あらすじ
自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが……。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編!
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「もし、それが事実なら世界の美術界が震撼する。伝説が修正される。 神話がもうひとつ誕生することになる。 」
天才画家ゴッホが残した「ひまわり」。数十億円は下らないだろうと言われている作品は隠された「もう1枚」があった。その「ひまわり」をめぐって争いを起こす者、巻き込まれる者、知らず関わっている者。
「ひまわりをめぐる争い」というとハードボイルドっぽいけど、実は本格ミステリーだった作品。伏線もどんでん返しもあります。
この作者の作品はストーリーは当然の事ながら、出てくるキャラクターが素敵。主人公格の冴えない中年男にバイリンガルの女の子以外にも、脇役までが魅力的。とにかくかっこいい原田に新聞配達青年の佐藤君。
この作者は何かしらの小物をうまーく取り入れるのだけど、今回はドーナツの模様(笑)。決して親切に描写を描くタイプの作家さんではないけど、効果的に使う小物のおかげで、不思議とその情景が浮かんでしまう。
中年男の秋山も「なんでそんなにいろいろ詳しいんじゃい!」と思えるし原田も「お前は出来杉君か!」と思えちゃうところもあるけど、それでもかっこいい!ハードボイルド風味だからと言って派手なドンパチを期待すると肩透かしかも(いや、撃ち合いはあるけどさ)。
ドンパチだけがハードボイルドではありませんぞ!
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『この時代にだって、多くはないだろうけど少数の人間はたしかに誠実によって動く。あるいは動かされる。
だけどいま、はじめてこう思った。そんなものにはもうカビがはえている。ひとり誠実であろうとするだけなら、はた迷惑なだけかもしれない。人をうんざりさせるだけかもしれない。
そういう質のわるい、始末におえない誠実さというのもある。うさんくさくて、気分がわるくなってくる。』
良かった。『テロリストのパラソル』のような疾走感はなかったけど、緊張感と切迫感漲る作品だった。非常に気に入ったので『てのひらの闇』『名残り火』『シリウスの道』も購入。
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一時遠ざかっていた、読書の世界にひきもどしてくれたのが彼の作品群です。
彼が食道がんでなくなったのは、個人的に衝撃的なできごとでした。
酒量は彼に匹敵しそうなので、本当は控えないといけないのだけど。
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妻の英子はレイプで妊娠して自殺し、英子に似ている麻里はヘルスで働く。この設定から、「自分の意思」があるかどうかが何よりも重要なのだとわかる。「たかが」という言葉は、加害者からしか出ないともわかる。逆に、何十億、何百億円になるかわからないほどの価値ある物であっても、それになんの興味も持たず、どう処分したとしても、それも権利者の意思だけに基づくものであって、他人がどうこうはできないのが筋であるのが当然だと思う。
この本の所々で繰り返される、なぜあなたが、なぜそこまで、なぜそれを、などは全部、他人の人生に介入する試みがいかに無駄かが表現されているのかもしれないと思った。
他人が誰かを「変える」ことはできないのではないかと思う。ただ、他人のおかげで「変わる」ことはできるかもしれない。やはり「自分の意思」が重要だと思う。
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主人公が魅力的ですぐに作品に入り込んでしまった。誠実だった亡き妻に落とす一つの影とゴッホに纏わる謎の組織。一級品のミステリだと思う。ただ、主人公の特殊能力?あれは何だったんだろう・・・。
あらすじ(背表紙より)
自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。
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この人の書くものはハードボイルドなんだろうけど、一応一般人が主人公。
内容はあんまり明るくないのばっかな気がするけど、するすると読めてしまう。
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藤原伊織を読んだのはは「テロリストのパラソル」に続き2作目。ハードボイルドという括りで扱われる彼の作品はそうなのかしら?と疑問に思ってしまう。
今回のひまわりの祝祭は、静謐で美しい。確かにハードボイルド的な要素があるにはある。ハードボイルドといえば、酒はバーボン、汗臭い男、肉質な美女。マグナム系の銃器。血なまぐさい肉。この本では、バーボンが牛乳、汗臭い登場人物がインテリ系、美女は薄倖の才女。マグナムがライフル。肉がコンビニのドーナッツ、に置き換わっている。
まるで文学作品を読んでいるようでした。
ラストシーンは特に美しい。
最後に女が主人公へ「あなた」と語りかけるところが、すごく気になる。なぜ呼び方が「あなた」、なのか。。暗喩されているのだろうか。。
もっと彼の読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
銃など登場させて無理やりハードボイルド風にしなくても、とても面白いと思った。高校時代の、主人公と奥さんとの関係がとても素敵だ。
「つるつるのプラスチックみたいな平板な生活」を送る主人公が、本人の意思に反して混乱に巻き込まれていく。転がるような展開に、ぐいぐい引き込まれた。藤原伊織さんの作品は「テロリストのパラソル」しか読んだことなかったけど、これも面白かった気がする。過去の作品を調べたら、藤原さん、すでにお亡くなりになってるんですね。ビックリしました。
Posted by ブクログ
主人公のおっさんの落ちぶれ加減がいい感じです。
さすがの藤原伊織。
ほかの作品よりはミステリ要素が強いかな。
奥さんの裏切りの件はよかったけど、
ラストは嫌だなあ・・・。
ゴッホのことは、ファン・ゴッホと呼ぶことにしよう。
Posted by ブクログ
伊織さん、テロ・パラ以来、久しぶりの読書ですが、異端な天才少年の数日間のドラマ。
ファン・ゴッホの ひまわりが もう一枚 しかも日本にあったら! って、 可能性あるよね!!
