原武史のレビュー一覧
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鉄道、皇室について数々の著作を持つ著者。原さんの著作はみなそうだが、「どうしてこんなところに注目したのだろう」という驚きが本書にもたくさん詰まっている。それは文献や史跡等に当たりつつも、実際に現場を歩いて(本書では鉄道に乗って)、自分の目で見、自分の頭で考えているからこそなのだろう。
取り上げられる路線は8つ。
1 小田急江ノ島線 ~沿線にカトリック女学校が多い
(神奈川県に仕事で住んでいたことがあるが、全く知らないことだった。)
2 常磐線 ~「ときわ」と「じょうばん」
「ときわ」は「とこいわ」を語源とする古代にまで遡れる言葉。「じょうばん」 は常陸と明治に設置された磐城の二つの国名を組み合わせた「常磐」。
3 軍都旭川の市街軌道 ~第七師団を中心に、3路線25キロ
4 JR阪和線 ~沿線が古代の天皇の行幸ルートに重なる、百舌鳥、鳳、熊取、日根野など駅名が六国史に由来
5 房総三浦環状線(著者名付け)~日蓮宗と明治宮中女性との関わり
久里浜ー(JR横須賀線)-東京ー(JR総武本線)ー千葉ー(JR外房線)ー上総一ノ宮(同)ー安房鴨川ー(JR内房線)ー浜金谷=金谷港ー(東京湾フェリー)ー久里浜港=久里浜
6 山陽本線 ~新宗教本部が所在(黒住教、今光教、神道天行居、天照皇大神宮)
7 北陸本線 ~神功皇后、継体天皇との関わり
8 JR筑肥線・松浦鉄道 ~聖母=ショウモ=神功皇后/聖母=セイボ=マリア -
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日本にとって政治とは何か、このサブタイトルに従って大学の講義形式で政治と天皇家の政事(まつりごと)を比べその本質を綴っていく。その観点は「時間と政治」においては現代社会で当たり前となっている西洋の太陽暦によって時間に支配される国になったこと、政治と宗教の関連性など身近にあるものが如何にして制度化されていったか、そこに政治がどの様に関わってきたか、更には天皇の関わり合い方についても同時並行的に流れるように説明されており、内容が非常に濃くなっている。この様な授業なら学生も飽きずに講義を聞くことができるだろう。
前述の時間と政治の関わり合い以外に、特に政治に影響を及ぼしやすい神社や宗教について多くのページを費やして説明されている。ここで言う政治とは身近なルールなど政治的に作られるものも対象となる(学校の日直なども、みんなで話し合って決める=政治)。
政治と神社の関連で言えば、総理大臣の靖国参拝などが騒がれるが、国内にある多くの神社の成り立ちや祭神などにも触れている。特に天皇と伊勢神宮、出雲大社の関係性の背景にある壮大な神話は面白い。日本書紀や古事記を読む学生などはそう多くないだろうから、判りやすい政治の話と絡める事で理解を深めたり興味を持たせる事ができるだろう(自分の学生時代にこの様な授業あったかな)。
後半では政治と都市、地方の関係に触れる。何気なく過ごしている自分の街がどういった思想で作られてきたか、特に東京や大阪に住む人なら二つの都市の違いを思い浮かべながら覚えていく事ができるだろう。地方出身者も街のために尽くす政治家の背景に興味が湧くだろう。講義後半の女性と政治の関係も、女性の社会進出が大きな課題となっているリアルな今の課題解決に役立つはずだ。
学生時代は遊びやバイトばかりで学校の授業は卒業後するための面倒な時間とばかり感じていた。それでも大講堂で一番前の席に座るぐらいの姿勢だけは見せ続けたが。進んで学びたいと考える学生ばかりではないから、こういった興味を唆る授業と講義を準備する事が、将来の日本の政治を変えて行く事だろう。 -
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ネタバレ<目次>
第1章 小田急江ノ島線とカトリック
