柳田国男のレビュー一覧
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いちおう「神隠し・隠れ里」なるテーマのもとに編まれたアンソロジーなのだが、編者の大塚英志さんという方がちょっと変わった人なのか、あんまりテーマと関係ない文章もけっこう含められている。それでも、未読の柳田の文章を読めると言うだけでありがたいのだが。
異界を暗示する「神隠し」のようなテーマに関しては、柳田自身、これは民俗学の題材と言うより「心理学」のそれではないかと疑念を呈している箇所もあり、さほど深く追究する気になれなかったようだ。興味はあったのだろうけれども。
巻末には同時代の田山花袋や水野葉舟の小説、柳田『遠野物語』の話材提供者である佐々木喜善の作品、および折口信夫の詩が収められている。どれ -
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「妹の力」のように沢山の採取したフォークロアの披露で脱線気味ということはなく、読み易い。
それでも、え、あの話まだ続いていたんですか、ってまるで落語の崇徳院のような感想を持った処もあったけれど。
地道に証拠を積み上げ、結論を急いで出すことがない。最後に仮説を提示するする姿勢は、プロの論考というべきもの。
ミミラク、ミ―ラクというあの世に繋がる海の彼方のイメージがあったのではとしている。美々良久の島、肥前の三井楽の崎、紀州の補陀落渡海、鹿島踊りのみろく船についての論考。刺激的な話だけれど、証拠が少ないのでは。
死後の魂が向かう「根の国」は地下の世界ではない、黄泉の国のイメージは中国から伝えら -
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柳田國男。
気にはなっていたのに、なかなか読むチャンスがなかった。
なんだかすてきな装丁の文庫で出ていたのでうっかり購入。
昔話を題材に、文化の伝播について論じられている。
例えばシンデレラなどのような「継子譚」や人間とそれ以外のものが婚姻する「異類求婚譚」など、世界中の民話(神話)と日本に伝わる昔話にはいくつもの共通点がある。そういった話が日本にはたくさん残っており、その話の採集に柳田國男は力を入れていたという。
このあたりの民俗学的な話は、現在の研究とどれだけ違いがあるか分からない。しかし柳田國男のこの作品を含めた研究が、当時の日本で「昔話」「童話」の研究に一石を投じたのだろうとは思う。 -
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この本は柳田が生前に編んで出版したアンソロジーで、一応、民俗において「女性」が登場する論説が収められている。
最初の方の「巫女」論はおもしろい。女性を<自然>の権化とみなす世界観は、きっと妊娠・出産・月経といった現象が、密接に森林や夜の月などといった「世界」に結びついているように見えたことから発祥したのだろう。このような傾向は、もちろん、日本に限らず世界中のあちこちに見られた。
女性=自然だからこそ、その中から生まれてくる新生児は<自然>から派出してくるのだ、という確信が、そこにはある。
けれども、この本の後続の論文はシャーマニズムから離れ、単に女性が「ちらっと」出てくるだけのようなものもある -
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いろいろな「遠野物語」が出てますが、表紙がきれいだったのと「拾遺」が収録されているのでこれを購入
山の神様や家の神様、野辺の狐狸や狼、猿などなど
神さまや仏様が田植えをしてくれたり火事を消してくれる話が、なんだかほっこりとして好きです
「真面目に信心すればいざという時に助けてくれる」という教訓話として片付けたくない温かみを感じるのは、柳田国男の文才のせいかなあ
狐狸や猿のいたずらに対しては、けっこう容赦がない(笑)
狐汁にして美味しくいただきましたとさ、ちゃんちゃん
農作物を荒らすこともある獣に対しては、農民は憎しみも持っているだろう
本当に表紙がきれいだし手