英子さんはなんで死を選んだのか、、、
かなり、こだわりの純愛! だよね。
ああ
しまった、読んだのは角川文庫版だった、、、
丸善の店頭に積んであったんだけど、新作じゃ無かったのね!
話の展開、ドンドン引き込まれていくスピード、最後の5ページでも、まだ進行中!
これって、映画にはなりませんかぁ???
やはり、伊織さんはすごい!
解説の中で、小説らしい小説という、表現があるがまさに、そのとおりだと感じた。もう15年も前の小説なんだ!!ええ、テロパラから2年後(1997年)の発行!! へぇ。 (全然中身が古くないなぁ)
2005年に亡くなられてることも知らず。 ご冥福をお祈りします。 なんで、能のある方がこんなにも早く亡くなっているのか! 日本の文壇って、、
伊織さん制覇するかな、、、
、
よし、最後のあたり もう一度読むぞ!!
Posted by ブクログ
絵が好きで、美術大学で学んでいたものとして、
ストーリーだけでない感覚・感情の部分でわかることが多くあった。
英子さんの言葉、あんな言葉を投げ掛けられるなんて、
主人公は幸せものだったと思う。
相変わらず脇役が魅力的だったし、ものすごい調査量だったと思うが、
ラストがちょっと腑に落ちないので★4
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ファン・ゴッホが描いた名作「ひまわり」。
生涯で7枚作成されたとされている「ひまわり」には実は8枚目が存在した…、というお話。
いろんな話が混ざってて複雑ですが、歴史も取り入れたスケールの大きい話に満足。
Posted by ブクログ
著者の乱歩賞&直木賞ダブル受賞の代表作「テロリストのパラソル」を読んだのは10数年前のことです、当時は志水辰夫、原寮、船戸与一などハードボイルド&冒険&アクションを好んで読んでました。その中でもテロリスト~はキャラクター、ストーリー、ミステリ要素全てが一体となって、正に白眉の出来と認識してました。残念ながら2007年に逝かれており著作もそれほど多くはないものの、日本のハードボイルドに大きな足跡を残されておりファンも多いのではないかと思います。
ずいぶん時間が経ってから今作を読むこととなりました、荒筋としては…
愛する妻が妊娠を隠したまま自殺を遂げた後、仕事を捨て無為な日々を過ごしていた主人公秋山秋二。ある夜かつての上司から奇妙な依頼を受ける、「カジノで500万を負けてくれ」渋々了承したものの地下カジノで死んだ妻英子とそっくりな女と出会ったことにより彼の周囲が突然騒がしくなってきて…
こんなカンジです。まず自殺した妻の妊娠という謎があり、主人公の現在過去が語られていくことにより、自殺のなぜ?が大きく提示されます。そうこうしてるうちにゴッホの幻の名画「ひまわり」に妻が関わっていたことが明らかになり、妻の秘密とゴッホの「ひまわり」をめぐって物語は加速していきます。
