時間さえ潤沢にあれば、多分一気読みしていたであろうくらいストーリーに引き込まれる。
主人公の堀江が飲んだくれて、雨のなか路上で寝ているところから始まる物語。
というわけで、作中ほとんどずっと堀江は風邪をひき、高熱で朦朧としたまま謎を解き、大立ち回りをやってのけるのである。
なんで解熱剤を呑まないんだ
...続きを読むろう?
退職勧告に従いあと2週間で退社する予定の主人公堀江が、会長から直接呼び出され、偶然撮影した人命救助のビデオを自社CMとして使えないかと打診される。
宣伝部とはいえ、実際に広告を制作しているわけではないのでノウハウを知っているものがほとんどいない中、堀江は制作会社に勤務していたこともあり、プロの目でそのテープを見ることができる数少ない人間だった。
テープに係わる謎。
堀江と会長の中にある、過去の因縁とは?
そして、CMとしては使えないことを指摘した直後の会長の自殺。
生い立ちに秘密のある人物。
偶然のアクシデント。
過去の出来事が複雑に絡み合い、物語は大きく広がりを見せることもできるのだが、堀江の興味はただ1点。
なぜ会長は自殺しなければならなかったのか。
会長を自殺に追い込んだものを見つけるため、高熱でくらくらする身体で堀江は動き回る。
そうまでしなければならないどんな恩義があるのだろうか。
畳んだ風呂敷を拡げてみれば意外なつながりが次々と明かされて、途中で本を閉じるのが惜しいほど先が気になる。
だがしかし、決定的にキャラクターが都合よすぎ。
察しがよくて口の悪い、超絶技巧のバイクテクニックを持つ、たまたま入った六本木のバーのオーナー。20代(?)の女性。
その弟の、マイク・タイソンのようにガタイがよく、経済学、経営学の知識が抜群の17歳。
堀江の部下の大原。30代の既婚女性。
公私ともに堀江の面倒をみ、サポートをする。多少の恋愛感情あり。
大原の夫。
やり手のジャーナリスト。
同期の出世頭で事情通が、個人的な親しい友人。
読んでいて、彼らのでき過ぎっぷりに辟易する。
これがなければなあ。
日本のハードボイルドってなかなかにウェットで、男の美学というよりは義理人情が行動原理だったりするけど、そういうのって嫌いじゃない。
2週間の死闘を、一気読みで感じたかった。