藤原伊織のレビュー一覧
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いろいろとできる人間ではある。喧嘩もできるし、人を庇う嘘も咄嗟でついたし、アナログとデジタルの一瞬の違いも見分けられた。
だが、それらを「できる」と思うか「できてしまった」と思うかは人それぞれで、いつの場合でも、本人がどう思っているのかがすべてだと思う。
だから、てのひらに闇があったってあなたはできることがいろいろあってすごいねなどと他人を評価してはいけないのだろうと思う。
本人は、いろいろできるかもしれないが自分のてのひらには闇があるのだと思っているかもしれず、そのどちらなのかは簡単に知れないと思うからである。
そういう探りを入れず、興味もなく、自分がしたいからこうすると行動するのは、関 -
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無駄は1文字たりともない。
人生の半分の逃亡生活は無駄ではなかったし、ここに書かれていること以上に読者が知らなければならないこともないのだと思う。なのに、「私も年をとったのだ」だけが2回繰り返されたのは、決して菊池の生活が無駄だったからではなく、それでも繰り返さざるを得ないほどに長すぎたのだと訴えているからだと思う。
それほどに長い「習慣」は知りたくはない。だが、読者は知るべきだった。だからこそ繰り返された言葉なのだろうと思う。
そして、「私はあやまりを口にした」のあやまりとは、と考える。謝りであり、誤りでもあると書かれているように思った。繰り返しとは逆に、一度で2つを伝えたのだと思う。 -
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全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。
東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットドッグしか出さないという主人公。
脇を固める登場人物たちもかっこいい。
乱歩賞新刊、数ヶ月後に受賞する直木賞は発表前という段階で読んで以来ずっと、本棚のお気に入りスペースに鎮座ましましている名作です。
昭和と平成初期のハードボイルドを感じてみたい方は是非。 -
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ネタバレ冷静で勘が冴えているが機械やテクノロジーに疎いバーテンの島村、頼りになる奇妙なやくざの浅井、若くして知性と行動力(それから魅力)を兼ね備えた塔子、ほかにも個性的で生き生きとしたキャラクターが、ハイテンポで展開していく物語を鮮やかに味付けしている。
展開もハイテンポで目まぐるしく進み、線と線がつながって新たな線が浮かんでくる。島村と共に新宿を駆け回って謎を解いていくような感覚で読めた。
クライマックスで島村と桑井が出会う場面。それまで物語のキーパーソンとして舞台装置的な印象であった優子が、桑井との会話によって一気に人間味を帯びてくる。島村との関係、桑井の絶望、優子の涙のわけ、NYでのふたり、 -
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【2023年22冊目】
読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!
江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。
のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複雑化していき、途中で相関図書いて整理しつつ、結末がどうなるか全然わからなかったので、最後までドキドキしながら読み切りました。
「私」の受け答えがいちいちかっこよすぎる、あと頭が切れるのと同じくらいダメっぷりが光る人間味が良すぎました。
あと、あの、浅井ー!浅井かっこよすぎるでしょー!途中から浅井 -
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'95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作!
