長谷敏司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
魔法。それは人には出来ないことをやってのける奇蹟の力。
しかし、魔法は魔法を扱えぬ「人間」の視線だけでその効力を失う諸刃の剣でもあった。
そのため、人間が多く住むこの地球は「地獄」と呼ばれ、魔法使いからは忌み嫌われていた。
魔法世界で犯した罪を償うためにこの「地獄」へと堕とされた、「円環大系」の天才魔法使い少女・メイゼル。彼女が元の世界に帰るには「公館」に従う刻印魔導師となり、100人もの罪人を自らの力で捕らえなければならない。
公館の専任係官である武原仁と共に、彼女は奇蹟を焼き尽くされる恐怖に怯えながらも必死に生きていた。
そんなある日、メイゼルと仁は60年前に滅亡したはずの魔術「再演大系」の魔法に目覚めた女子高生、倉本きずなと出会う。
この出会いをきっかけに、彼らは恐ろしい陰謀へと巻き込まれていくことになる…。
「人に見られただけで魔法が無力化される」という魔法の設定は面白いな、とまず思いました。
ドS小学生のメイゼルや二面性の強い京香、京都弁の殺戮魔術師ジェルヴェーヌなど濃いキャラも多めに登場し、物語を盛り上げてくれます。
文章自体はやや難しい作りと流れで、人によっては読みづらさを感じてしまうかもしれません。
しかしその圧倒的な世界観と設定は群を抜いているので、これからに期待したい作品ですね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ交通事故で右足半分が義足になったプロダンサーの再生の物語。
護堂恒明はコンテンポラリーダンスを得意とするプロのダンサー。交通事故により右足を失う。
新しくロボットによるダンスカンパニーを立ち上げた谷口はロボットとの共演を護堂に持ちかける。
ロボットに、より人間的なダンスを踊ってもらうため、護堂の義足にAIとセンサーを組み込み、データを取り、ダンスロボットにフィードバックする。
AIを積極的に取り込み、人間が観て心を動かされるダンスとは何かを追求していく。
並行して、護堂は交通事故で母を亡くし、プロダンサーである父も事故をきっかけに認知症が発症、進行がはやく、恒明は同居して介護することになる。
短期記憶喪失、排泄も失敗することが多くなり、恒明の介護は悲惨極まる。
唯一の血縁である兄は大阪にいて介護にも、資金援助にも非協力的だ。
義肢は進化する。AIのおかげで、義肢自らが人間としての通信手順(プロトコルオブヒューマニティ)を持ち、より人間に近い表現と、他のダンサーとの距離と速度を絶妙に調整する。
しかし、父の認知症は治らない。症状は悪くなっていく一方だが、唯一、プロダンサーとしてのプライドだけは残った。
私の父も脳梗塞を患ってから認知症の症状が出るようになった。「納品書がない!」「回収したお金が見当たらん!」10年以上前に辞めた商売のことを突然言うようになった。
護堂の父は、短期記憶を失っても、言葉が思うように出なくなっても、理性が崩れても、踊ることだけはやめなかった。
私の父は最後まで商売人として生きた痕跡が残っていた。
脳の機能が損なわれても、人が人生をかけて積み重ねたものまで、すべて失われるわけではない。
護堂の父にはダンスが残り、私の父には仕事が残った。
そこから、もう一度人とつながることができる。
最後の護堂と父とのラストダンス。
そして護堂とロボットたちのダンス。
このダンスシーンは凄い。
自分も踊って汗をかいてるような感覚に襲われる。
プロトコル・オブ・ヒューマニティとは、他者とつながるための通信手順だ。
そこに関係が生まれ、感情が行き交う。
そして、その関係をダンスとして表現したとき、それを観ている人間まで巻き込んでいく。
親子としての絆、ロボットたちとの新しい関係。
本作はSFであると同時に家族小説であり、新しい関係性を獲得していく物語でもある。