藤原伊織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
藤原伊織は「テロリストのパラソル」や「シリウスの道」でお気に入りの作家で、この短編集「雪が降る」も、らしさ満載でとても心に沁みる。
昨年亡くなっちゃいましたよね。とても残念。
表題作の「雪が降る」がとても良い。
お得意の企業を舞台にし、同期で出世競走の先を行きながらそれを笠に着ぬ上司、気の利いた美しい女性の部下、将来有望の若手社員、そしていつものごとくほとんどアル中ながら有能さだけを武器に会社に残っている主人公。
しかしこれは企業小説ではなく、そうした舞台まわりの上に描かれる「男と女の情念」と「父と子の信頼」と「男と男の友情」を繊細に描いた絶品(もちろん「サラリーマンの矜持」というところを描い -
Posted by ブクログ
1995年第41回江戸川乱歩賞
1996年第114回直木賞 受賞作
テレビドラマでは、主人公を萩原健一が演じていたらしい
うん、ぴったり
そして、ギャンブル借金返済の為の作品だったらしい
うん、ぴったり
新宿のバーテンの男、ほぼアル中
ほぼアル中だけど、頭はキレる
新宿公園でいつものように飲んでいると 爆弾テロに遭遇する
偶然かと思われた爆弾テロが自分に関わりが深いものだと気がつく
そして 気がついてからの行動が小気味良いほど悪賢い
この男が 連なっていくトラブルにどう動いていくかと 事件に繋がっていく人達
最後まで緊張感が切れずに楽しめました
東大の学生運動時代に発端があり、その時代を引き -
Posted by ブクログ
妻の英子はレイプで妊娠して自殺し、英子に似ている麻里はヘルスで働く。この設定から、「自分の意思」があるかどうかが何よりも重要なのだとわかる。「たかが」という言葉は、加害者からしか出ないともわかる。逆に、何十億、何百億円になるかわからないほどの価値ある物であっても、それになんの興味も持たず、どう処分したとしても、それも権利者の意思だけに基づくものであって、他人がどうこうはできないのが筋であるのが当然だと思う。
この本の所々で繰り返される、なぜあなたが、なぜそこまで、なぜそれを、などは全部、他人の人生に介入する試みがいかに無駄かが表現されているのかもしれないと思った。
他人が誰かを「変える」ことは