原武史のレビュー一覧
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著者の2年年長で、同じ東久留米市(当時は北多摩郡久留米町)の小学校に入学した者として興味深く読んだ。とはいえ、当時、新興の滝山団地ではなく旧市街であったが。その微妙な場所と年次の差か、あるいは学校や担当教員の考えの違いか、はたまた3年生終了時に転校したために、まだ理解できていなかったのか、はわからないが、著書にあるような日教組の「洗脳」なかったように思う。
それにしても著者の記憶の良さと子供ながらの観察眼には感服する。
この時代までの公立学校に侵入してきある種の思想とそうした思想から正反対にある中学受験という行為が縦横の糸となって時代を活写している。 -
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70年代はじめにある団地と小学校で発生した民主的な教育運動。児童側の当事者として体験した著者が、当時の記憶を掘り起こしながら社会情勢とともに振り返ってゆく。
著者はこれに滝山コミューンと名付けるが、コミューンというほど確固たる共同体が作られたわけでも集団的な運動が展開されたわけでもない。ひとりの教師の積極的な働きかけがあったほかは、時代の空気としか言いようのない漠然とした流れによるものにみえる。しかし、その漠然とした流れこそ、当時の状況をよく表しているように思う。
だからこそ、著者も、ただ滝山コミューンを追うだけでなく、それに軌を同じくする様々な要素を併置していく。それは、革新政党の躍進で -
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ネタバレ2011.3.11の東日本大震災による鉄道被害とその後の復興についての苛立ちを綴った、言わばJR東日本・JR東海への批判の本である。
特に、震災前からJRは国鉄時代の地方の赤字を抱えたローカル線を次々と廃線し、または第三セクターに売却して国鉄時代の鉄道ネットワーク網から寸断させてきた。そして、地方在来線の運行本数を減らして地域の足を奪ったあげくに、新幹線を通して言わば「地点から地点へ移動するための手段」を通して、日本が特有に抱えてきた、鉄道が有する公共性・コミュニティ機能を次々と壊滅に至らしめたと、痛烈に批判する。その批判の手は現在計画が進められているリニア新幹線にも及ぶ。リニアだろうが新 -
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震災と鉄道は今年もっともホットな話題である。
インフラ、環境、経済、交通、電力、安全、インフラ、技術、文化、幸福に関する国家観が問われるテーマである。今、世界は信用を失う出来事で満ち溢れ、今までの安心・安定した世界が、壊れていっている。日本は未曾有の大災害で破壊尽くされた感があるが、その他の国家は自滅に近い形で、崩れつつある。国家さえも崩れ落ちれば、この世にはもう信用できるものがないのかもしれない。間近にいる人間さえ信用できない世の中で国家は自らを定義できるのだろうか。
鉄道が象徴的なのは、インターネットができるずっと前から、鉄道はネットワークを築くことが目的であったということだ。道路はもちろ -
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原さんは政治学者でてっちゃん。
小生も、鉄道は好きで、世田谷線沿線にマンションを購入し、毎日ご機嫌で世田谷線に乗っている。
原さんは、てっちゃんとして、今のJRの体質を厳しく批判している。
①東日本大震災の際のJR東日本の対応について、「帰宅難民」をできるだけ減らすためにも、JR東日本は私鉄各社と連絡をとりつつ、私鉄への影響が大きい山手線を優先して動かすべきでした。(p29)
原さんによれば、東京大空襲や広島原発のときにも、国鉄は翌日から動き出したとのこと。それに比べて、JR東日本の対応はひどかった。
②ディーゼルの機能が向上してきたことを踏まえ、電車の電力消費によ -
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著者とはまったく同い年。同じ時代に区市は違えど都内の小学校に通っていた。ここまでの教育活動が試みられていたとは本当に驚いた。確かに、今の学校現場に比べるとかなり違うと思う。私の場合、君が代も日の丸も覚えていないが、卒業式の呼びかけはあった。証書授与は壇上ではなく、自席で受け取った記憶がある。学芸会の劇は自分たちで分担してシナリオを書き、大道具作りにも時間をかけた。それでいて、学習指導要領上の授業時数は今よりも多かった。一体いつ勉強していたのだろう、それは思い出せない。本書のような極端な例はあまりないのかも知れないが、全国のあちらこちらでこれに近いことがきっと行われていたのだろう。「一人の手」や
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講談社のPR誌「本」に連載したコラムを1冊の本にまとめたもの。
著者の専門である日本政治思想史に絡めながら、日本の近代化という視点から鉄道を視る。
日本人の時間意識と時刻表や「ひかり」や「のぞみ」のルーツなどちょっとした鉄道小話が満載で、知れば知るほど鉄道に乗りたくなってしまう。
本書の記述に関して事実関係云々と言う方がおられるかもしれないが、この本が言わんとすることを考えればそれは訂正すればいい話であり、そうでなければ、この本の読み方として非常につまらないものとなってしまうであろう。
鉄道ファンというよりは鉄道に少しでも興味のある人にオススメしたい本である。