あらすじ
電気やガスのなかった時代、人々は、火をどのように使って暮らしてきたのか。先人たちが生活の中心に据えてきた火にまつわる事柄や風習を紹介。柳田の鋭い観察力と膨大な知識をもとに、生活史をたどる。
※本作品は紙版の書籍から索引が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
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Posted by ブクログ
若者というより子ども向けに書かれたらしく、宮本常一なみに平易な書物だ。ここでは柳田的文学趣味は開花せず、素朴な民俗学的知が開示されている。
火といえば、レヴィ=ストロースの『神話論理』にあっては、自然そのものから分離しだした文明/文化を象徴する鍵概念である。
柳田の論述は相変わらずどのくらいの時代のことを言っているのかわからないが、主に農村における、「火と扱うための道具」をどんどん掘り起こす。本書は戦時下において書かれたそうだが、当時既に日常生活の火は電気に取って代わられており、火の文化を忘れ去られないために、柳田はここに書き留めたらしい。
確かに火は多くの場面で過去のものとなりはしたが、原発事故が起こりエネルギー問題に直面している現在から見ると、電気は「火の文化」ほど人類の歴史に深く根付いたものではなかったなという感慨を持つ。
Posted by ブクログ
なぜ、便利なもの、必要なものほど、新しい手段ができるとすぐに忘れ去られてしまうのだろう。
過去のこと、しかもそれが自分の生まれる前となると、人に聞くか、本を読むかで、手段は実に少ない。今なら映像に残せたりするのだろうけれど、一定以上の昔になるとそうもいかない。
そして、火にまつわる文化は当然古い。作者が語るように、新しい物が広がり忘れ去られてしまっているような事柄・物事も、限りないほどあるのだろうと思う。
想像力さえあれば”不便さ”はわかるとはいえ、それを解決する”工夫”や”努力”は忘れ去られれば届かない。
街灯から、家の明かり、かまど等々、多くの場所で使われてきた火の歴史からは、生きることの懸命さが感じられるようで。
必要なものほどすぐに忘れ去られてしまうのは、きっと懸命であるが故なのでしょう。
不便さを楽しむというのは、贅沢なことであるのだろうし。
明かりを少し暗めにしたり、月の光を浴びたりしながら、火とそれを囲む人とのいにしえに思いを馳せてみるのも良いのでは。