池央耿のレビュー一覧
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四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。
ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロインの人物造形が実に魅力的だと思った。
ヒロインのラストについては、ウーンという気持ちも拭えないが、語りの中で、そこまで含めて書かれているではないかと言えば、そうかもしれないと思わされる(ネタバレ気味の恐れもあるのでぼかしていますが、最後まで読まれた方には分かっていただきたい)。
本書では、 -
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先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。
本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。
それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された頃、原作ではアリストテレスやキリスト教、異端審問等に関わる内容が満載だということで、それらに纏わる蘊蓄本がだいぶ刊行されていたのだが、肝心の原作の翻訳が待てど暮らせど出ない、その出版社が東京創元社であった。
翻訳者の一人である日暮氏が、本書についての打合せの始まった時期のことを書いた文章を読んだ -
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1977年発表、プロスポーツを題材としたサスペンス小説の名編。テニスの国際大会「ウィンブルドン」を舞台に犯罪の顚末を描くのだが、本作がメインに据えているのは、若き天才テニス・プレイヤー二人が切磋琢磨し、頂点へと上り詰めていく過程だ。
豪快且つ正攻法のプレイで魅了するオーストラリアの俊英ゲイリー・キング23歳、天賦の才を持ち華麗な技術と純真な人柄で誰からも愛される亡命ロシア人ヴィサリオン・ツァラプキン17歳。この二人が図らずも出会い、テニスを通して友情を育んでいくエピソードを主軸にしており、何よりも青春小説として味わい深い。
ウィンブルドン決勝。時には相棒として数多の強敵を倒し、互いに待ち望んで -
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「自由、平等、博愛、さもなくば死!」血みどろのフランス革命。当時の空気ってこんな具合だったんだなあ。気が触れてしまったかのような大衆の熱狂が伝わってきてゾッとした。この狂乱の雰囲気を体感しただけでも読む価値があったと思う。もちろんストーリーも面白い。最後のシーンは別格だった。神聖な輝きが溢れていて、なんとも言い難く美しい。個人的には死体盗掘人の男が終盤で心を入れ替えて言ったセリフもたいへん胸に響くものがあった。全体の作りとして個人の心理を追究するという趣向ではないが、大衆の心理を媒介にして、それを作り上げ牽引する側と犠牲になる側の個々人が複雑に交錯する群像劇はとても読み応えがあった。満足。
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所々泣いてしまう。良い話である。
しかし、良かったと思う一方、斜めに見ている自分がいる。
スクルージは頑固で人に無関心、冷たいけど、悪人ではない。
周囲の人はそんなスクルージを変人扱い程度でたいして憎んでいるわけでもない。
だから、成り立つ話ではないかと思う。
例えば、スクルージが人に対して、罵詈雑言を何度も浴びせる人だったら?もし、何度も暴力を振るう人だったら?何度も金を借りに来る人だったら?などなど…
何度無言で許しても、何度もそうやって酷い目にあわせる人だったら?
謝罪もなく、突然調子よく愛想を振りまいてこられて、周囲は許せるのだろうか。
周囲が許せる範囲であれば安全だけど、許せ -
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ユートピア=ディストピアというSF作品全体の流れはこの作品から来てるのだろうな。
その羊肉を一口、取っておいてくれないか。肉に飢えているもので。
映像技術、それが現代最大最高のタイムマシンなのだ。
私はあえてこれを言う。何となれば、成果に乏しい実験や、首尾一貫しない場当たりの論理や、相互不信ばかりが目立つ昨今の世の中が絶頂を極めた人類の姿だとはとうてい考えられないからだ。私はあえてこれを言う。タイム・トラベラーは常々、人類の進歩にあくまで悲観的だった。タイムマシンが完成する遥か以前から、このことについて散々議論を交わして私はよく知っている。肥大する文明の蓄積は、必ずや逆転して、ついに生み