ジャンルでいえばハードボイルドなので主人公秋山の一人称で語られていき、読者は明らかになる真実を主人公と共有しつつ終盤へ向かいます。ただ妻の死後無為な日々を過ごすだけの彼が、高校時代は油彩に天才的才能があったりとか、ギャンブルにおいて天才的なカンの冴えがあったりとか、妻の死という現実から逃げた先のアメリカで射撃の技術を得ていたとか…都合よすぎるんじゃない?とも思えるものの、描き方が巧みですんなり入り込んでいけます。亡き妻そっくりな女と出会ったことから始まる記憶のフラッシュバックという手法で、秋山の人物像を知ると同時に、妻との思い出が「ひまわり」の出自にまつわるヒントになっていき、さらに彼の無為な日常、無気力が、徐々にアクティブに真相を求めていく姿に変化していくところが小気味よいです。
幻の「ひまわり」に関しては、よく日本の作家さんが海外の名画をここまで物語に組み込んだな!と驚きです。古今東西美術工芸品が物語の中核を担うアイテムとして登場する傑作は多いと思いますが、西洋美術に関してはやはり海外モノに及ばず、という既成概念を完全に払拭したのではないかと思います。自分自身美術に詳しい訳ではありませんが、物語の中で完全に成立していました。事実はどうあれ相当な勉強をされて書き上げたのだろうと思います。
ラストには切ないエンディングが待ってました、やはりこれがハードボイルドなんだなぁ…感慨ひとしおでした。
Posted by ブクログ
全共闘世代におもいれのない自分としては、「テロパラ」よりは面白かった。
この主人公同様、「いつまでも子供過ぎる」といわれる身として
共感があったのかもしれない。
でも、甘党なところはにてない(笑)
Posted by ブクログ
ゴッホのひまわりの絵は7枚とされているが、8枚目が存在したという、ミステリアスな設定で描かれたハードボイルドミステリー。
ゴッホ、あるいは美術界に興味がある読者にとっては、興味を惹かれ見逃せないテーマかも。
高校生時代の作品で天才と、もてはやされたが、己の才能に見切りをつけ、プラスチックみたいな平板な生活を送っていた主人公。
彼は、亡くなった妻とそっくりな女と出会ったことから、闇の大物、暴力団も絡む騒動に巻き込まれる。
ゴッホの8枚目の「ひまわり」はどうなるのか、その行方に目が離せない。
Posted by ブクログ
ストーリーが深い。文章力が凄いので所々難しく感じる場所もあったが、話し方や振る舞いも細かく書かれていて、登場人物の性格や特徴が良く分かったのでストーリーにのめり込めた
Posted by ブクログ
絵画に疎い私には大変、難しゅうお話で御座いました。どんでん返しがある訳でもなく、主人公が凄く魅力的でもなく(汗)読むのに疲れた~~。でも、この方の文章は嫌いではないので他作品にリベンジしてみようと思います。
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世界的に有名なゴッホの「ひまわり」生涯に7枚描かれたその名画には、実は未だに隠されたままの幻の8枚目が存在していた!
初っ端からギャンブルのルールがよくわからず、どこか現実離れしたような設定でなかなか馴染めなかったことも加えて企業同士の争いや、そこにヤクザが絡んでたりゴッホの名画だったり、内容が詰め込まれすぎてて一体どれがメインなのかわかりにくかったのがもったいない………。
作者さんがいくつもの文献を読んで「ひまわり」に関する考察を深めた上での作品なので、その件に関しては凄く説得力があって、わくわくしながら読むことが出来たので、絵画、特にゴッホの絵が好きだけど、彼自身についてはあまり知らなかった私のような超初心者には嬉しい作品でした!
