長谷敏司のレビュー一覧
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伊藤計劃氏が亡くなってから16年
この“トリビュート”が出版されてから10年
その間、
大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。
多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。
最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響い -
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★目次
まえがき 大澤博隆
第1章 思考のストッパーを外せ 暦本純一
第2章 「歩行」に魅せられて 梶田秀司
第3章 「自分とは何か」を考えるためにSFを読んできた 松原仁
コラム① AIのジェンダー化 西條玲奈
第4章 「人間」の謎解きを楽しむ 原田悦子
第5章 身体という「距離」を超える 南澤孝太
第6章 ストーリーに書けないものが見たい 池上高志
コラム② SFを実社会へ応用する 福地健太郎
第7章 情念が実体化するとき 米澤朋子
第8章 SFは極めて貴重な資源 三宅陽一郎
第9章 ディストピアに学ぶこと 保江かな子
第10章 イノベーションの練習問題 坂村健
第11章 研究からフィクシ -
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長谷敏司のデビュー作にして、第6回スニーカー大賞金賞受賞作。久しぶりに再読した(紙の本です)。
人類は汎銀河同盟と人類連合という二つの陣営に分かれ、1000年以上もの間戦争を繰り広げていた。そして「戦略拠点32098」と呼ばれる謎の惑星を、人類連合軍は必死に防衛していた。何もないその惑星の地表には、突き刺さるように戦艦が着陸していた。あたかも墓標のように。
そこに汎銀河同盟軍降下兵のヴァロアが一人不時着する。彼はそこで敵のサイボーグ兵ガダルバと少女マリアと出会う。マリアと「戦艦の墓場」と呼ばれるこの惑星の秘められた真実とは…
それは一言でいうと、戦場で死ぬことの「大義の証」であり -
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上下巻読んでの感想。
面白かった!上巻の初めは俺俺男子高校生が鼻についたけど、中盤以降全く気にならなかった。戦闘描写があまり印象的に描かれていないのもまた良かった。どっちに転んでも面白いと思うけど、小説で読むなら心情描写とか、この戦いに何の意味があるのかとかが詳細に描かれていた方がいいから、合ってた。
あとアナログハックとかミームとか、あとそれぞれの個体の二つ名もしっかりと意味があり、練られていてそこを理解するのが面白かったし、興味深かった。
道具とのボーイミーツガールにも関わらず、毎度いい雰囲気になる度に、心はないって読者の心を折りにくるのもまた良かった、、後半には無意識に心がないって -
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死の物語です。
死に直面し、呪い、足掻き、目を逸らし、誤魔化し、悪罵を撒き散らし、孤立して、苦しむ。
そして力尽き尊厳を奪われ動物のように死ぬ。
そんな物語を単行本1冊費やして描いたSF小説。
強力なAIや脳の編集技術の登場で個性や人格から聖性が奪われ相対化されゆく未来が舞台。
テクノロジーの発達を配置することで可能になった人の死の意味への純化した問いかけを徹底的に突き詰め、残酷なほどに端的に、結論を差し出し作者は言う。
これは「あなたのための物語」だよ、と。
私の、そして君にも、いつか必ず訪れる最期の物語。
心の弱ってる人は読んだらダメな物語。 -
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ネタバレ
愛した人を殺さなければならない任務。
国や平和のために献身した人間を権力者は簡単に捨て去ってしまう。忠を尽くした結果夫、息子、弟子、仲間などの多くを失ってしまったボス。それでも国のために献身し続けたが国家の都合のために汚名を着せられ殺されてしまった。
生き残って真実を知ったスネークに残ったものはは上層部、国家への疑心や怒り。それに加えて絆を感じていたエヴァは結局ただのスパイだったという複雑な気持ちだけ。何か救いが欲しかったと思う。
これからスネークはどういう結論を出し何のために戦っていくのか、次巻のピースウォーカーが楽しみです。 -
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長谷敏司のデビュー作。
彼の作品は『ビートレス』を以前読んだことがあるのだが、2段組600ページという長さと、硬くて回りくどい文章が合わなくて途中で挫折してしまった。
本作はデビュー作ではあるが、『ビートレス』よりもレベルが落ちることもなく、むしろ硬さがなくて私にはこちらの方が読みやすい。
また、ライトノベルレーベルではあるが、今の感覚からすると「これがラノベ?」と疑いたくなってしまうような作りこみの世界観と登場人物の動きを見せてくれる。
やはり一昔前の「ライトノベル」と、最近の萌えや奇抜さに走った「ラノベ」は全く別物だと感じる。
物語の前半部分は、敵軍が守る謎の惑星に降下した兵士ヴァロワ -
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ネタバレ目次
・公正的戦闘規範 藤井太洋
・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
・南十字星 柴田勝家
・未明の晩餐 吉上亮
・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
・怠惰の大罪 長谷敏司
どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
この2作品は好きだなあ。
特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。
単純な幸福はない。
幸福に正解はない。
けれどどの作品も屈託があり -
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人工知能にハリー・ポッター全巻を読ませ、続きを書かせてみる実験が昨年行われたが、ロンがハーマイオニーの家族を食べたりハリーが7ヶ月間階段から転げ落ち続けたりとパンチの効いた内容になったようだ。
この実験結果を聞いて笑いが込み上げてくる反面、どこかホッとした人も多いのではないだろうか。人間は「生身の肉体がある」ことと「感情を持っている」点では機械を超越した存在であると信じている人は特に。
本書では義肢の一環として人工神経が生み出された近未来が舞台となり、実験の一環として機械に小説を書かせるのがテーマ。死が間近に迫った科学者が、死に対する恐怖と自己愛、小説の存在意義について思いを馳せる展開は読 -
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あなたのための物語から関連で読んだ。なかなか良かった。
2作目 allo toi toi:そこにあるようなSF描写と、脳にデバイスを埋め込んでも結局は変われない人間の根っこがうまく描かれている。なかなかの生理的嫌悪をもよおす結末で素敵。
3作目 hollow vision:SF描写の迫ってくる感じが大変よかった。AIを描く作品はとにかく新鮮さが命だとはっきりわかる。テロ鎮圧の流れが怒涛の勢いで一気読み。
気になったのが、自転軸という言葉の使い方。たぶん作者は(自転の円周方向という意味で)間違って使っているのではないか。軸は軸だぞ
4作目 父たちの時間:ナノロボットの自律進化の過程がなかなか真に -
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『地には豊穣』
再読
豊穣の月の下で薄れ往く文化差異を惜しむ話
豊穣という言葉は普段使わないとかどうでも良いことを思う
科学の力で言葉や国家や宗教と文化がたいらになるまで
果たしてどれくらいかかるか
他の話と比べると割と平和な話かもしれない
『allo,toi,toi』
再読
犯罪者心理とSFてきに接触する話
SFというより警察ものとか社会派とかああいう系統よりか
SFというのもそういうものだけれども
感情自律ができても犯罪は減らないだろうけれど文化は衰退しそう
『Hollow Vision』
スパイ大作戦な娯楽活劇調
『BEATLESS』の超高度AI世界は無尽に広がりそうなので
この話の