瀧羽麻子のレビュー一覧
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大学のゼミ仲間6人。
その中の10年来の恋人ひと組が
ようやく挙げた結婚式。
でもお互いが渋々でもなくて
結婚するならこの人しかいないと
ずっと心に決めていて。
それでも結婚に至るまでに
10年の歳月が二人には必要不可欠で。
この結婚式を挙げた新郎新婦と
かつてのゼミ仲間の男女4人。
その中の一人と結婚した女性がひとり。
この結婚式を境に
それぞれがそれぞれの視点で
自分のこと パートナーのこと
家族のこと 来し方行く末のことを
じっくりと見据えてゆく。
ある者は 前進を決断し
ある者は 現在の自分を肯定し
ある者は それでも動けずにいる。
ひとりひとりの個性も話す言葉も
すっきりと腑に落ちる。
自分に当てはまることなど少ないけれど
それでもこの人たちの悩みや考え方に
ほんのりと共感できてしまう。
そうして思った。
人は自分がどんなやつかを分かった上で
それを分かってくれる人のそばにいたいと願う。
自分がどんなやつかを分かっているのに
離れずに寄り添ってくれる人を
生涯の友人として選び選ばれる。
夫婦もそうなのだろう。
この物語に集う男や女たちからは
気取りも気負いも感じない。
生きていれば無理もないと思える頑張りや
自分ですら気づいていない素敵な優しさを
みんなが内側に持っている。
誰が読んだとしても きっと
自分がたどってきた足取りを
間違いなかったと信じさせてくれる物語。
読後には 傍らにいる人に優しくなれそう。 -
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この物語は、京都でなければ描けない。
葵祭の斎王代に抱いた山根のはかなく切ない恋心も、歴史ある学生寮の取り壊し計画とその阻止のエピソードも、壮大な送り火も、賀茂川の花火も、この作品にはすべてがなくてはならないものになっている。
積み重ねた歳月に磨かれることでしか生まれない光沢を纏う古都の美しさと気高さが、学問に埋もれる生き方を選ぶしかなく、そうすることでしか輝けない山根をやんわりと拒み、その背中を押す。
このはんなり加減は、京都そのものだ。
ラストシーンはこの切ない恋の終わりを飾るにふさわしく、山根にとっての何よりの救いだったと思う。
古都の恋の終焉には、送り火がよく似合う。
過ぎ去るものへの挽歌に、合掌。 -
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購入動機はちょっぴり不純であった。
一に、パン屋でアルバイトをしていた経験があった事。二に、数年振りに小説を読むという行為に些か不安があって短い本を探していた事。これらが相俟って、自然と手がこの本に伸びたのだ。
結果として、大変読みやすくて助かった。少し不思議で心温まる、子供でも読みやすい作品だと思う。読書ビギナーにはありがたい。それこそパン屋巡りをしながら…おうちでパンを食べながら…幼いからこその初々しい恋を読んだ。
意外だったのが、書き下ろし短編の『はちみつ』。本編の甘酸っぱさと打って変わって、寂しくて切なくて、それでも前を向きたい話だった。心の傷をゆっくりと癒していく、題名通りに綺麗な短編だった。 -
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中学生になった千春は、友人の那彩に誘われて天文部に入る。
興味はあるが、知らないことが多くて先輩や那彩にはかなわない。
だが、3年生の二階堂先輩は熱血であるが故なのか、いろいろ声をかけてくれたり、無口でミステリアスな片瀬先輩や話のわかる顧問の葉山先生と過ごしていくうちに居心地の悪さが、いつの間にか一緒に楽しめる仲間になっていく。
部活動の楽しさを知り、片瀬先輩の片想いと失恋を知り、千春自身の片想いと失恋も誰も知らない秘密のまま、先輩は卒業する。
新たな出会いがあり、部活動を楽しみ、失恋を経験した千春の成長を見れた。
小5の頃に一緒にいた俊太のことには、全く触れなかったけれど、彼はどう成長したのだろうか。
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小5の千春は、学校帰りに修理屋のおじさんと知り合い、スカートの染み抜きをしてくれたことで、通うようになる。
何気ない会話から災難だったことでも、「今日はたまねぎ、明日ははちみつ」とアラビア語のことわざで励ましてくれる。
ピリピリとした生たまねぎの刺激があることと、はちみつのとろけるような甘さのことで、悪い日もあればいい日もある、という意味らしい。
同じクラスの俊太も自転車を修理してくれたことで、おじさんと親しくなっていた。
先生でも親でもない大人と接することで変わっていくことは、成長する上でも大事なことだろうと感じた。
ただ親にはきちんと話をして会ってもらったことは、正しいことで良かったなと。
最後の突然の別れは、クルピの音だけが聞こえて余計に寂しさを増幅させた。
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それぞれから見た校長先生のお話だと思うけどスーツがいちばん好きだった。
・母がいる。息を詰め、鏡の中の自分と見つめあう。またしても、眉間に深くしわが寄っている。難しい顔、と店で夫に言われたのもこれだろう。ただ考えこんでいただけなのに、気を悪くしたのかと心配されてしまった。母もだろうか。思ってもみなかった可能性が、脳裏にふとひらめいた。母も、考えていただけだったのだろうか。ひそめた眉は、不満の表れでもいらだちのせいでもなくて、真剣に頭を働かせているしるしだったのか。昔のようにはたやすく理解できなくなってしまった娘を、それでも理解しようとして。「シャワー、空いたよ」 声をかけられて、沙智は肩越しに振り返った。寝室の戸口から、ほんのりと上気した夫の顔がのぞいていた。「どうしたの、それ?」 沙智の全身に目を走らせて、夫は感心したように言った。「似合うね」 沙智は鏡に向き直った。眉間のしわは消えていた。