第2章 二つの「常磐~「ときわ」と「じょうばん」の近現代
第3章 軍隊の消えた街~旭川の光と影
第4章 古代・中世・近代の交錯するJR阪和線
第5章 日蓮と「房総三浦環状線」
第6章 「裏」の山陽をゆく
第7章 神功皇后と継体天皇と北陸本線と
第8章 聖母=ショウモから聖母=セイボへ~神功皇后・マリアとJR筑肥線・松浦鉄道
<内容>
「小説新潮」連載の記事をまとめたもの(2020年)の文庫化。鉄オタの著者らしい視点である。「点」でも「面」でもなく、「線」だと。前書きにそれなりの論が書いてあるが、要するに鉄道を絡めたのである。しかし、天皇論が専門だけあって、皇室とキリスト教の関係とか、知らないことが目白押しである。興味深かった。 -
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大阪の私鉄の歴史を軸に、政府、特に天皇に関する行事によってどう変わってきたのか解説されている
「鉄学」概論 車窓から眺める日本近現代史
で語られていた関西圏の事情について、詳しく来歴が語られている
政治中心の東京に対して、民衆の総体としての大阪というテーマ
「鉄道」は国の管理下に置かれるが、「軌道」ならば別の法律が適用される
道路を通る部分一部分でもあるから軌道という、法の抜け道的な理屈
そのため、車幅の規格から異なった、私鉄が先導する形で発展できたらしい
民間、特に現在の阪急の歴史がわかる
スタートアップから、沿線の発展、商業施設の開店、ターミナルの場所など色々と紆余曲折はあるようだ
官との対立に関しては、「阪急クロス問題」が顕著
梅田ダンジョンと呼ばれるように、梅田駅と大阪駅の連絡が非常に複雑な事情も過去の来歴によるもの
そんな気質が今の経営者陣にも残ってるんですかね?
その決着に天皇の行幸を利用したというイメージを抱いてしまう
まぁ、主にマスコミ戦略による民衆の叛意が決定打となったというのがより正確な表現なんでしょうけどね
鉄道そのものにはまったく興味がない私
でも、タモリ倶楽部の鉄道回で詳しい方々が盛り上がっているのを見ると何だか羨ましいような気持ちになってくるわけで
これを読んだ後に抱いた気持ちも、こんな知識があったら色々と楽しいのだろうなぁといった感じでしょうか -
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大正天皇の評伝
大正天皇と言えば、病弱だったという事と晩年は後の昭和天皇が摂政を務めたという事ぐらいしか知らない
あと、EXILEにいても違和感のなさそうな御真影とかねw
「遠眼鏡事件」もこれを読んでそんな事があったのかと知った
そんな病弱で精神的に問題があったというイメージも後付で作られたもので、大正天皇の実像に迫るという論旨になっている
ただ全部読み終わっても、結局は幼少期は病弱で、大人になってやっと落ち着いたけど践祚してからはまた体調を崩し、天皇として資質に欠けた人物という印象は拭えなかった
後にも先にも大正天皇の評伝は珍しいらしい
それは、大正天皇がある意味でタブー視されている存在である以上に、人物像を掘っても「面白くない」のもあるんじゃなかろうか?とも思った
偉大な明治天皇のようには振る舞えなかった
だからこそ、後の昭和天皇の教育方針や権威付けの成立に反面教師として周囲の意識に大きな影響を与えたという意味で、近代天皇制を語る上では必要な人物に思える
言い換えるならば、皇室に生まれてしまった病弱な凡人が唯一の後継者だったという、皇室の転換期の物語 かな
側室の子として生まれ、家臣の家で育てられ病気を繰り返した幼少期
病気による授業の中断により学習の遅れ
気心の知れた有栖川宮が教育係の東宮輔導に就いてからは、教育よりも健康を優先するようになったため以前よりはましになる
気晴らしと教育の遅れの補完のために各地に微行を行う事でより健康に
皇太子としての権威を示すより、自分の興味の赴くまま口を開き予定を変更するような軽率さ
