中短編三作品から成る著者存命中に刊行された最後の作品集。レンブラントの絵画「ダナエ」をモチーフにした表題作はミステリー色が強く、家族を題材にした「まぼろしの虹」は文学色が濃い少々風変わりな作品。最後を飾る「水母」は犯罪小説的な味わいがあり、バラエティに富んでいる。登場する男たちは過去への郷愁を抱え、ままならない現実に目を瞑るしかないが、解説の小池真理子氏が評した<荒ぶる諦念>に即した矜持を持ち合わせている。情緒的で感傷的なやせ我慢の美学に満ち溢れた一冊。著者の作品は長編より短編の方が私は好きかもしれない。