評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。
本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
中年でくたびれたアル中のバーテンの主人公を始め、他の登場人物も個性が際立っていて、その設定にも感心します。
ストーリーも、客観的で簡潔な描写が淡々と展開され、どんどん引き込まれます。ミステリーを超越し、他のハードボイルドからも一線を画している気がします。
最後は怒涛の驚愕の連続でしたが、 -
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この『テロリストのパラソル』の冒頭数ページを読んだだけで「ああ、これは好きな小説だ」となりました。
アル中の中年バーテンダーの島村は朝起きると、いつも通り公園に行きウイスキーをいれたカップを傾ける。そんな島村を見つめる一人の女の子。会話の流れから、女の子がバイオリニストを目指していることが分かり「わたし、バイオリニストになれると思う?」とその子は問う。「なれるかもしれない。ツキに恵まれたなら」と島村は返し、そして女の子は……
昼間からアルコールの臭いを漂わせているため、世間の人からは白い目で見られることの多い島村。そんな島村が無垢な女の子との会話から思った世界のこと。そして淡々と無骨ながら -
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ー 承っております、 こちらへ。そういって案内されたテーブルは表面が磨きあげられた黒い大理石で、そこから間接照明でほの明るい周囲に目をやると、一種の感慨が訪れた。
この国のてっペんにある階層の富を吸収するシステム。それはいかなるかたちでいかに存在すべきか、しかるべき立場の人間の探究心を満足させるに足る材料を、周りの内装が完壁なかたちで提供していたからである。べつの言い方をするなら、私にとっては居心地がさほどいいとはいえなかったということだ。 ー
藤原伊織の遺作。
このシリーズは続いて欲しかった。ここで終わりだなんて悲しすぎる。まだまだ物語るべきものがあったはずなのに…。
しかも、なんとも -
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ー そうだ。考えるのはさきでいい。二十年、サラリーマンをやってきた。いつだって、考えるのがさきだった。考えなければ、生きていけなかった。そうでないときは、身体が動いていた。息つく暇がなかったのだ。疲労のすこしずつ溜まっていく生活が、この環状線みたいにずっとつづいた。沼の底の泥みたいに知らないうちに溜まっていった。それがこの国の企業社会だった。最後に一度くらい、例外があってもいいだろう。この奇妙な状況ではじめて、そのことに気づいたのだった。 ー
訳ありサラリーマンが巻き込まれるハードボイルド!
藤原伊織の作品はどれも面白い。
今回もハラハラしたなぁ〜。 -
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「書店グループNET21」の今年の文庫フェア『まちの本屋
のお客さんに聞いた 俺の一冊・私の一冊』の中で、40代
の読者がオススメに挙げていたので読んでみた一冊。
ハードボイルド、ユーモア、恋愛、ハートウォーミングなど
ジャンルの異なる短編が6つ収められていて、本当に同じ
作家が書いたのかな、と思ってしまった。
特によかったのは企業小説と言える表題作『雪が降る』。
これにはしびれた。読み終えてしばらく動けなかった。
過去の痛みを引きずって、不器用ながらも通すべきスジは
通す。そんな魅力ある男達が奏でる物語は、痛い、切ない。
でも、ただ切ないだけではなくて、明日への希望 -
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台風
切ないなぁ こういう話。
兵藤さん どうしてるのかなぁ。
ピアノは無理でも ビリヤードは出来てるかなぁ。
生きててくれと願うのは酷かなぁ。
卓也は明子と結婚したんだね。驚いた。
戻って見たら 5歳くらいしか違わないんだもんね。
それもアリか。
どうしても学生時代って ひとつ歳が違うだけでも すごく違うから もっと離れてるのかと思った。
オトナになれば 5歳くらい なんてことないもんね。
雪が降る
志村さんも高橋さんもカッコいいなぁ。藤原伊織が描くオトコは いつもカッコいい。
とばされるヒトがこんなにカッコよくていいの? 笑
紅の樹
これも切ないよなぁ。
遠山さん いいオトコだなぁ。 -
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これでほんとに最後なんだね。全部読んでたつもりでいたけど これを見つけた時のうれしさ。ちょっと勿体無い気がして 眠らせてたけど ついに読んじゃった。
面白かった。勿体無いと思いつつ 引き込まれ一気に読んじゃった。やっぱりこのひとの書くものすきだなぁ。優しくて。
たまたまテロリストのパラソルを読んで 衝撃的に出会って それからずっと読んできたけど もう読めないなんて ほんと悲しい。なんでわたしの好きな作家さんって 早く亡くなる人多いんだろ。もともと次々書くタイプの人じゃなかったから もっともっと読みたい。もっと書いてーと思ってたけど ポツポツでもよかった。ポツポツ長く書き続けて欲しかった。
遊戯