしれない。ツキに恵まれたなら」と島村は返し、そして女の子は……

    昼間からアルコールの臭いを漂わせているため、世間の人からは白い目で見られることの多い島村。そんな島村が無垢な女の子との会話から思った世界のこと。そして淡々と無骨ながら

    0
    2020年05月19日
  • シリウスの道(下)

    Posted by ブクログ

    最高のビジネス書。
    ブレない強い人たちと卑怯なクズたちの物語。
    それぞれの登場人物がこの後どうなるんだろう?と考えてしまう、余韻がすごくいい作品。
    その後をもっと書いて欲しい、と思うところで終わっているのがいいんだろうな。

    0
    2019年11月23日
  • 名残り火

    Posted by ブクログ

    ー 承っております、 こちらへ。そういって案内されたテーブルは表面が磨きあげられた黒い大理石で、そこから間接照明でほの明るい周囲に目をやると、一種の感慨が訪れた。

    この国のてっペんにある階層の富を吸収するシステム。それはいかなるかたちでいかに存在すべきか、しかるべき立場の人間の探究心を満足させるに足る材料を、周りの内装が完壁なかたちで提供していたからである。べつの言い方をするなら、私にとっては居心地がさほどいいとはいえなかったということだ。 ー

    藤原伊織の遺作。
    このシリーズは続いて欲しかった。ここで終わりだなんて悲しすぎる。まだまだ物語るべきものがあったはずなのに…。

    しかも、なんとも

    0
    2019年11月02日
  • てのひらの闇

    Posted by ブクログ

    ー そうだ。考えるのはさきでいい。二十年、サラリーマンをやってきた。いつだって、考えるのがさきだった。考えなければ、生きていけなかった。そうでないときは、身体が動いていた。息つく暇がなかったのだ。疲労のすこしずつ溜まっていく生活が、この環状線みたいにずっとつづいた。沼の底の泥みたいに知らないうちに溜まっていった。それがこの国の企業社会だった。最後に一度くらい、例外があってもいいだろう。この奇妙な状況ではじめて、そのことに気づいたのだった。 ー

    訳ありサラリーマンが巻き込まれるハードボイルド!
    藤原伊織の作品はどれも面白い。
    今回もハラハラしたなぁ〜。

    0
    2019年10月14日
  • 雪が降る

    Posted by ブクログ

    「書店グループNET21」の今年の文庫フェア『まちの本屋
    のお客さんに聞いた 俺の一冊・私の一冊』の中で、40代
    の読者がオススメに挙げていたので読んでみた一冊。

    ハードボイルド、ユーモア、恋愛、ハートウォーミングなど
    ジャンルの異なる短編が6つ収められていて、本当に同じ
    作家が書いたのかな、と思ってしまった。

    特によかったのは企業小説と言える表題作『雪が降る』。
    これにはしびれた。読み終えてしばらく動けなかった。

    過去の痛みを引きずって、不器用ながらも通すべきスジは
    通す。そんな魅力ある男達が奏でる物語は、痛い、切ない。
    でも、ただ切ないだけではなくて、明日への希望

    0
    2018年11月18日
  • 雪が降る

    Posted by ブクログ

    台風
    切ないなぁ こういう話。
    兵藤さん どうしてるのかなぁ。
    ピアノは無理でも ビリヤードは出来てるかなぁ。
    生きててくれと願うのは酷かなぁ。
    卓也は明子と結婚したんだね。驚いた。
    戻って見たら 5歳くらいしか違わないんだもんね。
    それもアリか。
    どうしても学生時代って ひとつ歳が違うだけでも すごく違うから もっと離れてるのかと思った。
    オトナになれば 5歳くらい なんてことないもんね。

    雪が降る
    志村さんも高橋さんもカッコいいなぁ。藤原伊織が描くオトコは いつもカッコいい。
    とばされるヒトがこんなにカッコよくていいの? 笑

    紅の樹
    これも切ないよなぁ。
    遠山さん いいオトコだなぁ。

    0
    2018年04月01日
  • 蚊トンボ白鬚の冒険(上)

    Posted by ブクログ

    ものすごく不自然な設定なのに 読み出すとすんなりこの世界に入れる。不思議。
    題名が 違ったら もっと早く読んでただろうなぁ。残念。
    達夫 めちゃカッコいい。
    親方もめちゃカッコいい。
    あと瀬川もめちゃカッコいい。
    みんな ハードボイルドだなぁ。

    0
    2018年04月01日
  • 名残り火

    Posted by ブクログ

    シリーズ化するつもりだったのだろうと思えるラスト。まさかのナミちゃん、登場人物たちのその後が気になります

    0
    2017年09月12日
  • 遊戯

    Posted by ブクログ

    これでほんとに最後なんだね。全部読んでたつもりでいたけど これを見つけた時のうれしさ。ちょっと勿体無い気がして 眠らせてたけど ついに読んじゃった。
    面白かった。勿体無いと思いつつ 引き込まれ一気に読んじゃった。やっぱりこのひとの書くものすきだなぁ。優しくて。
    たまたまテロリストのパラソルを読んで 衝撃的に出会って それからずっと読んできたけど もう読めないなんて ほんと悲しい。なんでわたしの好きな作家さんって 早く亡くなる人多いんだろ。もともと次々書くタイプの人じゃなかったから もっともっと読みたい。もっと書いてーと思ってたけど ポツポツでもよかった。ポツポツ長く書き続けて欲しかった。
    遊戯

    0
    2017年06月25日