*
壮大なスケールの割に主人公が何を考えているのか掴めず、穏やかで平穏な生活を望んでいて、非積極的な感じなのが逆に裏目に出てしまったような感じがする…。これなら逆にもっと金目当てでも良いから原田さんと一緒に目をキラキラさせながら名画を追いかけて欲しいかったなぁ…(ただ、そうなると奥さんが自殺してしまっていることに関しての心情が滅茶苦茶になってしまうのだけど)
原田さんのエピソードもっと読んでみたかった
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
妻が妊娠をかくしたまま自殺した。ショックで隠遁生活を送る秋山に、元上司から奇妙な依頼が来た。「一晩で500万、カジノで負けてくれ。」その日から、妻に似た謎の美女、やくざ、闇社会の大物などが現れ、執拗に付けまわされる。謎を解く鍵は、ゴッホの名画「ひまわり」だった―。直木賞・乱歩賞受賞第1作。名作『テロリストのパラソル』に並ぶ、疾走感溢れる展開と緻密な構成が秀逸なミステリの傑作。
藤原伊織の本は基本酔いどれの主人公が多いですが、この秋山は酒は飲まず、ひたすら暖めた牛乳と甘味物で生きる、子供じみた頑なさを持つ男。妻が亡くなってからは世捨て人のように誰とも関わらず引き籠っていたけれども、否応なしに幻の絵画争奪に巻き込まれるのでありました。
やはり藤原伊織の文章は格調高く、ウィットに富んでいてとてもかっこいい。実際にこんな会話ないだろうと思うけれども。
最初に読む人は「テロリストのパラソル」か「シリウスの道」をお勧めしますが、これもなかなか良作だと思います。
Posted by ブクログ
現実離れとご都合主義のオンパレードに感じてしまい、私にはチョット合わなかったですね
今まで知られていなかったゴッホの絵が存在し、それをめぐるミステリーという骨組みは問題無いのですが、主人公のキャラが「こんな人いないよな」という感じ
それがハードボイルドというヤツなのか
他のキャラクタも考え方とか何かおかしい気がした
少し気にし始めると「こんなストーリー現実にはあり得ないよな」等、他の部分も気になって物語にのめりこめなかった
イヤ、それがフィクションの小説というモノなんですがね
分かっているんですけどね
どうにも私には合わなかったのです。。。
Posted by ブクログ
短いセンテンスをつなぐ散文的な文体は、文章に力強さと躍動感を感じさせるのですが、如何せん自分視点の一人称なので、弱さと甘えがにじみ出てなんとも言えない気分になります。個人的に「厨二」っぽく感じます。「テロリスト~」もそうだったので、完全に藤原先生の作風かと思われます。
内容では京都での「8枚目のひまわり」の謎解き部分がピークかなと思います。その部分は本当に興味深くグイグイ引き込まれました。
最後の銃撃戦の部分は、大袈裟すぎて不謹慎ですがちょっと笑いました(特に麻里が死ぬ場面など)。ハードボイルドがあまり性に合わないのかもしれません。
気になった点は、作中に登場する若者のセリフです。ものすごく苦労してしゃべらせてる感が伝わってきてかなり痛いです。
義弟の宏も見張りの新聞配達の若者も、オネエみたいな話し方になってるし。。。それと、イチローが活躍しポケットに収まる携帯がすでに普及している時代に「パーペキ」「ファンキー」「炸裂的」などと言ってる若者はいなかったのではないだろうか…(「チョベリバ」世代?)。…察しろよ、ということでしょうか?
最後に、ゴッホはファン・ゴッホと呼ぶのが普通ということが分かったのはためになった。gimp2のエフェクトにも「ファン・ゴッホ風」みたいのがあったし。
Posted by ブクログ
次々登場人物が増えて、静かな生活とはウラハラな主人公。
英子が静かな生活で守ってくれていた事を後から知るんですね。
短文が押し寄せて、気を抜くと場面が変わっていて。。やっぱり展開が早い。
Posted by ブクログ
どうもミステリーというのは、あまり得意ではないのですが…。
主人公は平穏を愛し望む人。
でも生きている以上、それは避けられないものだよね。
なにかしら心乱される出来事は起きる。
たぶん心に何かを抱えながらも、平穏な生活に戻るであろう主人公。
でも君はそれでいいのか?と思ったりもする。
ミステリーって読後幸せな気分になれる作品が少ない気がする。
だからあまり得意じゃないんだよね~。(^^;)
Posted by ブクログ
絵画方面にも造詣が深いとは、著者はかなりの博識なのだな、と思ったが、絵画などに興味がない、もしくは受け入れる態勢でないとおもしろく感じられないのが残念。
それにしても著者は若くて美人で気が強い女性が好みなのだろうか。いっつもこのパターン。
Posted by ブクログ
ゴッホの「ひまわり」をめぐる争奪戦の中、元、アートディレクターが巻き込まれて、妻の自殺以来の無気力が徐々にアイデンティティを取り戻していくが…
「ひまわり」が7つもあるって知らんかったf^_^;) 勉強不足や
Posted by ブクログ
純文学にも引けをとらない美しい日本語と爽快な会話の数々。この作者とにかくうますぎ!自殺した妻をもつ元有名画家が主人公。ゴッホの8枚目のヒマワリという歴史的なミステリーを題材に物語が静かに進んでいく。ハードボイルド特有の派手なシーンはない。がそこはこの作者の真骨頂。一つ一つの会話を丁寧に織り込み、筋の通ったやせ我慢の美学を紡いでいく。しびれます。ミステリーとしては想像を超える事はなかったが絵画の現代史や手法を学ぶにも参考になった。