原武史のレビュー一覧
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昭和に生まれ育った人たちなら松本清張を読んだ人は多いのではないだろうか?
この本でも「点と線」、「砂の器」、「日本の黒い霧」、「昭和史発掘」、「神々の乱心」などが取り上げられている。
自分も「昭和史発掘」は長いので途中で挫折したりしたものの、自分も「神々の乱心」以外は読んだことがある。
社会派推理作家であり、ノンフィクション作家であるとされる松本清張氏の活動を、ノンフィクションが主軸であり、史料が足りず推測で埋めざるを得ない箇所が多い場合に小説=フィクションという容れ物を借りたというのは全くその通りだと思う。
そして、松本清張氏の視点を昭和における社会の格差や、差別、語られなかったタブーにメス -
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明治初期の神学をめぐる出雲(オホクニヌシ)と伊勢(アマテラス)の論争を、本居宣長が初めて言及した「顕」と「幽」の考え方を手がかりに、彼の思想の系譜をたどりながら解き明かす。
第二部では、第一部で明らかにしたオホクニヌシが次第に言及されなくなった時代の流れと、埼玉県に多いオホクニヌシが祭神の氷川神社がある大宮の衰退を重ねて論じている。
維新政府にうまく近づけた津和野派の活動や、民権運動に乗じて勅命を勝ち取ったことなど、伊勢派が勢力を強固にする経緯を知りたくなった。出雲側からの考察だから情報が少ないのは当然なのだろうけれど、千家尊福の精力的な動き、教義面の充実、伊勢派神官の切迫感をもってしても出 -
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面白かったです。
松本清張はまだあまり読めていませんが、既読の作品や観た映像化でも昭和の暗部のようなものが描かれてるなと改めて気付かされました。「砂の器」も「ゼロの焦点」も。
そしてめっちゃ格差あるんだなぁ…見えなかっただけか。
皇室にも確執があったというのを初めて知りました。貞明皇后ってそんなに権力握ってたのかな…「貞明皇后実録」出版されてほしいです。秩父宮と二・二六事件と…「昭和史発掘」読もう。
終章の、司馬遼太郎は歴史を男性中心に見て、松本清張は歴史を女性中心に見てる、というのも面白いです。どちらもそれぞれ読み応えあります。
そして「国体」…かつてとは違う形で確立されているかもしれない。 -
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没後28年。昭和を代表する作家でありながら、平成・令和になっても同時代性を失わず、いまだに映像化や数多の関連本も上梓される松本清張。著者曰く、作品そのものが戦後史の縮図であり、高度経済成長という時代の証言になっていると。
社会派推理と古代史と昭和史という3本柱の元、一貫して「格差」「差別」というタブーを作品テーマに据え膨大な作品を遺した。
本書は「鉄道」と「天皇(皇族)」に着目し、代表作である「砂の器」「点と線」「日本の黒い霧」「昭和史発掘」「神々の乱心」の5作品をテキストにし、昭和史の暗部に光を当てる。
序盤の鉄道篇は、清張の貧困・学歴差別等の生い立ちに触れつつも、鉄オタの著者の本領発 -
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『神社ツーリズム』と同様、2016年秋の、約13年半振りの出雲紀行を契機に購入。
古代神話や出雲関連の書籍は、とかく"古代史の謎解きもの"が多いが、あえて出雲というものを宗教的・神話的視点や、大衆受けするオカルティシズムではなく、思想面からの学術的アプローチで述べられていたところが購入理由である。
また、社会人大学院に通っているからか、学術的書籍を好んで読むようになったことが、本書を手に取った理由のひとつでもある。
著者は、冒頭にて「<出雲>とは、古代史ばかりでなく、幕末から明治維新を経て、昭和に至るまでの近代史にあっても、極めて重要な役割を果たした思想的トポスだったので -
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本書は、折口信夫の「女帝考」を本歌取りして書かれた本と言える。「女帝考」考察されるナカツスメラミコトを体現した女帝として貞明皇后を、皇后の事跡を中心に論を進める。貞明皇后が皇后でありながら実質的に天皇として振る舞われた神功皇后を意識して起ち居振る舞われたというのである。体質性格上種々取り沙汰される大正天皇の皇后として摂政皇太子と対峙し振る舞う姿は、神意を仲哀天皇に仲立ちした神功皇后見習ったものではないかとする。皇后歌集『貞明皇后御集』『大正の皇后宮御歌謹釈』などを読み解き貞明皇后の心情を再現するのである。