大人になって行った行啓でも軽々と口を開く
4人の皇子(昭和天皇、秩父宮、高松宮、三笠宮)の父としては子煩悩の側面
形式的には一夫一妻制をとった(実態としては女官に手を出してたようだが……)
明治天皇が崩御されて践祚した後、以前と同じように窮屈な生活のため体調を崩しがち
政務を行えなくなったため、本人の意思に反して周囲が摂政を置くように画策
後の昭和天皇の権威付けのための印象操作
国体として強い権力の象徴であるべき天皇でありながら病弱という事態に対し
皇室の権威を維持するために、周囲が摂政として皇太子を祀り上げていく過程で作り上げられた近代の天皇制というのがよくわかる
ただ、その過程は一次資料は示されているものの、著者による憶測が多分に入り込んでいるため信憑性に欠ける
明治、大正、昭和と行われた行幸、巡幸、行啓、巡啓
それぞれの時代により意図が異なる
明治天皇の場合は、江戸から明治への転換による混乱を収めるためのもの
昭和天皇の場合は、国家主義の象徴として
では、大正天皇の場合はどうだったかというと、学習の補完、体調管理の一環、本人の要望等という印象を受けた
また、地方のインフラ整備にも寄与したというのも面白い側面だと思う
やはり、最後まで読んでも「凡庸だったんだなぁ」という印象は覆せない
その分、昭和天皇の評伝を読みたくなった -
購入済み
読みやすかったです
鉄道に関する読みものが好きな私です。
原教授の著書を読むのは3冊目になります。
前回読んだ「レッドアローとスターハウス」は鉄道とあまり関係無く期待外れでしたが、今回は充分楽しめました。
もともと新聞の連載コラムとのことで一話ずつ短くまとめられて読みやすかったです。
次は何を読もうか。
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原著(朝日選書版)は2000年刊行。その後の史料状況の変化に合わせて加筆訂正した箇所はあるが、論旨はほとんど変わっていない。顕彰本以外では長らく単独の評伝がなかった大正天皇に対する史上初めての本格的研究として当時話題になった。「遠眼鏡事件」の風聞に象徴されるように、当時から精神病者としてのイメージが濃厚だった大正天皇だが、本書は皇太子時代の行啓・巡啓を中心にその行動を検証し、少なくとも青年期・少壮期は(規律や規則への不適応はあるものの)健康であったことを明らかにし、認知機能障害が顕在化して以降も「正常」な意思はあり、摂政設置は一種の「押し込め」であったと評価した。この「押し込め」説に対しては古川隆久が厳しい批判を行い、議論の応酬が展開された結果(いわゆる「賢君論争」)、学界では概ね否定的な評価が確定したようで、その点は注意が必要だが、大正天皇研究の出発点として依然逸することのできない成果であることは変わっていない。
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対談本って読まないんだけど~2016.6.24通学の沿線風景~女官の世界~『源氏物語』は不敬か2016.8.2「生前退位」のご意向~女系天皇と「国体」~天皇の代替わり2016.9.9「おことば」の衝撃~蕎麦屋にふらっと入る自由~三島由紀夫、幻の計画2016.12.8コンパートメント車両~鬼怒川温泉~東武ワールドスクウェア2018.8.30「作詞:昭和天皇」~宮内庁詰めになる~平成の終わりに~ラベルに隠れて背表紙で判らなかったんだけど、三浦ってしをんか? と手に取ったら、三浦しをんだったので、読むことにした。原先生の指摘は正しかったのになぁ。蕎麦屋に…ってのは、大正天皇の気楽さのこと。作詞:昭和天皇…ってのは、山形県民の歌で、題は最上川。原先生ってのは中学から慶応大学を出て、新聞社で宮内庁詰めになって体調を悪くして退社して大学院に入り直して博士課程を中退して、天皇制を中心とする政治学者をやっていて、明学と放送大学の先生をしている、1962年生まれで、テツ学者(鉄道オタク)でもある