敗戦により、天皇の人間宣言は皇后の立ち姿も変えていた。さらに”平民”出身の皇太子妃が誕 -
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ネタバレ三浦しをんの新作ってことで借りる。対談相手の方は初めて知ったけど。皇室のことって興味なかったから初めて知ることが多かったけど、なかなか面白かった。昭和と平成で違うとか、天皇夫婦が訪問しないとこがあるとか、女系がなぜダメなのかとか。あの震災の時、精神の人の見張り番に立たされたことを私は忘れない。これも天皇達より周りの人の意見なんだろう。忖度か。三浦しをんの意見は新鮮だったし、やっぱ皇室だって時代に合わせて変わらなきゃなんだろう。離婚したら皇室に戻れるかとか、仕事してた方がいいとか、未婚ではいられないとか。本当気の毒だよなー。そういう気づきを得たという意味で星4つ。
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平成天皇が象徴天皇の役割として述べた2点「国民の安寧と幸せのために祈ること」「時として人々の傍らに立ち、耳を傾け、思いに寄り添うこと」。さらっと聞き流してしまいそうな点に大きな意味があることを初めて気づかされた。「祈り」とは宮中祭祀つまり天照大神に対するもの!そしていわゆる行幸。これらはいずれも憲法が天皇の国事行為として定めているものとは異なる!改めて天皇という存在の宗教的・歴史的な意味を考え直さざるをえなかった。美智子皇后が平成天皇の上回る影響力の大きさであったことへの右派勢力の抵抗、雅子皇后がむしろそれを糺すかもしれないとの逆転的予測も面白い。平成天皇の生真面目さが逆にユーモア・笑いを感じ
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原武史先生の自由なオタクぶりに感心した。同時に、専門家の話をきちんと受け止めつつ、自分の感覚や意見でしっかり渡り合うしをんちゃんって、なんてステキなんだろうと、あらためてファンになった。
天皇について語ることって、週刊誌的興味以上のことはかなりデリケートだ。そこに果敢に踏み込んでいく対談なのだが、原先生が筋金入りのテツで、話はしばしばそっち方面に脱線、結果的にあまり構えずに読んでいける形になっている。我らがしをんちゃんがすごく勉強していることに感心するのだけど、あくまで実感から離れずに話が進んでいくのもいい感じだ。
それにしてもまあ、皇室関連のエピソードで、え!そうなの?知らなかったーって -
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原武史の『皇后考』では、明治以降の歴代の皇后が神功皇后と光明皇后を参照しながら皇后としてのアイデンティティを確立したことが述べられていた。
本書では考察の対象となる時間・空間が拡張され、古代からの日本での「女帝」のあり方と、中国、韓国、沖縄などの「女帝」について触れられている。
序章と終章から、著者が本書を書いた理由が、日本の女性の政治進出が進まない事へのいらだちがあるように読めて、興味深かった。
あとはメモ。
・明治以降の皇后が影響を受けた光明皇后は、唐の武則天を見習っていた
・「血の穢れ」の概念は奈良末期から平安初期に、中国からの影響でうまれた
・平安時代の摂関政治時代も、実は -
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原武史 「 昭和天皇実録 を読む 」
昭和天皇実録のポイント、読み方、背景がわかる本。皇太后との関係、キリスト教改宗など 驚きの内容だった
昭和天皇実録をどう読むか
*天皇に戦争責任はない→天皇は退位を考えたことがない というスタンス
*祭祀に注目→アマテラスと国民の間にいる天皇
*宗教、家族関係
驚きの内容
*後宮=一夫多妻→昭和天皇が後宮廃止へ
*皇太后の敬神の強さ、政治介入に対する警戒
*昭和天皇は太平洋戦争前から ローマ法王を通じた終戦を模索していた
*太平洋戦争の本土決戦は 皇太后の意向
*神道には宗教の資格がない→キリスト教への接近 -
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今上天皇の「おことば」を受け、平成が終わろうと、そして新しい世になろうとしている。
そこで登場するのが、現皇太子後の天皇の問題だ。
万世一系、男系による皇位継承がずっと保たれてきた、というのが保守派の意見だが、それに異議を唱えるのが本書の立場だ。
事実を事実として認め、有益な視座を提供する(序章より)ことが本書の目的である。
読んでみると、なら、平安までは女性が男性とほぼ同様に扱われていたのがわかる。
確かに院政が行なわれていても、女性は完全に蚊帳の外というわけではなかったようだ。
武家政治が始まっても、将軍の母などが力を持っていた。
一条兼良の『小夜のねざめ』では女性だからと言って卑下せ